涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

文字の大きさ
上 下
196 / 316
悲しみの連鎖

大切なものが10

しおりを挟む
「みんな顔並べてどうしたの」

「どうしたのはないだろ、いつもなら開いてるのに閉まったままだからさ休みかと思ったよ」

「ごめんなさい 今日は明日香に手を焼いてしまって、待たせて本当にごめんなさいね」

「八百正の袋を提げているって事は、また長話してたんだろうママ」

「よまれましたか、すみません」


店は改装されてキッチンの後に明日香の部屋ができていた。食品の倉庫室とロッカーをはらい和室を新たに作ったのだ。明日香は一日の大半をこの部屋で過ごした。

「ママ、俺は孫の世話で子供の扱いは慣れてるから見ててやるよ」

「それじゃお言葉に甘えて菅(かん)ちゃんにお願いしようかな」

愚図る明日香を酒屋を営む常連の管さんに預け田鶴子は急いで仕込みをはじめた。菅さんの腕の中で明日香はいつのまにか寝息を立てていた。

「管ちゃんありがとう、助かったわ」


和室に敷いたキティちゃんの布団に明日香を寝かせカウンターに戻ると電話が鳴った。


「ママ、井川です 今夜行きますのでよろしくお願いします 明日香は?」

「今寝たところ、今日はご機嫌斜めで大変だったの パパの顔見てご機嫌が直るといいんだけど」

「ママには感謝しています 週末は俺が明日香を見てますから少しでも体を休めてください」

「心配しないで、でも正直言って子育てがこんなに大変だとは、一人で明日香ちゃんの世話をしていた井川君を見直したわ 週末に疲れた体をおして会いに来るのも重労働よね、体がつらい時は無理して来なくてもいいのよ」

「大丈夫です、無理はしていませんから」

「そういえば佐知さんが夕方お店に来るって言っていたけど約束してるの」


「なら俺が行くまで待っててもらうよう伝えてくれますか」

「明日香ちゃんがいることだしお店よりマンションの方が落ち着いて話せるわ 佐知さんには明日香ちゃんを連れて私のマンションで待ってもらうように伝えておくけどいいかしら」

「はい、宜しくお願いします」


店の和室に田鶴子用の布団も置かれてあった。田鶴子は明日香の匂いが残るこの部屋で週末を過ごしていた。雅和と明日香のために週末は自宅マンションを明け渡した。田鶴子は雅和と明日香、父娘二人の時間に割りいる気持ちを押し止めていた。


苦労し手塩をかけ愛を注ぎ育てるからこそ親子の絆が生まれその愛に包まれ育った感謝を忘れないから家族の絆が結ばれるのでしょうね 頑張って井川くん


離れて暮らす雅和と明日香ふたりに親子の絆を少しずつ紡いでいってほしいと田鶴子は心から願っていた。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

かあさんのつぶやき

春秋花壇
現代文学
あんなに美しかった母さんが年を取っていく。要介護一歩手前。そんなかあさんを息子は時にお世話し、時に距離を取る。ヤマアラシのジレンマを意識しながら。

処理中です...