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悲しみの連鎖
大切なものが9
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商店街にシャッターの開く音がしだすと威勢のいい声が響き始めた。明日香を胸にくくり歩く田鶴子に八百正のおかみが声をかけた。
「ママ、今日は遅いんじゃない」
「出かけに泣きだしちゃって大変だったのよ」
「ほんとだ 明日香ちゃん今日はご機嫌斜めのようだね」
「朝からぐずって泣かれるとこっちまで泣きたくなってしまうわ」
「子育て中は私もそうだったよ、泣くことしか出来ない子供に親も泣きながら成長させてもらったって感じ、いま思えば子育ては充実したいい時間だったわねえ」
「そう思える日が私にもくるのかしら」
「親にかわり世話をしているママは大したもんよ、もっと自分に自信を持ちな、いつものグレープフルーツとバナナもっていくかい」
「今日はグレープフルーツだけ頂いていくわ」
今度は向かい側にある魚勝のおかみが飛び出してきた。
「ママどうしたんだい、目の下に大きなクマ作って せっかくの美人が台無しだね」
「朝からずっと愚図ってこの調子よ もうお手上げ」
「ママあんたはよくやってるよ 店を切り盛りしながらの世話は大変だろう無理しちゃいけないよ、若くないんだから無理は禁物、健康が一番なんだからさ」
「明日香ちゃんを引き受けたものの、私はずっと一人者だったでしょ 母以外の誰かと生活したことないから正直不安だったのよ 子育ての疲れは半端ないけど私いまの生活これでも結構楽しんでいるの 今日はクマがあるけどねえわたし若返ったと思わない?」
魚勝のおやじさんが話しに割り込んできた。
「どれどれ・・う~ん、なんも変わっちゃいないけどなぁ~」
「魚勝さんは正直で嘘がつけない、そこがいい所なんだけどもう少し口が上手いと商売もうなぎ上りなのに残念、
おしいわね」
「ママもそう思うでしょ、ほんとにうちの亭主は馬鹿が着くほどの正直者で困っちゃう もう少し要領よくやってくれないかねぇ、ちょっとあんた聞いてるの」
「あれ、親父さんどこかに逃げちゃったみたいよ」
「うちの人はあの通り呑気で、てんで話にならないの 不景気で売り上げは下がる一方なのに何考えているんだか困っちゃうよ全く」
「安くしても今は買い控えする人が多いからどこも大変よね、仕事帰りにまた夫婦でお店に顔だしてちょうだい 魚勝のおやじさ~ん、珈琲の無料券置いていくからね~」
「ママいつもわるいね」
「あんたどこに雲隠れしていたのよ こんな時だけ調子がよくてほんと情けないね、商売で少しは男気を見せなさいよ」
「ママの前でそんなに俺をいじめるなよ、俺の男気はいざというとき、お前のために取ってあるんだからさ」
「あんたは私の前だとうまく舌が転がるんだねぇ お客の前でもこうだといいのに、ねぇママ」
女房の尻に敷かれた魚勝の親父さんはそれを楽しんでいるかのようだった。実のところ親父さんが女房をうまく操縦しているおしどり夫婦の二人は漫才コンビのようでママはいつも目を細め笑っていた。
「おやじさん今日はカジキいただこうかな」
「あいよ、ランチに間に合うように届けてやるよ この前の珈琲券のお礼にマグロのいいのが入ったからそれも持ってってやるよ」
「いつもすみません、ありがたく頂戴いたします じゃカジキお願いしますね」
急いで歩くママの目に開店前の店先で談笑している常連客の姿が見えた。
「ママ、今日は遅いんじゃない」
「出かけに泣きだしちゃって大変だったのよ」
「ほんとだ 明日香ちゃん今日はご機嫌斜めのようだね」
「朝からぐずって泣かれるとこっちまで泣きたくなってしまうわ」
「子育て中は私もそうだったよ、泣くことしか出来ない子供に親も泣きながら成長させてもらったって感じ、いま思えば子育ては充実したいい時間だったわねえ」
「そう思える日が私にもくるのかしら」
「親にかわり世話をしているママは大したもんよ、もっと自分に自信を持ちな、いつものグレープフルーツとバナナもっていくかい」
「今日はグレープフルーツだけ頂いていくわ」
今度は向かい側にある魚勝のおかみが飛び出してきた。
「ママどうしたんだい、目の下に大きなクマ作って せっかくの美人が台無しだね」
「朝からずっと愚図ってこの調子よ もうお手上げ」
「ママあんたはよくやってるよ 店を切り盛りしながらの世話は大変だろう無理しちゃいけないよ、若くないんだから無理は禁物、健康が一番なんだからさ」
「明日香ちゃんを引き受けたものの、私はずっと一人者だったでしょ 母以外の誰かと生活したことないから正直不安だったのよ 子育ての疲れは半端ないけど私いまの生活これでも結構楽しんでいるの 今日はクマがあるけどねえわたし若返ったと思わない?」
魚勝のおやじさんが話しに割り込んできた。
「どれどれ・・う~ん、なんも変わっちゃいないけどなぁ~」
「魚勝さんは正直で嘘がつけない、そこがいい所なんだけどもう少し口が上手いと商売もうなぎ上りなのに残念、
おしいわね」
「ママもそう思うでしょ、ほんとにうちの亭主は馬鹿が着くほどの正直者で困っちゃう もう少し要領よくやってくれないかねぇ、ちょっとあんた聞いてるの」
「あれ、親父さんどこかに逃げちゃったみたいよ」
「うちの人はあの通り呑気で、てんで話にならないの 不景気で売り上げは下がる一方なのに何考えているんだか困っちゃうよ全く」
「安くしても今は買い控えする人が多いからどこも大変よね、仕事帰りにまた夫婦でお店に顔だしてちょうだい 魚勝のおやじさ~ん、珈琲の無料券置いていくからね~」
「ママいつもわるいね」
「あんたどこに雲隠れしていたのよ こんな時だけ調子がよくてほんと情けないね、商売で少しは男気を見せなさいよ」
「ママの前でそんなに俺をいじめるなよ、俺の男気はいざというとき、お前のために取ってあるんだからさ」
「あんたは私の前だとうまく舌が転がるんだねぇ お客の前でもこうだといいのに、ねぇママ」
女房の尻に敷かれた魚勝の親父さんはそれを楽しんでいるかのようだった。実のところ親父さんが女房をうまく操縦しているおしどり夫婦の二人は漫才コンビのようでママはいつも目を細め笑っていた。
「おやじさん今日はカジキいただこうかな」
「あいよ、ランチに間に合うように届けてやるよ この前の珈琲券のお礼にマグロのいいのが入ったからそれも持ってってやるよ」
「いつもすみません、ありがたく頂戴いたします じゃカジキお願いしますね」
急いで歩くママの目に開店前の店先で談笑している常連客の姿が見えた。
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