涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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悲しみの連鎖

大切なものが26

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秀行に車を止めてもらい佐知は高台からの夜景を見つめていた。

「ここは初めて来たけど静かで落ちつくね」

「秀行さんに今夜のファミレスはやっぱり似合いませんでしたね」

「佐知さんは僕を買いかぶってるよ 僕は普通に牛丼も立ち食い蕎麦も食べるし」

「・・・・・」

「今日の佐知さんはいつもと様子が違う 食事中もぼんやりしていたけど、原因はもしかして今日の彼」

「彼は大切な友人で何でも包み隠さず話せる人 隠し事をしない約束の彼が今日突然静岡に帰ってしまって、でもそれは彼が悪いんじゃない私のせい、私が悪いからなの」

「二人の事はよくわからないけど彼のことが頭から離れないようだね だから今日はあえてファミレスの賑やかな場所に身を置いて彼を忘れたかった、そうじゃないのかな」

「秀行さん今日は私の我が儘につき合わせてごめんなさい」

「今夜の佐知さんは彼の事でいっぱいで僕の話も上の空だったみたいだったね 今日の佐知さんを見ていると彼は友人というより僕には恋人のように思える」

「誤解しないで、彼は本当に友人よ 彼には明日香ちゃんという子供がいるの、奥さんも不思議な縁で結ばれた私の大切な友人」

「いろんな事情が見え隠れして複雑そうだなあ」

「・・・・」

「無理することないよ 気持ちに逆らおうとするから苦しくなる、思えば僕がそうだったから・・今も進行形なんだけどね」

「秀行さんにも苦しい思い出が?」

「僕は学生時代の恋愛を今も引きずっている 愛する人に裏切られ最も信頼していた友人に彼女を奪われ、それからの僕は人を愛することも信じることも出来なくなってしまった」

「今も彼女を忘れられない・・のですね」

「忘れてしまいたいのに忘れられないでいる自分が情けないよ 昔の事はすべて流してもういい加減終わりにしたいのに・・誰かに吐き出したらすっきりするのかな」

「わたしに・・私でよかったら話して下さい」

「僕の話は人を不快にさせる、そんな話を聞いてもらう訳にはいかないよ」

「心に同じ傷手を負った者同士なら分かち合えます 秀行さんが言うように誰かに話したら少しは楽になると思います」

「うーん・・楽になりたいな、いい加減そろそろ心にけりを付けようか これから話すことは僕の独り言だと思って聞いてくれると有難いな 佐知さん僕は今も未練、嫉妬、憎しみが渦巻く感情から立ち直れないでいるんだ 僕と彼女は」


秀行は重い口を開き苦い過去の愛を話し始めた。



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