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私とママ。
アナタとこの夕陽が見たいって思ったの。-ママ視点-
しおりを挟む私の選んだ、ピンク色のワンピース。それを身に纏ったユーリちゃんは、いつもより女で、可愛らしくて、見てられなかった。昨日よりも、今日の方が独占欲を増しそうで、自分が怖くなる。男だと意識させたい、だなんて意気込んだけど、手も出す勇気もない自分が出来る事なんてなかった。
だから、クイーンに追い出されてしまったのは、ある意味絶好のチャンスだった。
歩き始めたのはいいのだけれど、民の視線が気になって話せない。あのジフリールが、、なんて話してるに違いない。ユーリちゃんしか興味がないし、こうやって見せびらかして歩いているんだから、もう女を勧められる事はないだろう。
ユーリちゃんに手を出す事があれば、、地獄に落としてやる。
自分の中の醜い色んな感情が溢れ出して来て、嫌な気持ちになる。
「ユーリちゃん」
だけど、アナタと話してるとそれも無くなるの。
「ん??」
「夕陽を、、見に行こうと思うんだけど、どうかしら??」
アナタを守ると誓った夕陽が、二人で見たかった。
「見たい、ママ連れてって」
再び歩き始めると、ユーリちゃんは私の手を強く握ったり、悲しそうな顔をしたりと、複雑な心境である事を察する。
何を考えてるのかしら、、??アナタの考えてる事を私に話してくれればいいのに、、。
酔った彼女や、寝ぼけている彼女を見た時に、この子は、思ってる事、考えてくれてる事を話さずに我慢しているのだと思った。もっと、気軽に話してくれればいいのに、私には言えないのだろうか。それとも、彼女がそれを言えるようになった時に、私に心を開いてくれたっていう事なのだろうか。どちらにせよ、ユーリちゃんとの心の距離は近いようで まだ遠い。
記憶喪失なのも、出会った時に言っていた事だけなのだろう。日常的な事も、性的な事も、一般常識も、彼女が失っているようには思えない。だから、帰る場所を思い出したら、居なくなってしまうような気がして、、、、嫌だと思ってる私がいる。
考え事に夢中で、また無言で歩いてしまった。もうすぐで、夕陽がよく見える街の高台に着く。それまでは、この小さな手から伝わる温もりを忘れないように記憶しておきたい。
----------------------------
「わぁ、、綺麗」
なんとか日が沈む前に、高台に辿り着くことが出来たわ。魔法を使っても良かったんだけど、ユーリちゃんと歩いて此処に来たかったの。
「空から見るのも良いけれど、、、ママは、此処から見る夕陽も好きなのよ」
民もいないこの場所は、数えられない程の昔、血に濡れた俺が心を休める為に来てた場所だった。あの頃は、今と比べられないほど荒れていた。悪魔との戦争は熱りが覚めず、お互い意地を張り、多くの犠牲を出した。民や妖精の多くは悪魔に狩られ、此処が天国だなんて言えるはずもなかった。
だけど、ここから見える夕陽は、いつだってそんな事も忘れさせてくれるほど綺麗だった。
この戦いが終わって、恋人が出来たら連れて来たい。ずっとそう思っていた。戦いは終わったけれど、私には心から愛してやまない女なんて出来ず、この景色を誰かと見る事なんてなかった。
そんな私が、出会ったばかりのアナタに恋をした。一目見た時に、既に惚れてたのかもしれない。手を繋いだ時、抱き締めた時、その事あるごとに、ユーリちゃんの事が手放せなくなって、好きになっていく。
私はまだ、ユーリちゃんに好きだと言えずにいる。私だけの者にしたいって思っているのに、昨日出会ったばかりの私にそんな事言われても、混乱させちゃうんじゃないかとか、嫌われるのが怖いとか。いざとなると怖気付いて言葉に出来ない。
繋いだ手から、この感情が伝われば良いのに。
「ママ、連れて来てくれてありがとう」
手をギュッと握って、私に微笑むユーリちゃんは可愛い。ずっと私だけに微笑んでくれればいい。
「ユーリちゃん、アナタとこの夕陽を見たいって思ったの。」
「そっか、、嬉しい」
夕陽に照らされたユーリちゃんは、小さくて儚い。昨日の夢の通りになってしまうんじゃないかって、考えてしまう。
「ママ。あの、、こんな事言って迷惑かもしれないけど、私、、記憶を思い出してもママと一緒に居たい」
「え、、?」
「思い出しても、帰りたくないなぁって。昨日ママに拾って貰ったのに、今はそう思うの。へ、変な話だよね、、何でだろ」
ユーリちゃんは、記憶を思い出しても、私と一緒に居たいって思ってくれてるの、、?ずっとアナタを自分の側に置いておきたいなんて、自分勝手な思いだと考えていたあの感情が、夕陽に溶かされていく。
「変じゃないわよ。私も、ユーリちゃんが記憶を思い出してもずっと側に居てほしいって、、守らせて欲しいって思ってたの。」
「、、、よかった。これでママに拒否されたらどうしようかなって思って、怖くて言えなかったの」
「拒否なんてするわけないじゃないっ。だって、私は、、、」
ユーリちゃんの事が好きなのよ。そんな言葉は出てこない。告白するのは、流石に出来なかった。言いたいのに、、色々思うところがあって、言えない。
「ママ?」
「ユーリちゃん、これからもずっと一緒に居ましょ。私は、アナタが守るわ。」
「えっ、、、それって、、!!」
ユーリちゃんの瞳は、さっきよりもキラキラと輝いていた。私の言ったこと、、そんな反応される様な事だったかしら??
「ユーリちゃん、、??どうしたの??」
「ふふ、ママの言った“ずっと一緒に居ましょ。私は、アナタが守るわ。”って言う言葉、、、初恋の人が言ってたなぁって」
「え」
初恋の人、、??ユーリちゃん、今、初恋の人って言った??
「懐かしいなぁ、、。凄く好きだったの」
そっと呟き、照れるユーリちゃんは、恋する女だった。私には、そんな顔してくれないのに、、嫉妬が理性を蝕む。ユーリちゃんが凄く好きだった相手、、、誰なのかしら。
「今も、その人の事好きなの??」
「へ、、うーん、、。好きだけど、、尊いって感じかなぁ??」
「尊い??」
「そう、何て言えば伝わるのかわからないけど、、。簡単に言うと、好き以上って事なのかな?」
好き以上、、、それって愛してるって事なのかしら。私、もしかして失恋した??ユーリちゃんが、記憶を思い出しても、私とずっと一緒に居たいって言ったのは、、、やっぱりママだから??
「その人と結婚とか、、考えたの??」
「へ!?いやいやいや、結婚とか恐れ多くて考えないよ~。彼はみんなの天使だから、私なんて、、、その中の一人だし」
天使、、、。やっぱり、私の仲間の中にユーリちゃんに印をつけたやつがいるのね。しかも、そいつはユーリちゃん以外にも弄んでるっていうの!?遊び人は多いけど、ユーリちゃんの様な可愛らしい子に印をつけて、他の女にも手を出してるなんて、あり得ないわ!!そんな奴、、ぶん殴ってやる。
「ユーリちゃん、、帰りましょう」
とりあえず、このままこの話を聞くわけにもいかない。嫉妬でどうにかなってしまいそうだ。
「あ、、うん。」
ユーリちゃんの手を引いて帰る。夕陽だけが、私とユーリちゃんの会話が噛み合ってない事を知っている。
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