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父の消息

素顔を見せて4

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ケアマンションロビーの一角に上京した雅和の姿があった。背筋を伸ばしソファーに腰をかけた須藤は今日も変わらずダンディだった。

「佐々木様が倒れたのは昨日の早朝でした 緊急ブザーが鳴り急いで部屋に駆けつけると佐々木様はベッドに伏して苦しんでおられました それで慌てて救急車を呼び主治医の大学病院に運んでもらった次第です」

「それでいま佐々木さんは」

「今朝お顔を見てきましたが看護士も落ちついているので心配ないと言ってくれました」

「ところで須藤さんは今回のことを誰かに話しましたか」

「はい、真っ先に親族の方にお伝えました」

 
「親族?美香さん以外身内はもう誰もいないと聞いていますが」

「佐々木様に親族がおいでになるのを知ったのはごく最近です いつだったか娘さんの使いの者と名乗る女性から再三の電話がありまして佐々木様はその方とお会いになりました その女性が帰られるとき佐々木様は珍しく車椅子でロビーに降りてこられその時に紹介されたのが沢村田鶴子さん、佐々木さまの妹さまでした 私が入院の連絡をさし上げたのはその人です」

「・・・・・」

「井川さんは佐々木様の入院を誰からお聞きになったのですか」

「昨日沢村田鶴子さんから電話をもらいました」

「やはりそうでしたか 佐々木様の妹さまなら叔母さんでもあるわけですからね お嬢さんの美香さんにも伝わると思いましたので」

「須藤さん、病院を教えてください」

美香さんのお父さんとSIGNPOSTのママが兄と妹・・ママは美香さんの伯母で美香さんはママの姪 二人は伯母と姪の関係・・

混乱した頭を掻き毟りながら雅和は美香の父のいる病院へ急いだ。

一足先に上京した田鶴子は眠る兄の傍らで回復を祈り続けていた。

トン、トン・・・トントン・・
田鶴子は力なくドアに歩み寄って行った。

「・・・井川君」

「ママ・・」

「・・・・・・」



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