涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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愛は陽炎(あいはかげろう)

ここにある愛4

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秀行は事故で心身総弱になった彼女のために時間を費やすようになっていた。


「秀行さん今度のお休み時間とれますか 来月父の誕生日だから一緒にシャツを見立ててほしいの」

「今週は彼女のリハビリにつきあう約束してるから来週でもいいかな」

「・・秀行さんに質問してもいいですか」

「え質問・・なにかな」

「秀行さんはいつまで彼女を・・私はあとどのくらい待てばいいの」

「前に待つ身の辛さは佐知さんが一番知っていると話してくれたよね 僕はそのつらい思いを君にさせているんだよね 本当にすまないと思っている」

「そのつらさも愛だと秀行さんは言いました そして私にはそんな思いはさせないって言ってくれましたよね」

「僕を信じて待ってくれ、それが僕の答えだ いまはそれしか・・佐知さんの気持ちは痛いほどわかっているのに・・ごめん」


佐知は詫びる秀行に抱きつき唇を重ね合わせた。むさぼるように舌を絡め狂おしいまでに秀行の体にしがみついていた。

あれ以来、秀行は佐知の前で彼女の話を一切しなくなり以前のように佐知だけのために休日の時間を費やしてくれた。休日は佐知の気持ちを優先し彼女に会いに行けなくなった秀行は出張を利用して彼女と合うようになっていた。これまで佐知に包み隠さず何でも話してきた秀行は何か悪いことでもしているような後ろめたさを感じ始めていた。佐知と接する態度にもその思いが反映してかどこかぎくしゃくしだしていた。そんな秀行の変化に佐知は気づいていたがその訳をあえて問うことはしなかった。佐知の元に全く見覚えのない差出人の手紙が送られてきたのはそんな時だった。


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