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父の消息

眠れぬ夜6

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「俺に分かることなら何でもお答えしますよ」

「実は美香さんの父親の事なんだけど今どこにいるのか知っていたら教えて欲しいの」

「美香さんのお父さんは奥さんを亡くしてから東京都内にある豪華なケアマンションに住んでいますよ」

「そう、お元気だったのね」

「美香さんの手紙にお父さんのことが書いてあったのですか それでなにか気がかりなことでも、俺でよかったら話してください」

「美香さんの父親と私の知り合いが同じ名前だったから聞きたくなった只それだけなの 遅くにありがとう、又お腹空いて我慢できないときは時間外でもお店にいらっしゃいね 夜分ごめんなさいお休みなさい」

もし美香さんの父親が私の兄ならば、私と母をまだ覚えているかしら 優しかったお兄さんに会いたい

ママ田鶴子の思いは美香が涙した父への思いと同じだった。眠れぬ夜、田鶴子は美香の手紙を何度も読み返し兄の面影を追っていた。


病院に向う雅和はSIGNPOSTに方向を変え歩いていた。深夜にかかってきたママからの電話が気になっていた。

「いらっしゃ・・あっ夜分に電話してごめんなさい 突然で驚いたでしょう迷惑かけたわね」

「俺は迷惑じゃなかったけどママが申し訳ないって思うなら今日は何かご馳走してもらおうかな」

「あっそうよね、いいわよお店の物ならお安い御用だわ 何でもどんどん注文して頂戴」

「いやだなママ、冗談だよ冗談 いつもの珈琲お願いします」

「本当に遠慮しないでいいのよ お腹は空いてないの メニューにあるものなら作ってあげられるから言って」

「今日はしっかり食べてきたからお気持ちだけ頂きます」

「じゃあこの珈琲は私からのお礼」

「お言葉に甘えてご馳走になります」

「そういえばまだお名前聞いてなかったわね」

「ママは沢村田鶴子さんでしたね 俺は井川雅和です」

「井川君でいいわね、井川君は美香さんのお父さんと面識は?」

「一度だけ、美香さんからお父さんを探してほしいと頼まれて。それで探し出して俺と佐知で会いに行きました」

「それで美香さんのお父さんってどんな印象だったのかしら」

「今日は質問攻めだなあ、ママは透視できるんだからなにも俺に聞かなくたって」

「井川君茶化さないで、質問に答えてくれたらその珈琲飲み放題にしてあげるわ」

「それはありがたいな」 

「商談成立、どんなことでもいいわ 美香さんのお父さんの事聞かせて」

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