涙が幸せの泉にかわるまで

不思議な三角関係

決心1

雅和は事務所からの呼び出しでまた静岡に戻っていた。

「あら最近彼氏見かけないわね」

仕事がありますからずっと此処にいるわけには

「だから木内さん元気がないのかしら　今日は検査結果が出たことを知らせに来たの　あした橘先生から説明がありますよ」

明日わかるんですね

不安げな美香に看護士はいつも通り豪快に笑い真顔で答えた。

「ほらほらキレイな顔がへのへのもへじになっている、憶測や無駄な神経は体に障るわよ　気持ちは分かるけど今夜は何か楽しいこと考えましょう　そうね今夜は木内さんの一番大切な彼を思い出すといいわ　そしてぐっすり休んで頂戴ね　おやすみなさい」

膝を抱えた美香はＳＩＧＮＰＯＳＴのママを思い出し不吉な思いに駆られ震えだしていた。

怖い、雅和、わたし怖い・・

美香は担当医の部屋に呼ばれていた。橘医師はレントゲンを手にイスに座った。

「お待たせしました　では検査結果をお知らせします　木内さんの頭、脳に腫瘍が見つかりました」

レントゲンを指さし橘は話を続けた。

「腫瘍はここにあります　手術で切り取ってしまえば普通なら問題ありません　しかし木内さんの場合は難しい手術になります　腫瘍が此処でなければ通常の手術が出来たのですが」

昨夜の不安が現実になっていた。美香は硬直させた体を身震させていた。

「木内さん大丈夫ですか」

美香は顔を上げて頷いた。

「事務的な話ですが手術の際、承諾書にサインが必要です。身内の方がいないと井川さんからお聞きしています。井川さんから身元引受人の申し出がありましたが宜しいですか」

美香は机のメモに手を伸ばしペンを走らせた。


彼にすべて託したいと思います　でも一つだけ約束してください　私の生命に係わる事は彼には一切告げないと　告知は私だけにしてください　すべてを受け入れる覚悟は出来ています

承諾した橘医師はレントゲンに目をやりながら言葉を続けた。