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人生の機微

新たな命と共に2

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「やはりそうなのね そんな顔しなくてもいいわ わたしは誰にも言わないから安心して、実はね、わたし子供を産んだことがあるのよ その子、今は立派な社会人になっているわ」


「部長にお子さんがいたなんて知りませんでした」


「それはそうよ、誰にも言えないシークレットですもの」


「そんな秘密を私に・・」


「皆井さんあなたにだけは聞いてもらいたかったの もしあなたに子供を産んでよかったですかと問われたら自信を持って私はイエスと答えるわ 産まない選択をしていたらきっと後悔していたもの 相手の人には家庭があったから、わたし結婚は潔くあきらめたわ だって私が結婚を夢見たりしたらいずれ相手の家庭を崩壊させることになるでしょう 若かった私は愛する人の子供を産めるならそれだけで・・私の傍らに愛する人の子供がいてくれるならそれで十分だった なのに私は大切なその子を手離してしまったの」


「ご自分で育てなかったのですか」


「彼の奥さんは子供ができにくい体で長い間辛い不妊治療を続けていたの でも駄目だった だから私が産んだ子供をどうしても跡継ぎにしたいと院長に懇願されて私は負けてしまった誰が聞いても酷い母親だと思うでしょうね」


「えっ・・部長のお相手は院長先生」


「病院で私が院長先生の後釜を狙っているから独身でいるなんて噂が流れているみたいね 確かに私が愛した人は院長先生そして秀行先生は私が産んだ子供」


「・・・・・・」


「院長夫人は私と院長の関係、今あなたに話したことは知らずにいるわ 秀行を養子に出した時を同じくして院長先生の計らいで私はこの病院で働く事になったの 秀行の成長を間近で見られるのが嬉しくてたまらなかったわ 子供を手離した罪悪感と悲しみはいつまでも消えないけれど立派に成長した秀行の姿を見てこれで良かったのだと今は院長夫妻に感謝しているのよ」


「それなら部長はいま誰よりも秀行先生のことが心配でしょうね」


「そうね、皆井さんと同じくらい心配しているわ」


「私と同じくらい・・」
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