223 / 290
悲しみの連鎖
大切なものが37
しおりを挟む
病院についた秀行は佐知の手を取りICUに向った。秀行は出てきた看護士を呼び止めた。
「すみません、昨日事故で運ばれた井川さんという患者は中にいますか」
「あなた方は?」
「僕たちは友人です」
「ご家族以外はご遠慮ください」
「わかりました お引止めしてすみませんでした」
柔らかな女性の声がして二人は後ろを振り返った。
「あなたたちも雅和ぼっちゃんのお知り合いでいらっしゃいますか」
すらりとした華奢な女性が立っていた。
「驚かせてごめんなさい わたくし泉といいます」
「泉さんって井川君の事務所にお勤めの・・あっ申遅れました。私は皆井です。こちらは西條さんです」
「手塚さんが連絡していた皆井さんってあなたでしたの 突然の電話本当にごめんなさいね」
「いいえ連絡いただいてよかったと思っています」
「ついさっきまで友人だといって大勢みえてたのですがこんな状況ですからみなさんすぐに帰られました」
「その友人の中に伊納さんという人はいませんでしたか」
「代表で私に挨拶してくれたのが確か伊納さんていう方でした」
「彼は誰から井川君の入院を聞いたのでしょうか」
「病院に駆けつけた事務所の者が偶然鳴った雅和さんの携帯電話に出て・・その伊納さんからあなたの連絡先を聞いて貴方にご連絡したそうですよ」
「伊納さんは奥さんと一緒でしたか」
「男の方ばかりでしたけど、そういえば伊納さんの奥様はつわりがひどくて来られなかったとか誰かが話しておられました」
「伊納さんの奥さんと私は友人で彼女も井川君の友人なんです」
「そうでしたか こうして皆さんに心配していただいて有難うございます 雅和さんは素敵なご友人様が沢山いらして幸せ者ですね」
「わたし井川君から泉さんの事は聞いていました 泉さんは俺の家族なんだっていつも言っていました 泉さん井川君を宜しくお願いします」
「元の生活に必ず戻れるってお医者様が言ってくださいました 話せるようになったらまたご連絡差し上げますから申し訳ございませんが今日のところは」
「わかりました 私たちはこれで失礼します これから自宅に伺って明日香ちゃんに手を合わせたいのですがよろしいでしょうか」
「ぜひ会ってあげてください 明日香ちゃんは安らかな顔でまるで眠っているかのようです 今も目を覚まして起きてくるものと明日香ちゃんの死を誰も認めようとしないのです・・・生きている時と同じ可愛い顔で眠っている明日香ちゃんに最後の別れを私からもお願いします」
泉から渡された住所のメモを手に二人は雅和の自宅へと向かっていた。運転中の秀行は繋いだ佐知の手を離そうとしなかった。佐知もその手を強く握り返していた。
「悲しいのに胸が張り裂けるくらい悲しいのに・・涙が出ない」
「ショックが大きすぎて君の悲しみは凍り付いてしまったんだね」
二人の重苦しい息づかいが静まり返った車中を駆け巡っていた。
雅和の事務所兼自宅に着いた二人を手塚は丁重に出迎えてくれた。
「昨日お電話いただいた皆井です
この度は・・」
「あなたが皆井さんですか さぁどうぞ中へ」
リビングと繋がる奥の和室にミニーちゃんの布団が見えた。その布団の上で明日香は眠っていた。
「すみません、昨日事故で運ばれた井川さんという患者は中にいますか」
「あなた方は?」
「僕たちは友人です」
「ご家族以外はご遠慮ください」
「わかりました お引止めしてすみませんでした」
柔らかな女性の声がして二人は後ろを振り返った。
「あなたたちも雅和ぼっちゃんのお知り合いでいらっしゃいますか」
すらりとした華奢な女性が立っていた。
「驚かせてごめんなさい わたくし泉といいます」
「泉さんって井川君の事務所にお勤めの・・あっ申遅れました。私は皆井です。こちらは西條さんです」
「手塚さんが連絡していた皆井さんってあなたでしたの 突然の電話本当にごめんなさいね」
「いいえ連絡いただいてよかったと思っています」
「ついさっきまで友人だといって大勢みえてたのですがこんな状況ですからみなさんすぐに帰られました」
「その友人の中に伊納さんという人はいませんでしたか」
「代表で私に挨拶してくれたのが確か伊納さんていう方でした」
「彼は誰から井川君の入院を聞いたのでしょうか」
「病院に駆けつけた事務所の者が偶然鳴った雅和さんの携帯電話に出て・・その伊納さんからあなたの連絡先を聞いて貴方にご連絡したそうですよ」
「伊納さんは奥さんと一緒でしたか」
「男の方ばかりでしたけど、そういえば伊納さんの奥様はつわりがひどくて来られなかったとか誰かが話しておられました」
「伊納さんの奥さんと私は友人で彼女も井川君の友人なんです」
「そうでしたか こうして皆さんに心配していただいて有難うございます 雅和さんは素敵なご友人様が沢山いらして幸せ者ですね」
「わたし井川君から泉さんの事は聞いていました 泉さんは俺の家族なんだっていつも言っていました 泉さん井川君を宜しくお願いします」
「元の生活に必ず戻れるってお医者様が言ってくださいました 話せるようになったらまたご連絡差し上げますから申し訳ございませんが今日のところは」
「わかりました 私たちはこれで失礼します これから自宅に伺って明日香ちゃんに手を合わせたいのですがよろしいでしょうか」
「ぜひ会ってあげてください 明日香ちゃんは安らかな顔でまるで眠っているかのようです 今も目を覚まして起きてくるものと明日香ちゃんの死を誰も認めようとしないのです・・・生きている時と同じ可愛い顔で眠っている明日香ちゃんに最後の別れを私からもお願いします」
泉から渡された住所のメモを手に二人は雅和の自宅へと向かっていた。運転中の秀行は繋いだ佐知の手を離そうとしなかった。佐知もその手を強く握り返していた。
「悲しいのに胸が張り裂けるくらい悲しいのに・・涙が出ない」
「ショックが大きすぎて君の悲しみは凍り付いてしまったんだね」
二人の重苦しい息づかいが静まり返った車中を駆け巡っていた。
雅和の事務所兼自宅に着いた二人を手塚は丁重に出迎えてくれた。
「昨日お電話いただいた皆井です
この度は・・」
「あなたが皆井さんですか さぁどうぞ中へ」
リビングと繋がる奥の和室にミニーちゃんの布団が見えた。その布団の上で明日香は眠っていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる