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戦いの章

【23】取り戻した日常

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1998年10月

私のベッドで足をパタパタしながら光さんがジャンプを読んでる。
るろうに剣心の新刊が待ちきれなくなった光さんはジャンプを読み始めた。
神の力乱用してタダで読んでるんだよ。なんか言ってやって。

「光さん。読み終わったらちゃんと片づけてよ。私がお母さんに怒られるんだから。」

「んー。こんどやるよー。」

ジャンプに夢中の光さんは気のない返事だ。
私たち女子組はもうタメ語で話す仲になっている。
愛さんと莉愛なんかほんと姉妹みたいで見ててほっこりかわいい。

「あと溜まったらちゃんと結ってゴミ出しの日に捨ててね。」

「えー。また読みたくなるかもじゃん。ここに置かせてよ。」

「私だってマガジン読んでるんだから部屋が雑誌だらけになっちゃうよ。せめてブレスレットにしまって。」

光さんも佐々木さんが作ってくれたブレッスレットを使っている。
愛さんもぱーくんもね。これでみんな念話ができる。

「私よく使うものは収納したくないタイプなんだよ。」

だらしないなこの人。

「じゃあせめて光さんの空間で保管して。」

「この時代の日本の家の雰囲気って新鮮でさ。夢っちの部屋居心地いいんだよ。
私が楽しいのは強さにもつながるからさ。それに一緒にいたほうが楽しいじゃん。」

私は漫画は一人で集中して読みたいタイプなんだけどな。
ま。ほんとは楽しいからいいけどさ。

「まったく。顕現してもらうのも訓練になるからいいけど。
おかげで授業中の居眠りひどいんだよ。」

「まーまー。てかそろそろマガジンてやつにも手を出してみるか。」

やばい沼の予感。

私と光さんと莉愛と愛さんの4人はちょいちょいお茶したりカラオケしたりで外にも遊びに行くんだ。
もうほんと普通に友達って感じ。
日常が戻ってきたけど神さまと友達になるって普通で考えたら非日常だよね。

そういえば私と輝は親へのカミングアウトというか、私たちと神さまたちの現状を話したんだ。

茜のおばあちゃんは元々全然干渉しないタイプだから話してもないみたい。
莉愛は愛さんの力で関わらない状態だから気にする必要ないしね。

カミングアウトのきっかけは夏休みの始め頃、私の部屋で光さんが漫画読んでて、二人でそのまま昼寝してるところをお母さんに見つかってしまったからなんだ。

狐耳の女の子にお母さん最初はびっくりしてた。
でも私の両親はなんかちょっと変わったところがあって。世間の常識とかには捉われない感じがあるんだ。

危険なことするのはちょっと心配だけど神さまがついててくれて夢が楽しく過ごせるなら私たちは応援するだけだよって言ってくれた。
ほんとお父さんもお母さんも大好き。

だから光さんも私の部屋に普通にいてお母さんがお茶とお菓子出してあげたりしてるよ。
晩御飯もちょくちょく一緒に食べるし4人で仲良くなりつつあるんだよね。

輝のお父さんは輝が研究者としての道を断念すると聞いてちょっと戸惑ってたみたいだけど。
散々今まで放置して今更自分が何か言える立場ではないから自由にしなさいと言ってくれてみたい。

あと輝のお父さん。
佐々木さんとぱーくんと交友関係ができて将棋を指す仲間になったという余談まであるよ。
将棋には自信あったみたいだけど神々には敵わないとぼやいてるらしい。



1998年11月

今日はいつもの8人揃っての訓練の時間になっても愛さんが来なかった。

「莉愛。愛さんこないね。どうしたの?」

「たまに呼んでも中々こないことあるんだけど。こんなに反応ないのは初めて。」

莉愛もちょっと戸惑ってる。どうしたんだろう。
まあ一番マイペースで奔放なイメージだからそんな違和感ないけどさ。

「私は夢っちと生活習慣シンクロさせてるからいつでもこれるよ。私たちのがきっと信頼関係高いね。」

気持ちどや顔の光さん。

訓練が一通り終わった頃にふらっと愛さんがやってきた。

「みんなごめんごめん。めっちゃ寝坊しちゃったよ。」

「愛さん大丈夫?体調でも悪いの?」

「いあ。ちょっと昨日拾った男の子がすごくて全然寝かせてくれなくてさ。」

えっちなお姉さんだった…。こんな奔放なタイプだったとは…。

「そうだ。みんなにも会わせたいからちょっと待ってて。」

え…。私たちの秘密の空間なのにそれはまずい…。
制止する前に愛さんは自分の空間にいったん戻ってしまった。

戻ってきた愛さんの腕に抱かれていたのは小さな豆柴だった。

「男の子ってわんちゃんのことだったんだ。私てっきり…。」

私がいかがわしい妄想をしたことは完全にばれてる。愛さんのニコニコした視線が痛い。

「捨てられてたの見つけて私の空間にお迎えすることにしたんだ。名前はお豆くん。」

訓練で疲れてたけどみんなでお豆くんと遊んだ。
かわいいから癒されちゃって疲れ吹っ飛んだよね。

楽しくていつもより遅くまでみんなでいたから翌日全員学校遅刻したという落ちまでついたね。



1998年12月

輝の空間支配の能力は黒川さんたちの組織の諜報活動と親和性が高い。
だから擬態薬も作れて器用な茜もセットでよく手伝いに駆り出されてるんだ。

私はすぐ顔や態度に出やすいタイプだし慎重さが足りないから諜報活動には不向きって言われちゃった。
そして私の留守番時のお相手として莉愛も残る流れになった。

私が前衛タイプで莉愛がヒーラータイプだからコンビネーションの訓練はたくさんしたほうがいいってのもあるんだよ。
私ががさつだからだけが理由じゃないんだからね。

いつものように光さん相手に戦闘のコンビネーション訓練してたら光さんから提案があった。

「夢っちそろそろ新技覚えよっか。」

「新技…。覚えたい!」

「てか元々遠距離向きの能力なのに近接に使っちゃってるからね。
私たちの信頼関係向上でレベルアップしてきて使える力も増えてるし。
そろそろ遠距離向きの新技のアイディアを出そう。」

「たしかにそうだね。電気をそのままぶつけるは対人でダメージを制御できてないし。」

「強力な電気を都合よく気絶させる能力にできるのは剣心のイメージのおかげだから今のところ近接限定になっちゃうな。
これは夢っちのセンスが問われるよ。私がかっこいいとか楽しいとか思えるアイディアが欲しいな。」

「剣が幽遊白書の桑原感あるからいっそ幽助の霊丸風はどうかな。」

「べったべたすぎてなんかやだ。」

「わかった。ぱっと思いつかないから考えてみる。
てか私の能力。飛影にイメージ悪いって言われそうだな。」

「たしかに。」

というわけで私は新技のアイディアを出す宿題を出された。
がんばってかっこいいのを考えなければ。

そして私は漫画を読み漁り。アニメを見まくる日々に突入した。
なんか周囲の視線が冷たい気がするときもあるけど大事なことなんだよ。わかって。



夢っちが新技のアイディアを考え出してから2週間が経過したんだけど。
めっちゃ苦戦してるみたいだね。

漫画とかからアイディア出そうとしてるみたいだけど。
まんまやんけってのが多くて私がいまいち楽しめない。

面白さの方向性としてはH×Hのヒソカのバンジーガムとかはありかなとは思ったけど。

「できなくはないかもだけどめっちゃコスパ悪くなると思うよ。」

って言ったらあきらめてた。

電気要素どこ行った?ってなるじゃん。
それじゃ私がしっくりこない。

まあ剣も大概だけどさ。私が面白いと思っちゃったんだもん。

てかさ。夢っちは考えたらだめなタイプな気がするんだよなあ。
まあ。ほっといたらそのうちぶっとんだの出してきそうで楽しみではあるんだけどね。

そして3週間経過したあたりでついに新技の方向性が決まったよ。
まだ完成には訓練も必要だけどね。

いやいや今回も夢っちらしいのが出てきたよ。これこれって感じ。
やっぱね。君は考えたらだめなんだよ。
勢いと直感が魅力なんだから。

とりあえずお披露目はまだ先かな。
そのうち使うシーンも出てくるだろうからお楽しみに。

やっぱ夢っち面白くて私大好きだ。
相性最高かもね。



私は新技もできたし。
そんなこんなしながらみんなでわいわい年越しして。
人とはちょっと違う日常を楽しむ日々が続いたよ。

なんか年越しの時に私のお父さんと輝のお父さんと佐々木さんとぱーくんの4人で麻雀やってた。
そしたらみんな楽しくなっちゃったみたいで月一の恒例行事になったみたい。
私のお父さんは将棋は苦手みたいでそっちは仲間入りしなかったけどね。

そういえばぱーくんは茜の双子の妹設定の姿だとなんか目立つからって最近は俳優の温水洋一さん風設定の姿になってる。
逆に目立つじゃんって言ったらあくまでも「風」だから大丈夫だってさ。
今後もぱーくんは茜のトレンド次第でいろんな姿にされるんだろうな。

私たちに関しては3学期は特に変わったこともなかったかな。
そしてみんな無事3年生に進級できたんだ。

私と莉愛は3学期のテストで追試を受けたという余談はあるんだけれども。
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