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2 前世の記憶ー浮気疑惑
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――前世。夫婦の寝室
パンッ、パンッ、パンッ。
「舞、気持ちいいのか? 自分から俺に尻を押し付けてるぞ」
「っ、そんなことっ」
「処女だったのに、ずいぶんいやらしくなったな。ここ、すごいことになってるぞ?」
ぬるぬるになった陰核を無遠慮に摘ままれ、意に反して大きな声が漏れる。
「やぁ、そこっ……触わ……らな……いでっ」
「後ろから突かれながら、こうされるのが好きなんだろう? ほら、また締まった」
揺れる胸の頂を、体温が低い夫の指先でクニクニと挟まれながら、後ろから一気に貫かれる。
「んっ、やだ……」
「貞淑な妻ぶらなくてもいいから。欲しかったんだろう? ほらっ」
ドチュンと乱暴に奥を突かれて、一人で絶頂を迎える。
夫は脱力した私を労わるでもなく激しく腰を叩きつけてきて、私の中へと精を注ぐ。
ぐったりしてベッドに横たわる私の身体を夫が清めてくれなくなってから、どのくらい経つだろう。付き合いたての頃は、慣れないセックスの後、いつも優しく身体を拭いてくれていたのに。
それでも――。
今夜も私は、眠りに落ちる前に夫に請わなければならない。
「健吾さん、今月は明後日なの。……またお願いできる?」
「ああ」
「……ありがとう」
どうして私が「お願い」しなきゃいけないんだろう。
子どもは、夫婦2人で協力してつくるものなのに。
後継者が欲しいのは、貴方たちの方なのに。まるで私だけが求めているみたい。
子どもも。
夫の愛も。
「……Miserable」
私は檜髙舞乃、30歳。
いわゆるキャリア組と呼ばれる国家公務員として働いている。
結婚5年目を迎える2歳年上の夫――健吾32歳は、いわゆる議員ジュニアだ。3代続いて国会議員を輩出している檜髙家の長男で、昨秋から父親の議員秘書を務めている。
毎月通院しているウィメンズクリニックで、明後日が排卵日だと診断された。医師からは、その前後を含めた5日間で数回、セックスすることを奨励されている。
『お風呂が沸きました』
沈んだ私の心とは裏腹に、軽快な機械音がリビングに鳴り響く。
「先に入る」
これからセックスするというのに、甘い雰囲気は皆無だ。最後に一緒にお風呂に入ったのは、もう記憶にないほど前のことだ。
ソファーの上で膝を抱えてスマホをいじっていると、昨年結婚したばかりの芸能人カップルに第一子が誕生したというニュースが目に飛び込んできた。
「高齢でも、すぐに赤ちゃんを授かる人もいるんだなぁ。私なんてもう、3年も待ってるのに」
何だか嫌な気分になって、スマホをソファーの上に放った瞬間、LINEの着信音が響いた。スクロールするけれど、新着メッセージは見当たらない。
「あれ? 私宛じゃなかったんだ」
珍しく夫がソファーの上にスマホを置いたままお風呂に行ったみたいだ。いつもは定期購読しているポッドキャストのビジネスニュースを聞きながら入っているのに。
興味本位でスマホの画面を覗いたのが悪かった。
『KEN、昨日は来てくれてありがとう♡ プレゼント、早速つけちゃった♡』
浮気を疑うようなメッセージが見えて、思わずタップしてしまった。彼の仕事用携帯は、緊急時対応のため私にもパスワードが伝えられている。
メッセージとともに、有名高級ブランドのブレスレットをつけた写メ入りのメッセージが届いていた。ジュエリーよりも、彼女の透明感ある白い肌の方に目がいった。指先には、美しく凝ったジェルネイルが施されている。
隅々まで手入れの行き届いた、瑞々しい張りのある肌――20代半ばくらいだろうか。
昨夜はたしか、仕事のつきあいで飲みに行くと言ってたけれど、帰って来たのは朝方だった。
差出人の名前は、「My」と登録されていた。
「……My? 誰だろう」
メッセージを送受信するたびに削除しているのか、他のやりとりは見当たらなかった。
既読にしてしまった罪悪感を打ち消すように、メッセージ自体を削除した。
「もしかして……」
疑い出すと、怪しいなと思えることが次から次へと出てきた。
半年くらい前から、仕事のつきあいという理由で帰りが午前様になることが増えた。そんな時にはたいてい、女性物の香水が混じった匂いがした。石鹸の匂いじゃないからと信用しきっていたけれど、わざとシャワーを浴びずに帰ってきていただけかもしれない。
夜の生活もほとんどなくなって、誘うのはいつだって、私からになった。
セックスするとき以外にキスをすることもなくなった。以前は、唇じゃなくても頬や頭のてっぺんにしてくれていたのに。
けれど、どれも決定的な証拠じゃない。
それに――少なくとも彼は私との子どもを望んでくれている。もしかすると今周期、新しい命が芽吹いてくれるかもしれない。
「次の生理が来るまでは、様子をみよう」
パンッ、パンッ、パンッ。
「舞、気持ちいいのか? 自分から俺に尻を押し付けてるぞ」
「っ、そんなことっ」
「処女だったのに、ずいぶんいやらしくなったな。ここ、すごいことになってるぞ?」
ぬるぬるになった陰核を無遠慮に摘ままれ、意に反して大きな声が漏れる。
「やぁ、そこっ……触わ……らな……いでっ」
「後ろから突かれながら、こうされるのが好きなんだろう? ほら、また締まった」
揺れる胸の頂を、体温が低い夫の指先でクニクニと挟まれながら、後ろから一気に貫かれる。
「んっ、やだ……」
「貞淑な妻ぶらなくてもいいから。欲しかったんだろう? ほらっ」
ドチュンと乱暴に奥を突かれて、一人で絶頂を迎える。
夫は脱力した私を労わるでもなく激しく腰を叩きつけてきて、私の中へと精を注ぐ。
ぐったりしてベッドに横たわる私の身体を夫が清めてくれなくなってから、どのくらい経つだろう。付き合いたての頃は、慣れないセックスの後、いつも優しく身体を拭いてくれていたのに。
それでも――。
今夜も私は、眠りに落ちる前に夫に請わなければならない。
「健吾さん、今月は明後日なの。……またお願いできる?」
「ああ」
「……ありがとう」
どうして私が「お願い」しなきゃいけないんだろう。
子どもは、夫婦2人で協力してつくるものなのに。
後継者が欲しいのは、貴方たちの方なのに。まるで私だけが求めているみたい。
子どもも。
夫の愛も。
「……Miserable」
私は檜髙舞乃、30歳。
いわゆるキャリア組と呼ばれる国家公務員として働いている。
結婚5年目を迎える2歳年上の夫――健吾32歳は、いわゆる議員ジュニアだ。3代続いて国会議員を輩出している檜髙家の長男で、昨秋から父親の議員秘書を務めている。
毎月通院しているウィメンズクリニックで、明後日が排卵日だと診断された。医師からは、その前後を含めた5日間で数回、セックスすることを奨励されている。
『お風呂が沸きました』
沈んだ私の心とは裏腹に、軽快な機械音がリビングに鳴り響く。
「先に入る」
これからセックスするというのに、甘い雰囲気は皆無だ。最後に一緒にお風呂に入ったのは、もう記憶にないほど前のことだ。
ソファーの上で膝を抱えてスマホをいじっていると、昨年結婚したばかりの芸能人カップルに第一子が誕生したというニュースが目に飛び込んできた。
「高齢でも、すぐに赤ちゃんを授かる人もいるんだなぁ。私なんてもう、3年も待ってるのに」
何だか嫌な気分になって、スマホをソファーの上に放った瞬間、LINEの着信音が響いた。スクロールするけれど、新着メッセージは見当たらない。
「あれ? 私宛じゃなかったんだ」
珍しく夫がソファーの上にスマホを置いたままお風呂に行ったみたいだ。いつもは定期購読しているポッドキャストのビジネスニュースを聞きながら入っているのに。
興味本位でスマホの画面を覗いたのが悪かった。
『KEN、昨日は来てくれてありがとう♡ プレゼント、早速つけちゃった♡』
浮気を疑うようなメッセージが見えて、思わずタップしてしまった。彼の仕事用携帯は、緊急時対応のため私にもパスワードが伝えられている。
メッセージとともに、有名高級ブランドのブレスレットをつけた写メ入りのメッセージが届いていた。ジュエリーよりも、彼女の透明感ある白い肌の方に目がいった。指先には、美しく凝ったジェルネイルが施されている。
隅々まで手入れの行き届いた、瑞々しい張りのある肌――20代半ばくらいだろうか。
昨夜はたしか、仕事のつきあいで飲みに行くと言ってたけれど、帰って来たのは朝方だった。
差出人の名前は、「My」と登録されていた。
「……My? 誰だろう」
メッセージを送受信するたびに削除しているのか、他のやりとりは見当たらなかった。
既読にしてしまった罪悪感を打ち消すように、メッセージ自体を削除した。
「もしかして……」
疑い出すと、怪しいなと思えることが次から次へと出てきた。
半年くらい前から、仕事のつきあいという理由で帰りが午前様になることが増えた。そんな時にはたいてい、女性物の香水が混じった匂いがした。石鹸の匂いじゃないからと信用しきっていたけれど、わざとシャワーを浴びずに帰ってきていただけかもしれない。
夜の生活もほとんどなくなって、誘うのはいつだって、私からになった。
セックスするとき以外にキスをすることもなくなった。以前は、唇じゃなくても頬や頭のてっぺんにしてくれていたのに。
けれど、どれも決定的な証拠じゃない。
それに――少なくとも彼は私との子どもを望んでくれている。もしかすると今周期、新しい命が芽吹いてくれるかもしれない。
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