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人生の機微

我が子と歩む未来は

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「今夜は最後の晩でございますからお二人でゆっくりお話し下さいませ 秀和坊ちゃんには私がついておりますから」


「泉さん、わたし今日は早く休みますから」


「自宅に送る荷物を一人でまとめたんだから疲れただろう 今夜はもう休んだほうがいいよ」


「雅和さんは本当にそれでよろしいのですか わたくしには今の言葉が本心とは思えませんが 佐知さんは明日ここを出て行かれるのでございますよ 雅和さんもアメリカに御発ちになります。お二人がお顔を合せお話しするのも今夜が最後これからはお会いする事もままならないのです 雅和さんは後悔なされぬようご自分の心にしかと向き合い嘘だけは付かないで下さいませ」


「俺は嘘なんかついていないよ でも泉さんが言うとおり今日は最後の晩だ、佐知が平気だったらもう少し二人で話さないか」


「そうね、最後だものね 泉さん秀和をお願いします」


「はい今夜は私の部屋で寝かしつけましょう わたくしは残りの仕事を片付けて秀和ぼっちゃんと先に休ませて頂きますね」


「泉さんすまないね、よろしく」


「お父様の柳木沢様とは大違い、いざという時の押しがきかないそこだけは惜しゅうございますね」


「んっなに・・俺のこと」


「そうでございますよ ではあとは佐知さんにお任せしてわたくしは退散いたしますね お休みなさいませ」


「雅和も泉さんには敵わないみたいね」


「いつもあんな調子さ ここに来る事務所の人たちはお決まりのように二人はまるで親子みたいだなって笑うんだ」


「わかるような気がするわ」


「こうしてゆっくり話すのは佐知がこの家に来て今夜が最初で最後だな」


「泉さんがいないとなんだか落ち着かないわね」


「俺、佐知に聞きたいことがあるんだけどいいかな」


「えぇいいわよ」


「秀和のことだけど、両親のもとに帰るんだから心配ないと思うけど・・」


「秀和のこと心配してくれているの ありがとう」


「余計なことかもしれないけれどこれから秀行を抱えての生活は大変だと思うんだ 実家に戻れば親と同居だから心強いし安心だろうけどだからこそ聞いておきたいんだ 佐知に秀行と生きて行く覚悟が出来ているのか・・親がいないものと仮定して佐知は君一人でも秀行を育て上げる覚悟があるか聞きたかった」


「覚悟は産もうと決めた時にできているわ 雅和は私と秀行のこれからの事を心配しているのね でも先のことは私もだれかに聞きたいくらい分からないの 今はまだ何も考えていないし見えてないけど実家に帰ったらしっかり考えるわ」


「だったら当分は秀和オンリーの生活だな」


「私は秀和がいるから悲しみをはねのけて気丈にしていられるの あの子といるとわたし笑っていられる秀行さんが好きだと言ってくれた笑顔でいられるの これからのことは秀和を育てながら考えるわ しばらくは雅和の言うように秀和オンリーの人生になりそうね」


「佐知なら秀和をしっかり育てて行けると俺が太鼓判を押すよ でも子供を育てるのは並大抵じゃない いくら気丈にしていたって不安や心配はいやでも付きまとうよ」


「雅和は明日香ちゃんがいたからわかるのよね 本心を言えば一人で育ててゆくのは不安ばかりよ でもそれは親だったら誰もが感じることで私に限ったことじゃないでしょ それに私は一人じゃない雅和あなたがいる いつでも助けてくれる雅和という強い見方、助っ人のあなたがいるわ」 


「もしその俺が・・いなくなったら佐知きみはどうする」


「秀行さんを亡くした私にどうしてそんなこと聞くの そんな悲しいこと・・答えられない」


「いやでも考えるんだ 秀和としっかり生きてゆくと誓ったのなら俺が居ようが居まいがそんなことに動じるな」


「雅和との絆が切れないようにわたし神に祈り続けるわ 再び巡り会えたあなたとの絆だけは何があっても離したくないの」


知らず知らず涙が溢れていた

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