涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

文字の大きさ
上 下
283 / 316
人生の機微

けじめと決意4

しおりを挟む
「聞きたいのは井川君のことかしら」


「いいえ彼の事じゃなくて昔ママが言った言葉の真意を聞きたくて」


「わたしが話した言葉の何を聞きたいの」


「ママは井川君と私に二人は生涯美香さんを背負い生きてゆくことになると言いました その意味を知りたくて、ママわたしに解るように教えて下さい」


「そうね、そんなような事言ったわね でも正確に言えば二人はでなく二人でと言ったような気がするわ そうなれば意味もおのずと変わってくるわね」


「・・・・・  」


「私が言わずとも答えはもうあなたのそばにあるから必ず自分で見つけられるわよ」


「遠くない日に私自身がその意味を知る、分かるって事ですか」


「佐知さんは囚われていたものからやっと解放され抜け出したわ これからはこれまで見えなかったものがはっきり見えるようになってくるわ 自分の心まで鏡に写るかのようにはっきりとね だからあなたはもっと自分と未来を信じて今まで通りおきばりなさい」


「このまま通り突き進みなさいって背中を押して貰えて嬉しいです ありがとうママ」


「わたしが話すこと間違っているのかもしれないけど聞いてくれる 佐知さん、色を重ね描いたキャンバスをもとの真っ白まっさらには出来ないわよね でも諦めずその上に色を重ねていったらどうなるかしら、いつか必ず自分が思い描くものに近づけるんじゃないかなってわたしは思うの そのキャンバスにこれからも佐知さんでなければ出せない色を重ね続けあなたでなければ描けない絵を完成させて欲しい これが私からあなたへのはなむけよ」


「ママありがとう ママの言うキャンバスに自分だけの納得のいく作品をいつか必ず完成させてみせます」


「そう言ってもらうと嬉しい限りだわ 最近の子たちってハァ~とか、わかんな~い、なんすかそれとか話かけても会話が成り立たないのよね そんな今どきの若者にため息つく有様だったから今日は佐知さんとまともに話せて嬉しいわ」


「確かにそんな子、最近多いですね」


「佐知さんだけはそうならないように子供をしっかり育てなさいよ」


「はい心しておきます」


店を出てアーケードを抜けると寒風が一段と身に応えた。見上げる空には墨枯れした幾重もの黒い筋が雲の切れ間に連なっていた。


「秀和ごめんね今日は寒かったわね 暖かい晴れの日がママは好きだけどお天気も人生と同じで思うようにはいかないみたいね 秀和明日は晴れるといいね バァバとジィジ心配して待ってるから早く帰ろうね」


もう一人佐知には会いたい大切な人がいた。それは秀行を生んでくれた実母勤務先の西條病院で上司だったハイミス部長だった。



あとがき
物語も終盤に入り完結も目前に近づいてまいりました。引き続き最後まで宜しくお願い致します。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

かあさんのつぶやき

春秋花壇
現代文学
あんなに美しかった母さんが年を取っていく。要介護一歩手前。そんなかあさんを息子は時にお世話し、時に距離を取る。ヤマアラシのジレンマを意識しながら。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...