涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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さようならの予感

君を忘れはしない13

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病室に入ると橘医師と看護士の後ろ姿が見えた。橘は懸命に美香の蘇生処置を施していた。

「ママ、これは・・」

「看護士さんが突然入ってきてナース室に繋がっているモニターの心音が止まったって・・」

「しっかりしろ 美香さん聞こえるか」


モニターの波動は動きをみせていた。しかし橘医師の口から出た言葉に雅和は絶句した。

「残念ですが明朝まで持ち堪えることは出来ないでしょう」


立ち去る橘に田鶴子は深々と頭を下げた。

「美香さん頑張るって俺と約束しただろう 忘れたとは言わせないぞ 静岡に帰って俺と君が望んでいた家庭をつくるんだ美香さん戻って来い 生きるんだ、俺のところに帰ってきてくれ お願いだ・・俺を置いて逝かないでくれ目を覚ましてくれ」

「辛いでしょうけどもう美香さんを苦しめないで安らかにお父さんのところに逝かせてあげて、井川君がしっかりしないと美香さんは安心して旅立てないわ 死を受け入れ送ってあげましょう」

「俺は・・そんな気持ちになれないよ美香さんの死を受け入れるなんて俺には無理だ」

「井川君みて、また涙が・・叶うならば生きていたいのね、そうよね美香ちゃん」

「ママ、俺は・・間違っているのか」

「美香さんにきちんとお別れしておあげなさい、ありがとうってこれまでの思いを伝えてあげて井川くん」


田鶴子は雅和の背中を優しく擦り病室を出ていった。雅和は美香の手をとり話しかけた。


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