涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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悲しみの連鎖

大切なものが16

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「もしもこの先、もしものことなんだけど笑わないで聞いてね 好きな人ができたらお互い隠しっこは無しにしましょうね」

「それはいいけど、佐知それ本心で言ってるのか 本当に大丈夫なのか疑問だな もし俺が新しい恋人が出来たって打ち明けても今日みたいに泣かないでくれよな」

「う、う~ん、やっぱり撤回させて しばらくはお互いこのまま一人でいましょう約束ね」

「げんきんなやつだな~まったく」

「なんだか急におなか空いちゃった お弁当食べてから帰ってもいい」

「あぁ一緒に食べよう 遅いから帰りは車で送るよ」

「だめよ、雅和さっきビール飲んだでしょ、今日はタクシーで帰るから心配しないで 早くママの作ったお弁当たべましょう、いただきま~す」

「佐知いま俺のこと昔のように雅和って呼んでくれたね これからは井川君なんて言わないで雅和でいいよ」

「本当にいいの よかった~ 言い慣れた雅和の方が断然呼びやすいんだもの雅和、雅和、まさかず これからは昔みたいに雅和って呼んでもいいのね 嬉しい」

「俺の名前意味なく何度も連呼するなよ」

「あぁ雅和赤くなってる~ ほら早く食べないと全部わたしが食べちゃいますよ」

「さっき泣いてた同じ人とは思えないな 女ってほんと扱い図らいな」

「雅和にとって美香さんは他の女子とは違っていたのよね だから一生忘れない最愛の人なのね 私もいつか美香さんみたいな素敵な大人女子になれるかな」

「ハイハイもうわかったから早く食べよう」


二人で過ごす短い時間だったが佐知には恋人と過ごす楽しい夕べのように思えた。

「久しぶりにゆっくり話が出来てうれしかったわ ありがとう」

「遅いから一緒にタクシーを拾うよ」

「ひとりで大丈夫だから明日香ちゃんのそばにいてあげて」

「これ今日のお礼だと思ってタクシー代の足しにしてくれ」

「だめよお金は受け取れない、ぜったい駄目いらないわ」

「まったく強情なやつだな、受けとらないならもう明日香に会わせてやらないぞ」

「人の弱みにつけこむなんて卑怯よ」

「いいからさぁ早く受けとってくれ」

「わかったわ ありがたく頂戴して帰ります」


泣いたり笑ったり悲喜こもごもの一日だった。苦しい未練の思いは涙と一緒にわずかだが流れていた。


雅和は愛で繋がっていると言ってくれた 又始めればいい、そう此処から今日から始めよう まだ完全に吹っ切れた訳じゃないけどまだまだ雅和への思いをたち切れないでいるけれど昔の私じゃない新たな私で雅和と向き合って行こう


胸にしまい込んでいた雅和と過ごした愛の日々を少しずつ消そうと思えるようになった佐知は何かが変わるような気がしていた。タクシーに乗り込んだ車窓の眩いばかりの夜景は新たな未知の別世界への誘いのような気がした。

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