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【冒険編】

【23】仲間

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リビングでねこさんをもふりながらルナさんが起きてくるのを待っていた。

しばらくしてルナさんが起きてきた。

「あ。おはよー。」

「おはようございます。」

「もしかして私待ってた?」

「待ってました。」

「てことは続きやりたい感じか。」

「やりたい感じです。」

「世界の管理OSから変わったレポートも特にきてないし。いいよ。」

「やったー!」

「朝ごはん食べた?」

「まだです。」

「軽くご飯だけ済ませていこうか。」

「はい!」

朝食を済ませて一緒にゲームにログインした。

こうしてルナさんとゲームプレイを続ける日々が始まった。
2日ゲーム内でプレイして1日休むというのを基本ルールにすることにした。
3日でワンセットということだ。

気付けばゲーム内で過ごした時間の合計が20日になっていた。

色々な依頼をこなしてじわじわと上達していくのが楽しい。
徐々に2人の連携も阿吽の呼吸が出来てきてなんだか絆を感じる。

最近は僕が機動力でモンスターの注意を引き付けながら戦う手段を取ることが多い。
やっぱりルナさんが盾になって戦うのは僕の性分に合わないのだ。
ルナさんが盾になる戦法のほうが合理的かもしれない。
しかしあえて非効率的な戦術を取ることでお互いにプレイヤースキルが上達していった側面はある。

それからモンスターについてある発見があった。
モンスターはコアを持っていて、コアを貫通すると即死するのだ。
同じモンスターでもしぶといときとすぐ倒せるときがあったのだ。
そこに違和感を感じて色々検証した結果その答えに至った。

例えば最初に倒したオークは棍棒を振り回しながら大きく頭を動かしていた。
おそらく頭がコアでルナさんの攻撃で即死だったと思われる。

ただ僕の攻撃が無駄だったかというとそうでもなく。
弱らせて動きを鈍くさせてからコアを狙うというのがあの時点での最適解だった。
というのが現時点の僕らの共通認識だ。


さて。今はモンスターの討伐を完了したところだ。

「よし。これで報告に行けますね。」

「なかなかしぶとかったね。」

ちょっと離れたところから悲鳴が聞こえた。森の中だ。

「いってみましょう。」

「あい。」

悲鳴のしたほうへ行ってみると獣人種族の女の子がハイゴブリン7匹に囲まれていた。

「助けましょう!」

「おっけー。」

まず上空に飛び上がって足止め矢を7匹に同時発射。命中。
続けて空中から通常矢で1匹討伐。同時に背後からルナさんの魔法攻撃で1匹討伐。
ここで着地。ルナさん2撃目でもう1匹討伐。
すかさず通常矢で1匹討伐。

足止め矢が切れハイゴブリン3体が驚異的瞬発力で僕に飛び掛かってくる。
それを読んでいたルナさんが僕に防御魔法を展開。弾く。
素早く距離をとりつつ通常矢で1匹討伐。
ルナさん3撃目で1匹討伐。

最後の1匹が再度飛び掛かってきたが頭部めがけて速射矢を放ち討伐完了。

「ふう。うまくいきましたね。」

「大丈夫?」

ルナさんが女の子に声をかけた。
女の子は栗色の髪をしていてポニーテール。小柄だ。
なにやら赤系の絶妙にセクシーな衣装を着ている。踊り子といった感じだ。

そして僕にはわかる。Fだ。

「お姉さんたちありがとにゃ。」

うお。猫耳にゃん語女子。べったべた過ぎて逆に絶滅危惧種なんじゃないだろうか。

「見た感じ初心者っぽいのにどうしてこんなところにいるんですか?」

「方向音痴にゃ。」

なるほど。ここはファーストシティから近い。
だけどちょっと谷を抜けなきゃだし、あからさまに雰囲気を変えて難易度の高い地域だと匂わせてある気がするんだけどな…。

「お話し中悪いけど。うちも混ぜてくれない?」

後ろから声がした。

3人で振り向くと剣と盾を持った騎士といった感じのヒューマンの女の子が立っていた。

髪色は紫でショート。少し背が高い。
鎧を着ているが僕にはわかる。Bだ。

「うちも悲鳴を聞いて駆け付けたんだけど一足遅くてさ。」

「そうでしたか。」

立ち話もなんだし街に戻って酒場で話をしないかということになり、ファーストシティに戻ることにした。

酒場で各自自己紹介をして、騎士の女の子はアスカという名前で職業はナイトだということが分かった。
ゴブリンに襲われていた女の子はサラという名前だ。

アスカさんはよくしゃべる人で会話の中心になっている。

「びっくりしたよ。二人の戦い方はなんかおかしいって絶対。」

「確かに特殊な戦い方してるとは思います。」

「何人かアーチャー見たことあるけど、足止めスキルあんな使い方するやつ初めて見たよ。」

「足止め矢は分散させると効果時間が落ちますが最大10体までは使えることを見つけたんです。」

「それから敵視をまとめて僕に向ける意図もあるんです。」

「ルナの防御魔法もタイミング完璧だったし。強い防御魔法って発動に少し時間かかるはずだよね?」

「神谷さんが何を考えてるか大体わかるから先読みで魔法かけてる感じかな。」

「強い防御魔法って人じゃなくて位置に展開されるから動き回るアーチャーに使うのめっちゃ難しいと思うんだけど。」

「そこは状況によって使い分けしてるよ。」

「てか普通に強い攻撃魔法と防御魔法使ってたけどルナは職業なんなの?」

「ジェネラリストだよ。」

「ほえーー。ジェネラリストってすごく希少なはず。めずらしい。初めて見た。」

アスカさんは続けて話の矛先をサラさんに向ける。

「そいえばサラは職業はなんなの?」

「ダンサーにゃ。」

「ほえー。ダンサーも初めてみたけどどんな職業なの?」

「説明苦手だからこれを見てほしいにゃ。」

サラさんはダンサーの概要が書かれた巻物をテーブルの上に広げて見せてくれた。

こ、これは…!

武器は魔法扇。自身の戦闘能力は低い。
扇を振ることで手裏剣のような魔法攻撃やブーメランのような魔法攻撃ができる。
味方全体に常時攻撃能力の上昇効果を与える魔法も使えるがさほど効果量は大きくない。
自身の魅力で人を惹きつけることで事を成していく。惹きつけるのは主に男性。

姫プ職やんけ。

まさか公式に姫プがプレイスタイルの職業があったとは…。
本当にゲームバランスがいいのか怪しく思えてきた…。

アスカさんが聞く。

「こんな感じの職だったら一人で行動しないで酒場で仲間集めればよかったのになんでそうしなかったの?」

「男の人が苦手にゃ。」

まじか。それは適正ないんじゃないだろうか。

「あんたこの職業向いてないかもね。」

アスカさんがずけずけ言ってしまった。

サラさんはしょんぼりしている。

「よかったら私たちと一緒に冒険しない?」

ルナさんが口を開いた。そういえばこの人は女の子が好きだ。

「うれしいにゃ。お願いしたいにゃ。」

「それならうちも混ぜてほしいな。」

アスカさんものっかってきた。

「サラさんは僕がいても大丈夫でしょうか?」

これはちょっと心配だ。

「ルナさんと一緒にいた人なら大丈夫な気がするにゃ。」

よくわからないけどルナさんに信頼感を抱いているようだ。

「たしかにルナほどの美人と一緒にいたら他の子にちょっかいかけないよな。」

アスカさんの言い分はなんかすごくがさつだ。

こんな感じで僕たちはパーティを組むことになった。

なんかハーレム展開な気もするが僕はルナさん一筋だ。
むしろルナさんのハーレム展開になりそうな気がしてちょっと怖い。

アスカさんが提案をしてきた。

「実は4人でダンジョンに挑戦してみたいんだけどどうかな?」

ダンジョンは僕らもまだ行った事がない。
2人だけでは厳しいだろうという予測もあった。
それにダンジョン内では機動力を生かせないケースが多そうで嫌煙していたのもある。

「実は僕もアスカさんがナイトだと知ったときにそれがよぎってました。」

「この4人ならダンジョンも攻略できるんじゃないかって思ったんです。」

「ダンジョン。私も行ってみたい。」

ルナさんも同調している。

「私はまだ戦闘が得意じゃなくて自信がないにゃ。」

「いきなりダンジョンに行くわけじゃないよ。みんなで討伐依頼をこなして練習してから行こう。」

アスカさんがサラさんを諭す。

「それならやってみたいにゃ。」

「サラさんは攻撃能力上昇の維持をしてくれるだけでも助かりますよ。」

僕は続ける。

「僕らの戦いを見ながら少しずつ攻撃も練習していく感じでいいと思います。」

「わかったにゃ。」

ナイトであるアスカさんがモンスターの敵視を一挙に集める。
ルナさんがアスカさんの防御と回復。
サラさんが全体の攻撃力上昇と攻撃の補助。
僕がアタッカーとしてモンスターを仕留めてく。

そんなオーソドックスかつバランスのいい戦い方ができそうな予感がする。
サラさんの悲鳴を聞きつけたという偶然からこのゲームでの運命が動き出したような気がした。

アスカさんからまた提案だ。

「親睦を深めるために銭湯でも行かない?」

そして僕は今一人で男湯に浸かっている。
壁一つ向こう側では今どんな光景が繰り広げられているのだろうか。
ルナさんうはうはかな。

くやしいから3人のいけない妄想をして一人で盛り上がってやる。

風呂から上がってロビーで待っていると3人が出てきた。
すごく仲良くなっているようだ。
ルナさんを取られてしまうようでなんだかさみしい気もした。

そんな感じで仲を深めた僕らは、まずサラさんの練習のための討伐依頼をこなしていった。
最初はなかなか攻撃を当てる事すらできなかったサラさん。
でも徐々に慣れていき、初めて自分の攻撃でモンスターを討伐した時はすごくうれしそうだった。

そしてナイトがいると戦いもすごくスムーズだ。
防御力もあって大きく動くわけではなくモンスターの位置を一点に集中させてくれる。
今までなかなか使う機会がなかった強射撃やさらに攻撃力の高い重強射撃を使うシーンも増え、新たな技術を伸ばすことが出来た。

そしてついに初めてのダンジョンに挑戦する日がやってきた。
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