涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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悲しみの連鎖

大切なものが31

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昨晩の佐知は不思議な夢で幾度も目を覚ましていた。

眠い目を擦りながら出勤した佐知はすぐ後ろに秀行がいることなど知らず、独り言をごちながら歩いていた。

昨日の今日・・どんな顔で秀行さんと会えばいいの

つぶやいた佐知の肩ごしに秀行の手が伸びてきた。

「おはよう、佐知さん」

「お、おはようございます」

「佐知さんのチャームポイントは笑顔だから眉間のしわは似合わないよ 今日も仕事が山積みだ、さぁ急ごう」

「はい」

先を急ぐ後姿は昨日とは違っていた。二人の距離はさらに縮まって見えた。

昼休み着信履歴を見ると同じ電話番号が数十件入っていた。

「なんなの、何でこんなに、間違い電話?」

携帯電話を閉じようとしたそのとき着信音が鳴った。履歴と同じ番号だった。佐知は恐る恐る電話にでた。

「・・もしもし」

「皆井さん、皆井佐知さんですね」

「はい」

「良かった、やっと繋がった」

「失礼ですがどちら様でしょうか」

「あっ申し遅れました 私は井川パートナーズの手塚といいます」

井川パートナーズは雅和の会社、会社の人がなぜ 佐知はいやな胸騒ぎがした。

「雅和の履歴にあった番号はあなただったのですね 突然の電話は失礼かと思いましたが雅和がうわごとで貴方の名を呼んでいました あなたの事は聞いて知っていましたからそれで電話を」

「井川君どうかしたのですか」

「雅和は病院に運ばれて入院しています」

「昨日会ったばかりで入院なんて嘘でしょ 信じられない・・なにがあったのですか」

「自宅がもう少しのところで交通事故でした」

「事故・・」

「雅和は疲れが溜まっていました 明日香ちゃんに会うための週末移動と明日香ちゃんを引き取る準備にここ最近神経をすり減らしていたのも事実です一日のんびり体を休めて翌日もどって来いとあれ程きつく言ったのに・・・あいつは俺の言うことも聞かず仕事の事ばかり気にしてこのありさま悔しい限りです」

「井川君と明日香ちゃんの容態は」

「・・・・」

言葉を詰まらせた手塚は暫く無言のままだった。佐知は楽観視できない状況を察した。

「もしもし聞こえますか 手塚さんいま二人の容態は・・もしもし聞こえていますか」


 後書き
佐知と秀行のこれからが始まろうとしていた矢先、人生大きく変える事態が雅和に襲いかかり佐知の人生も大いに変わっていく。命の尊さをだれより味わって来た雅和に更なる試練が与えられ・・・いつになれば幸せは訪れてくれるのか 苦悩しながら生きている佐知雅和そしてその二人を取り巻く者たちそれぞれが願う幸せはまだその片鱗さえ見せてはくれなかった。


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