涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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悲しみの連鎖

大切なものが29

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佐知は思わず笑ってしまった。

「佐知さんここは笑うとこじゃないと思うんだけど」

「ごめんなさい、でもおかしくて」

「まだ笑ってる、僕そんなにおかしいこと言ったかな」

「気になる人がいるって秀行さんが言ったとき私は応援しようと思ったのに舌も乾かない内に女心をくすぐるような言葉を私に言うんだもの紳士にみえる秀行さんも結構やり手の浮気者、世の中の男性と同じなんだと思ったらおかしくて」

「僕はいつだって真剣な気持ちで佐知さんと向き合っている 誤解は解いておきたいから言うけど僕はその場限りの嘘や戯れごとを口にする男じゃないよ」

「私は女心をくすぐる言葉には必ず裏があると疑ってしまうけど秀行さんにそんな言葉をかけられた女性はみんな誤解してしまうでしょうね 何気に言った言葉が女性の女心をかきたてたとしたらそれは罪作りだわ 恋人でもなんでもない私に君を守るとか寂しい思いをさせないなんてやっぱりおかしいわ その言葉は秀行さんが気になっている人だけに言うべきだわ 相手の人は喜んで秀行さんの思いを受けてくれますよ」

「佐知さん、君も喜んでくれる」

「秀行さんとその人が上手くいったら私も嬉しいです 秀行さんに告白されて喜ぶ人はいても喜ばない人なんて居ませんから自信を持って告白してきて下さい」

「僕は佐知さんの笑顔が好きだ 君の笑顔を独り占めできたらどんなに幸せだろうといつも思う 愛に臆病になっていた僕を変えたのは佐知さん君なんだ」

「また話が逸れた どうしてそこにもどるのかなぁ そういう事は気になる人に使う言葉ですって何度も言ってるのに、もしかして秀行さん本当は私のことが好き?大好きなんでしょう」

「だったら佐知さんは迷惑」

「迷惑とかじゃなく話が見えないというか流れが逸れて変な方向にいってませんか 気になる人がいる秀行さんがなぜ私に誤解されるような言葉をいうのか・・」

「佐知さんは天然なのかな、恋に鈍感みたいだからはっきり言わせてもらうね 僕が気になってしかたない人は目の前にいる佐知さん、君だ、僕は君の事が気になって仕方ない好きなんだ」

「・・・・・」

「君の気持ちを十分わかった上で言わせてもらった、だから君は何も言わなくていい気まずくなることだけは避けたいから」

「ごめんなさい 想定外のシチュエーションだから、とても動揺して・・」

「動揺したって事は少し希望がもてそうだね 即断即決で断られたら病院で合わす顔がないと内心肝を冷やしていたんだ」

「肝を冷やすのは私の方です こんな事が病院中に知れ渡ったら今度こそ私本当に大変なことに・・」

「僕が守るから大丈夫」

「また守るって言った オウム返しのように同じこと何度も言ってる」

「僕は嘘がつけない男だってさっきも言っただろう 口にした言葉には当然責任が生じる僕の言葉が薄れるなんてことない、だから何度でも言う僕は命を懸けても佐知さん、君を守る」


秀行の言葉が佐知の胸に響いた。それは雅和が遠いあの日言ってくれた言葉と同じだった。照る顔を横切る夜風が心地よかった。その風に乗って「君を守る強い男になれるといいな」と言った雅和の声が聞こえたような気がした。一筋の涙が佐知の頬に流れ落ちていた 秀行は頬を伝う佐知の涙を指でそっと拭った。


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