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悲しみの連鎖

大切なものが22

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「ママが助言してくれた佐知とのことはいつかしっかり自分と向き合える時が来たら考えます ママいままでありがとうございました ここで受けたご恩を忘れず明日香と生きてゆきます 明日香を育てていただいて本当にありがとうございました」

「もうすぐお別れなのね、淋しくなるわ つらい別れだけど生きてさえいればまたいつか会える、もう会えないわけじゃないもの笑ってお別れしましょう」

「また必ず会いにきます 明日香をつれて帰ってきます 成長した明日香を見せにきます約束します」

「ありがとう井川君、あらたな門出に涙はご法度だから最後のお別れの日は飛びっきりの笑顔でおくるわね」

「ママ本当にお世話になりました」


遠くの親戚より近くの他人その言葉通りここは雅和にとって心の故郷になっていた 込みあがる熱いものが雅和の体を駆け巡っていた。微笑む田鶴子の姿が今は亡き母と重なってみえていた


以前と違い何度かけても繋がらない佐知の携帯に今夜も雅和はやきもきしていた。

「はい、もしもし」

「つながってくれてよかった この間話せなかったことを伝えたくて今大丈夫かな」

「大丈夫だけど明日お弁当作ってママのマンションに行こうと思っていたのよ そのほうが雅和とゆっくり話が出来るでしょ」

「明日じゃなく今電話で話しておきたかったから・・おれ今月中に明日香を引き取ることにしたよ」

「もう決定・・なの」

「うん、保育園も決まったし明日香の世話をしてくれる人も確保したから」

「お手伝いさんに来てもらうの」

「いや事務所の泉さんが住み込みで見てくれることになったんだ」

「泉さんが」

「泉さんは若くして旦那さんと死別してずっと一人なんだ 旦那さんがいなくなり食べていくため親父の事務所で働きずっと今日まで頑張ってくれた それに加え泉さんは母さんにとっても大切な友人だったから生前母さんは泉さんのことを家族の一人だと言っていた うまくいかない家庭や夫婦の事を母さんは泉さんにだけは話していたのかもしれないな おれ母さんから言われた言葉を思い出したんだ 万が一、明日香のことで困るようなことがあったら相談しなさい私だと思って泉さんの力を借りなさいって、それで泉さんに事情を話したらは半ば強引な俺からの頼みを快く受けてくれて私のようなものに頭を下げてくださってありがとうございます 先代から仕えたここでお役に立てるならこんな嬉しい事はありません そう言って泉さんは俺の手を握ってくれた 再婚もせず一人で生きてきた泉さんはもう若くはない 姉妹のように仲の良かった母さんがいなくなって寂しさも身に沁みていたんだろうな 年内に退職して泣く泣く田舎に帰るとてっちゃんから聞かされていたから俺と明日香のお世話をしてもらえたら泉さんはこのまま残れるし泉さんとなら家族のように暮らしていけると思ったんだ それを一番喜んでいるのは母さんだと思うんだ 一人で生きてきた泉さんを誰よりも心配していたのは母さんだったから」

「そうだったの、これまで孤独だった泉さんにも明日香ちゃんと一緒に幸せになって欲しいな」

「俺も同じ、みんな幸せになれるといいな」

「今回のことママは何も言わず了解してくれたの」



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