涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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人生の機微

けじめと決意12

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「佐知さんいいのよ 彼はね本当にいい人だったのよ もう彼なしではいられないほど好きになっていたわ でも好きになればなるほど不倫して子供まで生んだ自分の過去に苛まれたわ 不倫を塗りつぶして無かったものにして聖女ぶって彼と会っている自分が本当に嫌だった 隠し事を心にもって一緒になるのは彼に申し訳ないとすべて話そうと思ったの でも過去を話したら彼は私から去ってしまうそんな気がして・・・結局言えなかったわ そんな状態が続いた私は精神的に疲弊してしまい彼と会うことを避けてしまったの」


「事情を知らない彼はお義母さんに会いたかったでしょうね」


「すべてを打ちあけたら彼から別れ話を切り出されると私は勝手に思い込んでいたの だから彼の気持ちも考えず自分の保身ばかりに走って あのときの私は自ら身を引いて早く楽になりたかったのかもしれないわね 身をひくと決意した私は彼との幸せを諦めた でもその結果は楽になるどころか身を削られるような辛い思いを抱えながら過ごす毎日だったわ 当然だけど彼との関係はそれっきり・・終わったわ 人の気持ちを踏みにじり逃げた私を彼は卑劣で最低な女だと思っているでしょうね 浅はかでバカな女だと嘲笑っているにちがいないわ」


「そんなこと思っていないと断言します 愛した人をそんな風に言う人こそ最低です お義母さんは言いましたよね 彼はいい人だったと、私もそう思いました だからお義母さんが今も彼を思うようにその人もお義母さんを思い出して懐かしんでいると思います その人はお義母さんの過去を洗いざらい聞いても変わらずお義母さんを愛し続けたのではないでしょうか そして生涯お義母さんに寄り添い幸せにしてくれたはずです」


「そうね、あの人は私の過去なんかに動じなかったでしょうね 大きく両手を開いていつか私が飛び込むのを待っていてくれたはず・・きっとそうね 今更どうにもならないけど若い佐知さんにはこれからたくさんの出会いがあるわ 添い遂げられなかったつらい思いを残すことだけはないよう忠告しておくわ」


「お義母さんの気持わかります痛いほどわかります」


「もしかして佐知さんにもそんな人が」


添い遂げられなかった辛い思い出が再び佐知の脳裏に蘇ってきた。


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