涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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トライアングルLOVE

揺れ惑う心8

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雅和の入院生活を斉藤から聞き知る秀行だったが佐知の前では余計なことはいっさい口にしなかった。

仕事を終え乗り込んだエレベーターに秀行の姿があった。突然手を握られ佐知は一緒にエレベーターを降りて部屋に戻った。

「話がある 都合が悪いなら別の日でもいいけど」

「いえ、大丈夫です」

二人は向き合ってソファーに座った 

「お話ってなんですか」

「井川君ことで話しておかなければならないことがあるんだ」

いつも口にする井川さんが今日は井川君に変わっていることに佐知は違和感を感じた。

「秀行先生は彼が順調に回復していると・・彼になにか」

「いや井川君は元気だ心配いらないよ 佐知さんには黙っていたけれど井川君は叔父の病院に一時転院してもらい手術を受けたんだ」

「手術・・」

「頭の血腫を取る手術だけど成功したからもう安心だよ いま井川君は頑張ってリハビリに励んでいるそうだ」

「秀行さんのおじ様は脳外科分野では知れ渡る有名な先生です その先生が手術をしてくれたなんて井川君は幸運だわ 秀行さんありがとう」

「これも何かの縁、叔父に手術を依頼するのは医師として当然のことだから礼はいいよ」

「でも秀行さんのおじ様の手術を受けるのは宝くじを当てるくらい大変で受けたくても受けられない患者さんがたくさん待機しているって院長先生から聞いたことがあります 井川君が手術を受けられたのは秀行さんのおかげ、感謝します」

「感謝なんて他人行儀はやめようよ 僕にできることがあればこれからも協力するから遠慮しないで」


「ありがたいわ 秀行さんの力添いがあれば百万馬力だもの」

「百万馬力?古いアニメソングにそんな言葉があった様な気がするな」

「鉄腕アトムよ あぁまた若いのにおばさん臭いって思ったでしょう」

「そんなこと思わないよ」

「絶対思った 秀行さん鼻で笑っていたもの」

「僕は笑ったりしていない、ただ君はいつも面白いなって思っただけ、佐知さん話をもとに戻すけど井川君はうまくいけば来月中には退院の目途がたつかもしれない」

「本当ですか わたし退院前にお見舞いに行きたいな」

「じゃ予定を立てて会いに行こうか」

「又連れて行ってくれるのね 嬉しい」


雅和を見舞う日程も決まり楽しみにしていた矢先、秀行が執刀した患者の容態急変の知らせが入った。秀行は連日連夜の泊まり込みで治療にあたっていた。

「佐知さん君を一人で行かせるのは心配だけど、ひとりで大丈夫」

「はい一人で行ってきます 秀行さんこそずっと病院に泊まり込みで大丈夫ですか」

「24時間救急の仕事もしてきたから僕は平気だよ 佐知さんから井川君によろしく伝えて」

「わかりました」


秀行の心配もよそに佐知は雅和に寄り添い支えてあげたいとひとり舞い上がっていた。 


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