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父の消息

伝言3

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「大丈夫ですか」

「あっ申し訳ないつい昔を・・・もう遠い昔のことだが愛した女性に愛想をつかされたあげく娘と引き離された私は抜け殻同然だった 生きることに意味をみいだせずこの長い年月を無意味にやり過ごしてしまったようだ 愛のない結婚に終止符も打てず愛する女性と交わした約束も果たせず、妻さえ幸せにしてやれなかった愚かな男それが私なのです」

部屋に女性の声が流れ聞こえた。

「佐々木様、珈琲をお持ちしました」

リビングの何処から声が聞こえるのかわからず佐知は辺りを見渡していた。

「いま鍵を開けましたから中へどうぞ」

佐々木は手に持った器械を操作して会話をしていた。女性が珈琲を置き会釈して帰ろうとしたときだった。

「まゆみ君、悪いが私のベッドルームの写真をここに」

「はい、今お持ちいたします」

置かれた写真立ては稀少価値のアンティークでイギリス製のものだった。大事そうにそれを手にした佐々木は目を細めた。

「この写真たては早苗に、早苗というのは美香の母親です 彼女に買って渡せなかった土産なんです 彼女は両親に先立たれ大層ショックを受けていました そんな彼女のために指輪と一緒に買い求めたのですが・・皮肉なもので渡そうとしたその日私は彼女に別れを告げられました 私はこの写真たてに命よりも大切にしてきた写真を飾っているのです」


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