涙が幸せの泉にかわるまで

トライアングルLOVE

揺れ惑う心4

週明け朝早くから秀行は眉間にしわを寄せながら医学書を見ていた。

「おはようございます　先生今日はずいぶん早いですね」

「おはよう佐知さん」

「何だかとてもお疲れみたいですね　久しぶりにお友達と会って飲みすぎましたか」

「たしかに久しぶりの旧交は有意義で楽しかった」

「それにしては晴れない顔をしていますけど・・」

「僕のことより佐知さんは何をしていたのか聞きたいな」

「秀行さんに振られた佐知さんは寂しく一人本を読み漁ってましたよ～」

「・・・・・」

「聞いています？やっぱり今日の秀行先生は変です」

「ごめん、朝早く救急で運ばれてきた患者のこと思い出してしまって」

「秀行さんはやっぱり院長赤ひげ先生の血を引いているのね　患者さんの命を尊び寄り添い治療に邁進する姿は医者の鏡そんな秀行先生わたしは大好きです」

「佐知さんはいつも僕を過大評価しすぎるよ」

「本当にそうなんだもの　わたし先生を昔から尊敬しているんですから」

「もういいよ、なんだか照れくさくて体中がかゆくなってきた　週の始まりだ　さぁ気合を入れていくぞ」

「はい、では今日のスケジュール確認を」

秀行は雅和に会いに行ったことを佐知には言えずじまいだった。折に触れ斉藤から知らされる雅和の良好な経過だけは佐知の耳に入れていた。雅和の数ヵ所の骨折は徐々に回復に向っていたが斉藤からの電話で記憶傷害の事態は良くない変化を見せていた。