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悲しみの連鎖

大切なものが2

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週が変わり数日たっても雅和からの返答はなかった。業を煮やし田鶴子は受話器を手にした。

「遅くにごめんなさい明日香ちゃんは寝たかしら、今すこし話せる?」

「あっ、はい」

「井川君あなたはよくやっているわ でも限界にきているんじゃないのかな会社の人や仕事に支障が及ぶことにあなたはいま頭を抱えているのでしょ ねぇ考えてみて美香さんは仕事と子育てに苦しんでいる今のあなたをどう思うかしら、喜んでいると思う、そう思っているのなら間違っているわ 仕事に励むあなたの姿が一番好きだと美香ちゃんが話してくれたわ お父さんの仕事を継いだあなたの希望に満ち仕事をする姿が好きだと・・男手ひとつで仕事をしながらの子育ては生半可じゃできないわよね、だから苦しくてたまらないのでしょう、せめて離乳時を過ぎるまで兄にかわり明日香ちゃんの世話をさせてもらえないかしら 兄が待ち望んでいた明日香ちゃんは私にとっても孫と同じなの 井川君お願い一緒に明日香ちゃんを育てさせて」


その日を境に雅和はまた静岡と名古屋の往復生活が始まった。生前の美香を思い出す週末の移動に雅和は今だ涙することもあった。薄れるどころかますます募る美香への慕情を断ち切れなかった。

ママに明日香を預け誰もいない家でひとり過ごす雅和の生活は耐え難いものだった。



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