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消え行くあなたに
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2024年春
春の日差しが心地よい朝、そんな天気の中紙がだめになるという理由で窓一つ無い部屋に男が一人黙々と机の上の自分の分身とも言える原稿に向かっていた。
ペンのこすれる音のみが響く部屋で唯一外界との繋がりが許された扉が音を立てて開かれる
「初めまして!逢沢 怜と申します!今日から一先生のアシスタントとしてお世話になります!」
うるさいくらいに元気のよい挨拶が僕の背中に突き刺さる。
「あぁ話は聞いているよ、とても優秀な人だとね」
正直言って興味がない、それ所か足手まといにならないかが心配な程だった
僕は後ろ姿を彼女に向けたまま言葉を吐き捨てる。
「君のような優秀な人間がどうして僕なんかのアシスタントをしたがるのか…理解しがたいがとりあえずそこの机に置いといたページの仕上げを頼めるかな?」
少しだけ後ろに目をやると不愛想な命令に対して彼女は笑顔でお辞儀して直ぐに仕事に入る
その速さにこそ目を見張るものがあるが出来がよくては話にならない
少しのため息と共に僕はまた目の前の原稿に釘付けになる。
暫しの沈黙の後に僕の視界に1枚の原稿が現れその瞬間に自身の原稿へと打たれていた目線の釘は急激に矛先を変えた
文句の付けようのない完璧な仕上げのされた原稿、まるで僕がもう一人居るように感じる仕上がり
この世にこれ以上の1ページは無いだろうとそう言い切れるほどに
こんな言い方では僕の実力が最高地点だと聞こえるかもしれないがそれで合っている、僕より面白い話を、ましてや僕より綺麗な原稿を仕上げられる人間なんて今まで見てきたことがなかった、僕の友人や家族、編集部の人間所か世の中のメディアでさえ天才だともてはやし口を揃えて1番だと言う。
だが目の前の彼女は見事に僕のその歪んだ思想を正してくれた、塗りつぶしてくれた、そんな原稿が今目の前の彼女の手に握られていた。
その原稿を受け取った僕は釘付けになった目線を再び引き抜き彼女の方を向く
彼女はただニッコリとした良い笑顔で僕に原稿の善し悪しを聞いてくる。
「どうでしょうか?」
その笑顔はただの愛想をよくしようとした物なのかそれとも自信の表れなのか僕にはわからなかったがこれ程の物を見せられてはこう答えざるを得ないだろう。
「あぁ…完璧だ!」
その言葉を聞いた彼女は僕にお辞儀をしてまた持ち場へと戻っていく
「待ってくれ!」
僕は持ち場に戻ろうとする彼女を呼び止める
彼女は歩みを止めて僕の方へと振り返る
「なぜ君はこれほどの物を描けるのにどうして僕のアシスタントなんて申し出たんだい?君程の実力ならばアシスタントなんかするよりも自分の作品を作る方が良い!もしもストーリーを作るのが苦手なら僕が良い人を紹介しよう!」
才能、努力、今まで見てきた人間以上にそれらが感じられてしまう彼女につい興奮してしまい我を失ったように言葉を発する。
その発言に帰ってきたのは笑顔と予想外すぎる答えだった。
「好きだからですよ。先生が」
そう言われ思わず心臓が大きく振動したがすぐに平常心を取り繕う
彼女が好きなのはあくまで僕の作品であって僕自身ではない、決して勘違いなんてしてはいけない。
「そ、そうか」
頬に残る熱の煩わしさを紛らわすようにまた自分の原稿へと向き合う
その後も彼女は僕から渡された未完成の原稿を完璧な完成品に仕上げていった、驚くべきはその精密さと速さだった、本当は僕のクローンだと言われても驚かないだろう、それ所かそういわれた方が納得いくだろう。
そんな彼女との時間はとても楽しかった、そこに会話はなくともはじめての対等な実力を持つ者がそばにいると言うだけで心が躍り人生で一番満ち足りていた。
だが時間というのはそんな気持ちの時ほど激しくめぐる物で壁に掛けられた時計は彼女との契約の時間、所謂提示の時間である19時を報せるように電子音をまき散らす。
その音に気付いた彼女は帰り支度を初めてしまう
「あ…」
彼女と話がしてみたい、語り合ってみたい、だが困った事に対等な人間への接し方を知らない僕は彼女をどう呼び留めたものかと悩んでいた、だがそんな僕を気にもせずに彼女は帰り支度を終え席を立つ
「待ってくれ!」
焦りの表れかどう理由付けするかも決まらぬまま彼女を呼び止めると彼女は何も言わずに振り返り僕の発言を待つように見つめてくる
「…コーヒーでも飲みながら少し話をしないか?」
僕が絞り出せたのはそんな提案だけだった、あまりにも不自然であまりにも奇妙、普通の人間ならばおかしくないだろうが生憎自分を変人だと理解している僕からしたらそれは僕らしくない提案だった
「先生は呼び止めるのが好きなんですね」
だが君はそんな僕に違和感を持つ事も無く朝と変わらない笑顔を向けて
「よろこんで」
優しい声でそう言ってくれた
僕は彼女が使用していた机の上をかるく整理しキッチンからコーヒーカップにいれられた2人分のコーヒーを持ってくる。
「砂糖やミルクは?」
「いえ、大丈夫です」
僕はコーヒーカップを置いたまま固まる
(しまった、呼び止めたのはいいが何の話を振るべきか…)
「あー…」
言葉を探すように口からは声が垂れ流される、そんな僕を見かねて彼女は自身の事を語りだした。
「私、元々はつまらない女子中学生だったんです」
「部活もやってない、趣味もない、特別親しい友人もいない…あ、でも普通におしゃべりするくらいの人達はいましたよ!」
聞いてもないのに手を大きく振りながら補足する彼女の話を僕は静かに聞いていた
「そんな学校生活を送って3年生になったある日にクラスですごく面白い漫画を見つけたって話題になりだしたんです」
「それが先生の漫画を知るキッカケでした」
「私は漫画なんて興味がなくて男の子が読む娯楽、そんな古臭い考えしかありませんでした」
「でも、そんな考えも吹き飛んじゃいました」
「まるでコマ1つ1つが美術作品のようだと、それでいて話1つ1つの満足感も高くて飽きさせない」
「それに、描いたのは私より1つ上の高校生だというじゃないですか、私それを聞いてすごくワクワクしたんです」
「今までの人生が何にも彩り何か無かった人生が先生の漫画によっていろんな色で塗りつぶされていく感じがしたんです」
彼女はまるで子供が夢を語るように目をキラキラさせて楽しそうに語っている
「だからこの心を伝えたくて…この人に会って伝えないといけないって思ったんです」
「それからどうすれば先生に会えるのかと考えた結果がアシスタントでした」
「幸運にも私の家は金銭的余裕がある家だったのでそのまま絵の学校に進みました、先生は気づいてると思うんですけど私の絵柄は先生のコピーなんです、その事で色々言われていたのは今でもよく覚えています」
「自分の絵柄をーだとか他者の真似はーだとか、耳が痛くなる程に並べられたその言葉も私にとっての絵は一先生の絵がすべてでしたから気にしませんでした」
「…そうか」
僕は最後まで静かに彼女の話に耳を傾けていた
「あ!なんだか自分語りばっかりになってましたね!すみません!」
「気にしないでくれ、僕はそういった君の話が聞きたくて呼び止めたんだ」
「それに、純粋に作品を褒められて目標にしてもらえるのはいつまでもうれしいものだよ」
「そういえば長年の夢が叶ったにしては随分と落ち着いているね、涙一つ見せないじゃないか」
僕は少し意地悪な問いを投げる
「えぇ、最初はうれしさのあまり飛び跳ねて、涙もたくさん流しました」
「でも、何回もやっている内になれちゃいました」
「?それはどういう…」
その時彼女の笑顔に曇りを感じてそれを指摘しようとしたとき時計は再び自身を主張するように20時を報せる音を鳴らす
「もう20時か、1時間も引き留めてしまって悪いね」
「いえいえ!お話しできてよかったです!」
君はまた朝と変わらぬ笑顔で僕に笑いかける
どうしてだろう、この笑顔を向けられるのは今日が初めてな気がしないんだ
「ふぅ…」
彼女が帰宅してから僕は自室の椅子に深く腰掛ける
目を開くと白く発光する証明と目が合い邪魔にも感じるが今更電気を消す気にもならずに腕を顔に当ててその場しのぎのような状態になる
「逢沢怜…か」
ハッキリ言おう、僕は彼女にとても惹かれている
一目惚れだかではなくただ彼女の漫画の腕にとても惹かれてそのままズルズルと…
だがそんな事を思った所で彼女からしたら迷惑以外の何物でもない、それにどう伝えればいい?君の漫画家としての腕に惚れたとでもいうのか?バカバカしい
「寝よう…今日は早く…」
そう呟いて重い体を起こしてベッドへと向かう
「いた!」
考え事をしている時特有の不注意で床に無造作に置かれたテレビのリモコンを踏みつけてしまい薄くホコリのかかるテレビに電源が入った
(面倒くさい、このままつけっぱなしで眠ってしまおう)
そんな事を考えているとテレビからはニュースキャスターの声が聞こえてくる
「次のニュースです、あの忌々しい事件から今日で1年が経ちました」
(1年前…何かあったか…?)
職業柄ニュースなどは週に一回程度だが目を通している、記憶を遡るが特にこれといった事件は無かったはずだ
「2024年4月20日、ネットの掲示板で1日だけ取引されその効果からギリシャ神話の忘却の川から取り【レテ】と名付けられたその薬物は何百人もの人々の心に深い傷跡を残していきました。」
その言葉を聞いて思わず飛び起きる
聞き間違いだと思いつつもテレビの画面を見るが確かに字幕には2024年の文字が写されていた
慌てて普段は使わないスマホの電源をつけて日付を確認するが今は2025年の日付で表示されていた
「どういう…事だ…」
意味の分からない状況の僕に答え合わせをするようにニュースは進んでいく
「レテは一見すると透明な無味無臭の液体ですが少量でもレテを飲んでしまうと1日で記憶がリセットされる体になり、新しい記憶は睡眠と共にすべてリセットされてしまうのです」
「…はは」
笑うしかなかった、謎解き物だとかミステリー物だとかを描かない僕でもここまでお膳立てされては気づくしかなかった。
少しの思考停止の後に浮かんだのは今朝の彼女の事だった
スマホの連絡先に目を通せば数少ない連絡先の一つに何時登録されたかわからない逢沢怜の3文字があった
僕は迷わずその電話番号に電話を掛けると数回の電子音の後にスマホから声が聞こえる
『もしもし?どうかされましたか』
「さっき別れたばかりなのにすまない」
「…僕は記憶喪失なのだろうか」
『…』
その沈黙はきっと僕の質問への肯定の意味も含まれていたのだろう
『今からそちらに戻りますね』
そういって彼女は電話を切った
この家で一番落ち着く場所、仕事場の自身の椅子に腰かけて彼女の到着を待っていると扉を開けて部屋に入ってくる
「こんばんは、先生」
「あぁ、こんばんは」
「随分と、落ち着ているんですね」
確かに落ち着いている、しかしそれはあまりの情報量を処理しきれず考える事をやめただけに過ぎない
「知っていることを話してほしい」
「…はい」
彼女は僕の前に置かれた椅子に座ると1年前のことを話し始めた
「先生はレテという薬をご存じですか?」
「あぁさっきニュースで見た、一日の記憶をリセットしてしまう薬だとか」
こくりと首を縦に振り話を続ける
「大体はその認識で合っています、レテは飲めば直ぐに脳に作用し構造の一部を変化させるんです」
「変化…?」
「はい、先生はレム睡眠というのをご存じですか?」
「確か一日の記憶を整理して脳に定着させる事…だったか」
「よくご存じですね」
「職業柄色々調べるものでね」
「レテはその整理するという性質を消去という形に書き換えてしまうんです」
「…1からのシステムではなく既存の物を描き替える、確かに不思議な力と説明されるよりは納得いくかもしれないね」
「先生は前日…記憶がある限りの最後の来客を覚えていますか?」
「あぁ、僕と同時期に連載を始めたという人が相談に来ていたな、生憎話は合わずに怒らせてしまったが」
「彼がレテを盛りました」
「…嫉妬か」
「鋭いんですね」
「うすうす感づいてはいたがまさか自分のこの性格のせいでこんな事になるとはね…」
「こんな性格と才能を持ってしまったんだ、嫉妬、憎悪、そういった感情を持つなと言う方が無茶だろう」
「彼は先生が記憶喪失になり始めてから一週間程でつかまりました」
「…そうか、彼は今どうしているんだい?」
「それが、未だにレテ使用による危害の裁判は終わってないんです、被害者が一見健康である事、そしてどの罪を問えばいいのかという論争は今でも世間では絶えません」
「はぁ、日本人はこういう時頑固で困るな…」
「それと…レテの特効薬もまだ実験段階でまだ完成には時間も予算も足りないそうです…」
部屋により重たい空気が充満しだし話題を少しでも切り替えようと話を振る
「そういえば僕の家が何も変わってないのは君が?」
「あ、いえ私ではなく編集者の方達が先生が眠ってから減ったものの補充とかを」
「そうか…でもどうしてそんな面倒なことを?」
その質問をすると彼女の表情が少し曇ったように感じる
「…先生が記憶喪失に気付いたのは3回目なんです」
「3回目…?」
「1回目は検査の為に病院で目覚めたとき、そして二回目は家にある消耗品の減り具合で気づいたんです」
「だが記憶はまた消えるんだろう?気づかれた時に変えればいいのではないか?」
「先生が二度目の時にした事は自殺でした」
「…」
今はあまりの情報量で深く考える暇もなかったが冷静に記憶喪失だけで考えれば未来なんて無い…未来を諦めるのも仕方ないか
「幸い私が居たので未遂に終わりましたけどね」
「それは…迷惑をかけたね」
「いえいえ!先生が謝ることじゃないですから!」
「どうして君は僕にそこまでしてくれるんだい?」
さっきまで大きく手を振って否定していた彼女はその手を止めて真剣な顔へと変わる
「それはもう言いましたよ、先生が好きだからです」
優しい笑顔を僕に向けながら頬を赤らめそう言った
これは…男としてハッキリとさせておくべきかもしれない
「…逢沢君」
「はい」
「今からいうのは漫画家としての僕の言葉だ」
彼女の目を見据え真剣な表情でそういうと彼女は戸惑い小さく頷いた
「今すぐ原作者を見つけて漫画家として生きなさい」
「え…」
それはこれまでの彼女の行いを否定するもの、しかし客観的にみるならば一番の提案でもあった
「記憶が消える男の面倒なんて見てないでその才能を、いや努力を世界に知らしめるんだ」
「先生…私は…」
「建前はこれくらいにしようか、ここからは」
言葉を遮るように僕は椅子から立ち、彼女の目の前に片膝をつく
「一人の男として、ただの希咲 一としての言葉だ」
今にも泣きだしそうな彼女がうつむいた顔を上げて涙目になった瞳と目が合う
「僕は、どうしようもなく君に惹かれている」
「たとえ記憶喪失が治らなくても、それでも君を放したくない、そんな汚い独占欲で染まってしまっている」
「あ、え…」
急な展開に彼女は混乱の中にいるがそのまま僕は話を続ける
「僕は元々人を見下してしまう質でね、そのせいで恨みを買ったり…まぁそのせいでこうなってしまったんだけれどね」
「でもそれは本当に僕以上を、それ所か僕のレベルに至る人間も見たことがなかった」
「そこに、君が現れた」
「君が僕の漫画の色で塗りつぶされたように僕は君という人間に心を塗りつぶされてしまったんだ」
「だから僕はレテの呪縛から解放された時は…」
「僕と結婚してほしい」
真っ直ぐ見据えたその決意に彼女は震えた声で返す
「ずるいですよ…憧れた人に…好きな人にそんなこと言われたら…断れるわけないじゃないですか…」
「はは、ズルいっていうのは天才へ誉め言葉になるんだよ?」
「こんなこと言われたのは…今日が初めてです…」
「今までの僕は節穴だったのか、それともヘタレだったのかな?」
「…眠ったら忘れるのにプロポーズですか?」
「痛い所を突かないでくれ…それに神様だってハッピーエンドが好きなはずさ」
「悪趣味な神様じゃないといいですね」
スゥー…
直後彼女は落ち着く為に一つ大きな深呼吸をする
パァン!
そのまま自身の頬に強く掌をぶつける
「決めました!私が売れっ子漫画家になって!先生の為に薬の研究費を稼ぎまくります!」
「薬を作るんじゃなくて研究費を稼ぐっていうのは随分と現実に寄ったね?」
「うっ…別にいいじゃないですか!」
「ははっ、もちろんだよ」
そして彼女は椅子から立ち上がり涙の痕も隠さず笑顔で別れの言葉を言う
「それでは、おやすみなさい一さん」
「あぁ、さようならだね怜君」
数年後
『 先生!ズバリ今回の作品のテーマは! 』
司会の男性が熱狂的にマイクに語り掛けるとその場にあるカメラの向かう先は一人の女性に集められる
「そうですねぇ…う~ん」
「【消えゆくあなたに】ですかね~」
そういう女性の薬指には光を反射するアクセサリーが付けられていた
春の日差しが心地よい朝、そんな天気の中紙がだめになるという理由で窓一つ無い部屋に男が一人黙々と机の上の自分の分身とも言える原稿に向かっていた。
ペンのこすれる音のみが響く部屋で唯一外界との繋がりが許された扉が音を立てて開かれる
「初めまして!逢沢 怜と申します!今日から一先生のアシスタントとしてお世話になります!」
うるさいくらいに元気のよい挨拶が僕の背中に突き刺さる。
「あぁ話は聞いているよ、とても優秀な人だとね」
正直言って興味がない、それ所か足手まといにならないかが心配な程だった
僕は後ろ姿を彼女に向けたまま言葉を吐き捨てる。
「君のような優秀な人間がどうして僕なんかのアシスタントをしたがるのか…理解しがたいがとりあえずそこの机に置いといたページの仕上げを頼めるかな?」
少しだけ後ろに目をやると不愛想な命令に対して彼女は笑顔でお辞儀して直ぐに仕事に入る
その速さにこそ目を見張るものがあるが出来がよくては話にならない
少しのため息と共に僕はまた目の前の原稿に釘付けになる。
暫しの沈黙の後に僕の視界に1枚の原稿が現れその瞬間に自身の原稿へと打たれていた目線の釘は急激に矛先を変えた
文句の付けようのない完璧な仕上げのされた原稿、まるで僕がもう一人居るように感じる仕上がり
この世にこれ以上の1ページは無いだろうとそう言い切れるほどに
こんな言い方では僕の実力が最高地点だと聞こえるかもしれないがそれで合っている、僕より面白い話を、ましてや僕より綺麗な原稿を仕上げられる人間なんて今まで見てきたことがなかった、僕の友人や家族、編集部の人間所か世の中のメディアでさえ天才だともてはやし口を揃えて1番だと言う。
だが目の前の彼女は見事に僕のその歪んだ思想を正してくれた、塗りつぶしてくれた、そんな原稿が今目の前の彼女の手に握られていた。
その原稿を受け取った僕は釘付けになった目線を再び引き抜き彼女の方を向く
彼女はただニッコリとした良い笑顔で僕に原稿の善し悪しを聞いてくる。
「どうでしょうか?」
その笑顔はただの愛想をよくしようとした物なのかそれとも自信の表れなのか僕にはわからなかったがこれ程の物を見せられてはこう答えざるを得ないだろう。
「あぁ…完璧だ!」
その言葉を聞いた彼女は僕にお辞儀をしてまた持ち場へと戻っていく
「待ってくれ!」
僕は持ち場に戻ろうとする彼女を呼び止める
彼女は歩みを止めて僕の方へと振り返る
「なぜ君はこれほどの物を描けるのにどうして僕のアシスタントなんて申し出たんだい?君程の実力ならばアシスタントなんかするよりも自分の作品を作る方が良い!もしもストーリーを作るのが苦手なら僕が良い人を紹介しよう!」
才能、努力、今まで見てきた人間以上にそれらが感じられてしまう彼女につい興奮してしまい我を失ったように言葉を発する。
その発言に帰ってきたのは笑顔と予想外すぎる答えだった。
「好きだからですよ。先生が」
そう言われ思わず心臓が大きく振動したがすぐに平常心を取り繕う
彼女が好きなのはあくまで僕の作品であって僕自身ではない、決して勘違いなんてしてはいけない。
「そ、そうか」
頬に残る熱の煩わしさを紛らわすようにまた自分の原稿へと向き合う
その後も彼女は僕から渡された未完成の原稿を完璧な完成品に仕上げていった、驚くべきはその精密さと速さだった、本当は僕のクローンだと言われても驚かないだろう、それ所かそういわれた方が納得いくだろう。
そんな彼女との時間はとても楽しかった、そこに会話はなくともはじめての対等な実力を持つ者がそばにいると言うだけで心が躍り人生で一番満ち足りていた。
だが時間というのはそんな気持ちの時ほど激しくめぐる物で壁に掛けられた時計は彼女との契約の時間、所謂提示の時間である19時を報せるように電子音をまき散らす。
その音に気付いた彼女は帰り支度を初めてしまう
「あ…」
彼女と話がしてみたい、語り合ってみたい、だが困った事に対等な人間への接し方を知らない僕は彼女をどう呼び留めたものかと悩んでいた、だがそんな僕を気にもせずに彼女は帰り支度を終え席を立つ
「待ってくれ!」
焦りの表れかどう理由付けするかも決まらぬまま彼女を呼び止めると彼女は何も言わずに振り返り僕の発言を待つように見つめてくる
「…コーヒーでも飲みながら少し話をしないか?」
僕が絞り出せたのはそんな提案だけだった、あまりにも不自然であまりにも奇妙、普通の人間ならばおかしくないだろうが生憎自分を変人だと理解している僕からしたらそれは僕らしくない提案だった
「先生は呼び止めるのが好きなんですね」
だが君はそんな僕に違和感を持つ事も無く朝と変わらない笑顔を向けて
「よろこんで」
優しい声でそう言ってくれた
僕は彼女が使用していた机の上をかるく整理しキッチンからコーヒーカップにいれられた2人分のコーヒーを持ってくる。
「砂糖やミルクは?」
「いえ、大丈夫です」
僕はコーヒーカップを置いたまま固まる
(しまった、呼び止めたのはいいが何の話を振るべきか…)
「あー…」
言葉を探すように口からは声が垂れ流される、そんな僕を見かねて彼女は自身の事を語りだした。
「私、元々はつまらない女子中学生だったんです」
「部活もやってない、趣味もない、特別親しい友人もいない…あ、でも普通におしゃべりするくらいの人達はいましたよ!」
聞いてもないのに手を大きく振りながら補足する彼女の話を僕は静かに聞いていた
「そんな学校生活を送って3年生になったある日にクラスですごく面白い漫画を見つけたって話題になりだしたんです」
「それが先生の漫画を知るキッカケでした」
「私は漫画なんて興味がなくて男の子が読む娯楽、そんな古臭い考えしかありませんでした」
「でも、そんな考えも吹き飛んじゃいました」
「まるでコマ1つ1つが美術作品のようだと、それでいて話1つ1つの満足感も高くて飽きさせない」
「それに、描いたのは私より1つ上の高校生だというじゃないですか、私それを聞いてすごくワクワクしたんです」
「今までの人生が何にも彩り何か無かった人生が先生の漫画によっていろんな色で塗りつぶされていく感じがしたんです」
彼女はまるで子供が夢を語るように目をキラキラさせて楽しそうに語っている
「だからこの心を伝えたくて…この人に会って伝えないといけないって思ったんです」
「それからどうすれば先生に会えるのかと考えた結果がアシスタントでした」
「幸運にも私の家は金銭的余裕がある家だったのでそのまま絵の学校に進みました、先生は気づいてると思うんですけど私の絵柄は先生のコピーなんです、その事で色々言われていたのは今でもよく覚えています」
「自分の絵柄をーだとか他者の真似はーだとか、耳が痛くなる程に並べられたその言葉も私にとっての絵は一先生の絵がすべてでしたから気にしませんでした」
「…そうか」
僕は最後まで静かに彼女の話に耳を傾けていた
「あ!なんだか自分語りばっかりになってましたね!すみません!」
「気にしないでくれ、僕はそういった君の話が聞きたくて呼び止めたんだ」
「それに、純粋に作品を褒められて目標にしてもらえるのはいつまでもうれしいものだよ」
「そういえば長年の夢が叶ったにしては随分と落ち着いているね、涙一つ見せないじゃないか」
僕は少し意地悪な問いを投げる
「えぇ、最初はうれしさのあまり飛び跳ねて、涙もたくさん流しました」
「でも、何回もやっている内になれちゃいました」
「?それはどういう…」
その時彼女の笑顔に曇りを感じてそれを指摘しようとしたとき時計は再び自身を主張するように20時を報せる音を鳴らす
「もう20時か、1時間も引き留めてしまって悪いね」
「いえいえ!お話しできてよかったです!」
君はまた朝と変わらぬ笑顔で僕に笑いかける
どうしてだろう、この笑顔を向けられるのは今日が初めてな気がしないんだ
「ふぅ…」
彼女が帰宅してから僕は自室の椅子に深く腰掛ける
目を開くと白く発光する証明と目が合い邪魔にも感じるが今更電気を消す気にもならずに腕を顔に当ててその場しのぎのような状態になる
「逢沢怜…か」
ハッキリ言おう、僕は彼女にとても惹かれている
一目惚れだかではなくただ彼女の漫画の腕にとても惹かれてそのままズルズルと…
だがそんな事を思った所で彼女からしたら迷惑以外の何物でもない、それにどう伝えればいい?君の漫画家としての腕に惚れたとでもいうのか?バカバカしい
「寝よう…今日は早く…」
そう呟いて重い体を起こしてベッドへと向かう
「いた!」
考え事をしている時特有の不注意で床に無造作に置かれたテレビのリモコンを踏みつけてしまい薄くホコリのかかるテレビに電源が入った
(面倒くさい、このままつけっぱなしで眠ってしまおう)
そんな事を考えているとテレビからはニュースキャスターの声が聞こえてくる
「次のニュースです、あの忌々しい事件から今日で1年が経ちました」
(1年前…何かあったか…?)
職業柄ニュースなどは週に一回程度だが目を通している、記憶を遡るが特にこれといった事件は無かったはずだ
「2024年4月20日、ネットの掲示板で1日だけ取引されその効果からギリシャ神話の忘却の川から取り【レテ】と名付けられたその薬物は何百人もの人々の心に深い傷跡を残していきました。」
その言葉を聞いて思わず飛び起きる
聞き間違いだと思いつつもテレビの画面を見るが確かに字幕には2024年の文字が写されていた
慌てて普段は使わないスマホの電源をつけて日付を確認するが今は2025年の日付で表示されていた
「どういう…事だ…」
意味の分からない状況の僕に答え合わせをするようにニュースは進んでいく
「レテは一見すると透明な無味無臭の液体ですが少量でもレテを飲んでしまうと1日で記憶がリセットされる体になり、新しい記憶は睡眠と共にすべてリセットされてしまうのです」
「…はは」
笑うしかなかった、謎解き物だとかミステリー物だとかを描かない僕でもここまでお膳立てされては気づくしかなかった。
少しの思考停止の後に浮かんだのは今朝の彼女の事だった
スマホの連絡先に目を通せば数少ない連絡先の一つに何時登録されたかわからない逢沢怜の3文字があった
僕は迷わずその電話番号に電話を掛けると数回の電子音の後にスマホから声が聞こえる
『もしもし?どうかされましたか』
「さっき別れたばかりなのにすまない」
「…僕は記憶喪失なのだろうか」
『…』
その沈黙はきっと僕の質問への肯定の意味も含まれていたのだろう
『今からそちらに戻りますね』
そういって彼女は電話を切った
この家で一番落ち着く場所、仕事場の自身の椅子に腰かけて彼女の到着を待っていると扉を開けて部屋に入ってくる
「こんばんは、先生」
「あぁ、こんばんは」
「随分と、落ち着ているんですね」
確かに落ち着いている、しかしそれはあまりの情報量を処理しきれず考える事をやめただけに過ぎない
「知っていることを話してほしい」
「…はい」
彼女は僕の前に置かれた椅子に座ると1年前のことを話し始めた
「先生はレテという薬をご存じですか?」
「あぁさっきニュースで見た、一日の記憶をリセットしてしまう薬だとか」
こくりと首を縦に振り話を続ける
「大体はその認識で合っています、レテは飲めば直ぐに脳に作用し構造の一部を変化させるんです」
「変化…?」
「はい、先生はレム睡眠というのをご存じですか?」
「確か一日の記憶を整理して脳に定着させる事…だったか」
「よくご存じですね」
「職業柄色々調べるものでね」
「レテはその整理するという性質を消去という形に書き換えてしまうんです」
「…1からのシステムではなく既存の物を描き替える、確かに不思議な力と説明されるよりは納得いくかもしれないね」
「先生は前日…記憶がある限りの最後の来客を覚えていますか?」
「あぁ、僕と同時期に連載を始めたという人が相談に来ていたな、生憎話は合わずに怒らせてしまったが」
「彼がレテを盛りました」
「…嫉妬か」
「鋭いんですね」
「うすうす感づいてはいたがまさか自分のこの性格のせいでこんな事になるとはね…」
「こんな性格と才能を持ってしまったんだ、嫉妬、憎悪、そういった感情を持つなと言う方が無茶だろう」
「彼は先生が記憶喪失になり始めてから一週間程でつかまりました」
「…そうか、彼は今どうしているんだい?」
「それが、未だにレテ使用による危害の裁判は終わってないんです、被害者が一見健康である事、そしてどの罪を問えばいいのかという論争は今でも世間では絶えません」
「はぁ、日本人はこういう時頑固で困るな…」
「それと…レテの特効薬もまだ実験段階でまだ完成には時間も予算も足りないそうです…」
部屋により重たい空気が充満しだし話題を少しでも切り替えようと話を振る
「そういえば僕の家が何も変わってないのは君が?」
「あ、いえ私ではなく編集者の方達が先生が眠ってから減ったものの補充とかを」
「そうか…でもどうしてそんな面倒なことを?」
その質問をすると彼女の表情が少し曇ったように感じる
「…先生が記憶喪失に気付いたのは3回目なんです」
「3回目…?」
「1回目は検査の為に病院で目覚めたとき、そして二回目は家にある消耗品の減り具合で気づいたんです」
「だが記憶はまた消えるんだろう?気づかれた時に変えればいいのではないか?」
「先生が二度目の時にした事は自殺でした」
「…」
今はあまりの情報量で深く考える暇もなかったが冷静に記憶喪失だけで考えれば未来なんて無い…未来を諦めるのも仕方ないか
「幸い私が居たので未遂に終わりましたけどね」
「それは…迷惑をかけたね」
「いえいえ!先生が謝ることじゃないですから!」
「どうして君は僕にそこまでしてくれるんだい?」
さっきまで大きく手を振って否定していた彼女はその手を止めて真剣な顔へと変わる
「それはもう言いましたよ、先生が好きだからです」
優しい笑顔を僕に向けながら頬を赤らめそう言った
これは…男としてハッキリとさせておくべきかもしれない
「…逢沢君」
「はい」
「今からいうのは漫画家としての僕の言葉だ」
彼女の目を見据え真剣な表情でそういうと彼女は戸惑い小さく頷いた
「今すぐ原作者を見つけて漫画家として生きなさい」
「え…」
それはこれまでの彼女の行いを否定するもの、しかし客観的にみるならば一番の提案でもあった
「記憶が消える男の面倒なんて見てないでその才能を、いや努力を世界に知らしめるんだ」
「先生…私は…」
「建前はこれくらいにしようか、ここからは」
言葉を遮るように僕は椅子から立ち、彼女の目の前に片膝をつく
「一人の男として、ただの希咲 一としての言葉だ」
今にも泣きだしそうな彼女がうつむいた顔を上げて涙目になった瞳と目が合う
「僕は、どうしようもなく君に惹かれている」
「たとえ記憶喪失が治らなくても、それでも君を放したくない、そんな汚い独占欲で染まってしまっている」
「あ、え…」
急な展開に彼女は混乱の中にいるがそのまま僕は話を続ける
「僕は元々人を見下してしまう質でね、そのせいで恨みを買ったり…まぁそのせいでこうなってしまったんだけれどね」
「でもそれは本当に僕以上を、それ所か僕のレベルに至る人間も見たことがなかった」
「そこに、君が現れた」
「君が僕の漫画の色で塗りつぶされたように僕は君という人間に心を塗りつぶされてしまったんだ」
「だから僕はレテの呪縛から解放された時は…」
「僕と結婚してほしい」
真っ直ぐ見据えたその決意に彼女は震えた声で返す
「ずるいですよ…憧れた人に…好きな人にそんなこと言われたら…断れるわけないじゃないですか…」
「はは、ズルいっていうのは天才へ誉め言葉になるんだよ?」
「こんなこと言われたのは…今日が初めてです…」
「今までの僕は節穴だったのか、それともヘタレだったのかな?」
「…眠ったら忘れるのにプロポーズですか?」
「痛い所を突かないでくれ…それに神様だってハッピーエンドが好きなはずさ」
「悪趣味な神様じゃないといいですね」
スゥー…
直後彼女は落ち着く為に一つ大きな深呼吸をする
パァン!
そのまま自身の頬に強く掌をぶつける
「決めました!私が売れっ子漫画家になって!先生の為に薬の研究費を稼ぎまくります!」
「薬を作るんじゃなくて研究費を稼ぐっていうのは随分と現実に寄ったね?」
「うっ…別にいいじゃないですか!」
「ははっ、もちろんだよ」
そして彼女は椅子から立ち上がり涙の痕も隠さず笑顔で別れの言葉を言う
「それでは、おやすみなさい一さん」
「あぁ、さようならだね怜君」
数年後
『 先生!ズバリ今回の作品のテーマは! 』
司会の男性が熱狂的にマイクに語り掛けるとその場にあるカメラの向かう先は一人の女性に集められる
「そうですねぇ…う~ん」
「【消えゆくあなたに】ですかね~」
そういう女性の薬指には光を反射するアクセサリーが付けられていた
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