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私と恋人。
そのテンション、私にも分けて欲しいわ。-ママ視点-
しおりを挟む「ジフリール様、か。」
天国で一番弱い種族である民と、天国を守る天使。彼ら民達にとって、私達の存在は、はるかに遠いものなのだろう。
そんなのわかってはいたけれど、ユーリちゃんと出会ってから、案外そうでもないのかも、何て思ってたわ。やっぱり、あの子は例外。
、、店主にはなんだか申し訳ない事しちゃったわね。今度、ジャックの所から詫び品でも送らなきゃ。
「はぁ、、何だか寂しいわね」
私は、天使がそんなに遠い存在でない事を、民にわかって欲しかった。だって、折角同じ天国で生きてるんだから、仲良くしたっていいじゃない。
「でも、、」
その溝は埋まることは無い。外見は同じでも、民には無い力を私達は持ち合わせている。その力は、この世界を保守する為にあるもの。そんな力を持った者達に、人見知りせずに近寄るのも子供だけだった。
だから私は、天界を離れ、副業がてらBARを始めた。上級天使が下界で店を開くなんて知ったら、民も天使も同じなのかもって思うかもしれないって、ただそんな単純な理由。
悪魔との戦いが休戦になっている以上、私のする事なんてほぼ無いし、仕事をこなせば自由なのが天使達だから、丁度よかった。酒は好きだし、誰かと関わるのは好きだから、本職だと思う。
ついでに、好きな人も出来ればなんて、下心があったのはノースにしかバレてない。
、、、モテないって訳じゃないのよ。まぁ、これでも上級天使だし?地位が欲しい女は、しつこいぐらいに寄ってくる。その様子は、、野獣の様で怖かったわね。嫌な思い出だわ、、。
それ以外にも近寄ってくる女は、それなりに居た。同じ種族である天使、エルフ、ウンディーネ、シルフ、、、、綺麗で可愛らしい女性達ばっかりだったけど、直感でこの子がいいなんて思えたのは、、、
「ユーリちゃんだけなんだよな」
初めて手を握った時に、守ってあげたいと思ったあの感覚。ドキドキして苦しくなった、初めての感情。可愛らしい笑顔、気遣える優しい子。
「早く帰りたいな」
あの子の笑顔を思い浮かべて、私の心も温かくなってきた。仕事を終わらせて、ユーリちゃんをこの腕に閉じ込めたい。
-------------------------
街の中心部にある噴水公園。BARを後にした私は、時間潰しに珍しく勉強をしていた。
民の事、淫魔の事、誓いの印の効力、、、ユーリちゃんに関わる事だったら、得意では無い勉強も苦では無い。自然と頭の中に、内容が入ってくるなんて初めて事で、少しびっくりしている。
あぁ、学生時代にこれぐらい勉強する気があれば、ラグエルにも煩く言われる事無かったかしら。そんな事を思いながら、書物のページを捲っていると、とある文字が気になった。
「あ、、成れの果ての者、、」
前に見た、ユーリちゃんが消える夢。掴もうとして掴む事が出来なかったあの恐怖は、今も覚えている。
書物に書かれていることは、私の知識とほぼ同じで、大した情報は無かった。だけど、何らかの能力を持ち得るとか、前世の記憶持ちがいるとか、そんな事があり得るらしい。
実害も無いし、気にする事も無いのかも知れないけれど、あの夢が本当になってしまって、ユーリちゃんが居なくなってしまう可能性があるのなら、、、そんなの耐えられない。
どうして、あんな夢を見たのかもわからない。思い出してくると、モヤモヤが込み上げてきた。
「確か、成れの果てを管理してる大天使は、、ハニエルだったな。」
その名前を呼ぶだけで、腹の中がゾワっとした。
別に、ハニエルと仲が悪いって事は無いけれど、何しろ腹黒ドSとはあんまり関わりがない。天使の中でも一番天使っぽい面をしているのに、中身は悪魔以上に悪魔な彼。民の心の声が聞こえる魔法を使えるのは、誰もが圧巻する。
私達、天使の心の声が聞こえないだけ良いのかもしれないな、、なんて思うのは私だけじゃないだろう。
「今度、店に呼んでみるか、、」
正直、あまり気が乗らないけれど、ハニエルだったら何かわかるかもしれない。その前に、ラグエルとラファエルに相談して、、、
そんなことを考えていると、あっという間に日が昇った。
------------------------
「ジフリール様!!お久しぶりです!!」
朝焼けの空の下に、似合わない甲高い声が響く。思わず苦笑いが溢れる。、、住宅街に反射した音が、民の迷惑になってないかが心配だ。
「相変わらず、朝から元気だな、、。おはよう、アメリア」
いつだってテンションの高い彼女と、その後ろで畏っている天使達が、今回の仕事のメンバー。12人ねぇ、、結構大勢じゃない。よっぽど、強敵なのかしら。
「褒め言葉ありがとうございます!!私も、ジフリール様と、お仕事出来ることを光栄に思います!!ね!!みんな!!」
コクコクと頷く部下達の心情が、強制されているのか本心なのかはわからない。だけど、そんな事言ってくれちゃうなんて嬉しいじゃない。私も、BARに引き篭ってばかりじゃ無くて、たまには部下達に会いに行かなきゃな、、なんて思った。
「じゃ、早速だけど今回の件を話して貰えるかな?」
「はい。昨日お話しした、サキュバスの件ですが、、」
------------------------
今回の仕事の件以外にも、部下達の事や、最近の下界の様子などを話していると、気がついたら昼だった。時間の流れは、早いわぁ、。
しかし、今のところ、サキュバスが現れる様子もない。今日は、ハズレか、、??なんて思ってた時、
「きゃぁあああああ!!!!」
「サキュバスがッ!!」
「助けてっ!!!」
近くの広場から、悲鳴が聞こえた。辺りの空気がガラリと変わって、恐怖に満ち溢れる。
私達は、急いで声の聞こえた方に向かった。
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