涙が幸せの泉にかわるまで

不思議な三角関係

決心4

良くない検査結果は察しがついた　佐知は美香の気持ちがいかばかりかと気が滅入っていた。台所からお盆を持って出てきた母と鉢合わせした。

「病院の友達が来るなんて初めてね　いま二階に持って行こうと思っていたのよ」

「あっそれ私が持っていく　ありがとう」

渡されたクッキーと紅茶を持って部屋に戻った。美香は疲れた様子でうなだれていた。

「美香さん　疲れたでしょう　少しでもベッドに体を休めたほうがいいわ　いやじゃなければ私のベッド使ってください」

声もなく美香はベッドに体を横たえた

「体がつらいから寝たままでごめんなさい」

美香は思いつめた顔で話を始めた。

「わたしの母はね、妻子ある父と出会い私を産んだの　母の父・私の祖父は祖母を道ずれにして自ら命を絶った　祖父は母の不倫に心を痛め悩んでいたそれだけが心中の理由ではないけれどそれでも母は生涯その重い十字架を背負って生き続けたの　母は父と別れたあと女手ひとつで溢れる愛情を注いで私を育ててくれた　母は自分の幸せのすべてを注いでくれた　私には見せない苦労をいっぱいしてきた薄倖の母の人生にこれからは私が母を幸せにと思っていた矢先、母はこの世を去った　私は母と同じなの　愛する人の子をどうしても産みたくて私を生んでくれた母と同じなの　佐知さん、わたし妊娠しているの　橘先生はまだ誕生していない命より生きている命を優先しろと言うけど命に限りがあるのなら私は命を懸けても産みたいの　死ぬのは怖い本当はこわいのよ　でも子供の誕生を見たい　そしたら怖いけど・・悔いなく死んでゆける気がする」

「・・こんな大切な話は井川君に井川君に一番に話さなきゃいけないわ美香さん」