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父の消息

眠れぬ夜13

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「今お兄様はおひとりと聞きましたが母が亡くなってから私もずっとひとりで生きてきました 母の介護とお店の切り盛りをしているうちに婚期も逃してしまって」

「君も随分苦労したようだね 困ったことがあったらこれからは私が助けるから遠慮しないで甘えてくれ」

「お兄様心配しないでください 母がマンションとお店を残してくれましたし目玉が飛出るような贅沢を望まなければ一人で食べてゆくには十分過ぎる生活をしていますから」

「そうか、それなら安心したよ 話が変わるが君が知っている美香の事を少し教えてもらえないか」

「お聞きになっていると思いますが美香さんは今も病気と戦っています」

「美香が病気だと?」

「お兄様は何も聞いてはいないのですか」

「訪ねてきた井川君からは美香の病気については何も聞かされてはいない 妊娠のことは聞いたがそれ以外は」

「美香さんは脳に腫瘍が見つかってその腫瘍のある場所が・・詳しい事はわかりませんがとにかく難しい病症みたいです」

「美香の脳に腫瘍・・」

「お兄様、これ美香さんが私に書いてくれた手紙なんですよ どうぞ手に取ってください」

「私が読んでも構わないのか」

「お兄様に読んでもらいたくて持ってきました、どうぞ手紙に目を通してください」

田鶴子ママは持ってきた手紙を美香の父(佐々木)の力の入らない震える手に握らせた。


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