涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

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父の消息

眠れぬ夜12

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「君は私の素性を調べたのか」

「あなたには妹がいたはずです 覚えていらっしゃいますか」

「あぁ確かに妹はいる いやいたと言ったほうが正しい」

「佐々木様のお母様はまだ幼い妹を連れて家を出ました あなたは妹と離れ離れになった、間違っていますか」

「君はいったい何者なんだ 何か魂胆でも・・」

「魂胆なんてなにもありません 私の話をもう少しだけ聞いてくださいお願いします 物心ついた私はずっと母と二人の生活でした 母は父と別れ私は父の記憶がないまま母子家庭で育ちました 私が中学生になったとき初めて年の離れた兄の存在を知りました それから母はどこで聞いてくるのか兄の近況を私にも語るようになりました
悟朗兄さんはお父様のもとで立派になられた 省庁にお勤めして結婚して家庭を持ったそうよ それはそれはとても嬉しそうに話していました」

「待ってくれ、君はまさか・・妹の田鶴子・・なのか」

「はい私が佐々木田鶴子です 現在は母の姓を名乗ってますので沢村田鶴子と申します」

「君が田鶴子・・母が家を出て行った時のことは今も覚えている 涙をためた母は最後の日、妹を・・君を僕のこの手に抱かせて言った 悟朗、お母さんと田鶴子ちゃんのこと忘れないで、お母さんも悟朗を忘れないからね
そう言い残して母は去った あの時の母に背負われていた妹が・・」

「間違いなかったのですね あなたが悟朗兄さんなのですね まさかお兄様の子供が美香さんだったなんて、私は美香さんと出会えてなかったらお兄様との切れた絆を結べぬまま人生を終えていたのですね」

「美香がまたひとつ私に贈り物を運んでくれた 再会など諦めていた妹の田鶴子、君に会わせてくれた」

陽射しが入り込む窓に目を移した美香の父(佐々木)はさかのぼる昔を懐かしんでいるかのようだった。



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