113 / 315
不思議な三角関係
揺らぐ心7
しおりを挟む
「おしゃべりはそのくらいにしてね、患者さんが疲れますよ」
「すみません」
「この日を待っていたあなたの気持ちはわかるけど木内さんは今日検査の予定が入ってるの 患者さんにとって検査はとても疲れるのよ 木内さんも出来るだけ安静にして体を休ませなきょだめよ あなたは付添い人なのよね その付添いが患者を疲れさせてどうするの」
「すみません」
美香は看護士と筆談をしていた。笑い声を上げていた看護士がそのメモを雅和に握らせ出て行った。
「飲み物買って来るけど美香さんは ✕か、いらないんだね」
美香が看護士に書いたメモを見ながら雅和は売店へと歩いていた。
看護師さん、私の大切な付き添い人をいじめないで 確かに空気を読めない所あるけど純粋で子供のまま大人になったような人なの 私にはこの世で一番大切な人だからお手柔らかにお願いします
雅和の顔は恥ずかしさで火照りだしていた。ふと佐知の言葉を思い出した。
今度こそ本物の強い男になって美香さんを守ってあげて
そうだよな、美香さんが元気になったらプロポーズしよう
雅和は美香が自分の子を宿している事実その命が消えようとしている現実も知らず幸せな未来設計に思いを巡らしていた。
検査に向う美香は笑顔で手をふっていた。直立不動で厳しい顔の雅和に看護士が言った。
「木内さんは大丈夫よ あなたが緊張してどうするの、そんなに情けない顔してないでほら笑ってあげなさい 木内さんが戻るまで時間があるから肩の力抜いて待っていて、まるであなたの方が患者みたいね」
看護師は豪快に笑い美香の車椅子を押して出て行った。
あの看護士のおばさん、すごいキャラだな 明らかに俺をいじって楽しんでるって感じ 年配者の目には若輩の俺なんか子供で頼りなく映って見えるんだろうな
気を取り直し携帯電話を持って院外にでた。毎日欠かさず事務所にかける電話は雅和の日課だった。
「てっちゃんお疲れさまです 仕事は順調ですか」
「お前の仕事は俺が責任もってやってるから心配するな ただ昨夕困ったことがおきた 佐伯さんから依頼された土地相続の件だがうちの担当者がとんでもないミスをしでかした 俺にもチェックの甘さがあったが100%こっちの落ち度だ」
「それで事態は収拾できそう」
「ああなんとかなりそうだ 言いにくいんだが責任者であるがお前が顔を出さないわけにはな」
「わかった、事務所の代表としてきちんと謝罪すべきだな いまから事務所に戻るよ 話はそっちで詳しく聞く」
病室に戻ろうとした雅和は偶然佐知と鉢合わせした。
「あっ、井川君来てたの」
「いいタイミングで会えてよかったよ 仕事でいまから静岡に戻るんだ 美香さんのこと君に頼んでもいいかな 仕事が終わったら急いで帰ってくるからそれまで美香さんを」
「了解よ、心配しないで仕事に行って」
「じゃ頼んだよ」
病室に美香の姿はなかった。検査はいつ終わるのだろうと見上げた先の時計を見た雅和はメモをおいて病室を出た。
美香さんへ
急な仕事で静岡に戻る。仕事が済んだら急いで帰るから寂しいだろうけど我慢して待っててくれ。 美香さんのことは佐知に頼んである。力になってくれるよ。じゃ俺は仕事モードに切り替えて男の戦場に行って来ます雅和より
「すみません」
「この日を待っていたあなたの気持ちはわかるけど木内さんは今日検査の予定が入ってるの 患者さんにとって検査はとても疲れるのよ 木内さんも出来るだけ安静にして体を休ませなきょだめよ あなたは付添い人なのよね その付添いが患者を疲れさせてどうするの」
「すみません」
美香は看護士と筆談をしていた。笑い声を上げていた看護士がそのメモを雅和に握らせ出て行った。
「飲み物買って来るけど美香さんは ✕か、いらないんだね」
美香が看護士に書いたメモを見ながら雅和は売店へと歩いていた。
看護師さん、私の大切な付き添い人をいじめないで 確かに空気を読めない所あるけど純粋で子供のまま大人になったような人なの 私にはこの世で一番大切な人だからお手柔らかにお願いします
雅和の顔は恥ずかしさで火照りだしていた。ふと佐知の言葉を思い出した。
今度こそ本物の強い男になって美香さんを守ってあげて
そうだよな、美香さんが元気になったらプロポーズしよう
雅和は美香が自分の子を宿している事実その命が消えようとしている現実も知らず幸せな未来設計に思いを巡らしていた。
検査に向う美香は笑顔で手をふっていた。直立不動で厳しい顔の雅和に看護士が言った。
「木内さんは大丈夫よ あなたが緊張してどうするの、そんなに情けない顔してないでほら笑ってあげなさい 木内さんが戻るまで時間があるから肩の力抜いて待っていて、まるであなたの方が患者みたいね」
看護師は豪快に笑い美香の車椅子を押して出て行った。
あの看護士のおばさん、すごいキャラだな 明らかに俺をいじって楽しんでるって感じ 年配者の目には若輩の俺なんか子供で頼りなく映って見えるんだろうな
気を取り直し携帯電話を持って院外にでた。毎日欠かさず事務所にかける電話は雅和の日課だった。
「てっちゃんお疲れさまです 仕事は順調ですか」
「お前の仕事は俺が責任もってやってるから心配するな ただ昨夕困ったことがおきた 佐伯さんから依頼された土地相続の件だがうちの担当者がとんでもないミスをしでかした 俺にもチェックの甘さがあったが100%こっちの落ち度だ」
「それで事態は収拾できそう」
「ああなんとかなりそうだ 言いにくいんだが責任者であるがお前が顔を出さないわけにはな」
「わかった、事務所の代表としてきちんと謝罪すべきだな いまから事務所に戻るよ 話はそっちで詳しく聞く」
病室に戻ろうとした雅和は偶然佐知と鉢合わせした。
「あっ、井川君来てたの」
「いいタイミングで会えてよかったよ 仕事でいまから静岡に戻るんだ 美香さんのこと君に頼んでもいいかな 仕事が終わったら急いで帰ってくるからそれまで美香さんを」
「了解よ、心配しないで仕事に行って」
「じゃ頼んだよ」
病室に美香の姿はなかった。検査はいつ終わるのだろうと見上げた先の時計を見た雅和はメモをおいて病室を出た。
美香さんへ
急な仕事で静岡に戻る。仕事が済んだら急いで帰るから寂しいだろうけど我慢して待っててくれ。 美香さんのことは佐知に頼んである。力になってくれるよ。じゃ俺は仕事モードに切り替えて男の戦場に行って来ます雅和より
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

🍶 夢を織る旅 🍶 ~三代続く小さな酒屋の主人と妻の愛と絆の物語~
光り輝く未来
現代文学
家業を息子に引き継いだ華村醸(はなむら・じょう)の頭の中には、小さい頃からの日々が浮かんでいた。
祖父の膝にちょこんと座っている幼い頃のこと、
東京オリンピックで活躍する日本人選手に刺激されて、「世界と戦って勝つ!」と叫んだこと、
醸造学の大学院を卒業後、パリで仕事をしていた時、訪問先のバルセロナで愛媛県出身の女性と出会って恋に落ちたこと、
彼女と二人でカリフォルニアに渡って、著名なワイナリーで働いたこと、
結婚して子供ができ、翔(しょう)という名前を付けたこと、
父の死後、過剰な在庫や厳しい資金繰りに苦しみながらも、妻や親戚や多くの知人に支えられて建て直したこと、
それらすべてが蘇ってくると、胸にグッとくるものが込み上げてきた。
すると、どこからか声が聞こえてきたような気がした。
それは、とても懐かしい声だった。
祖父と父の声に違いなかった。
✧ ✧
美味しいお酒と料理と共に愛情あふれる物語をお楽しみください。

おれ、ユーキ
あつあげ
現代文学
『さよならマユミちゃん』のその後を描くスピンオフ作品。叔母のマユミちゃんが残してくれた家でシェアハウスを始めた佑樹、だがやってきたのは未知の感染症だった。先の見えない世界で彼が見つけたものとは――?80年代生まれのひりひり現在進行形物語!
風が告げる未来
北川 聖
現代文学
風子は、父の日記を手にしたまま、長い時間それを眺めていた。彼女の心の中には、かつてないほどの混乱と問いが渦巻いていた。「全てが過ぎ去る」という父の言葉は、まるで風が自分自身の運命を予見していたかのように響いていた。
翌日、風子は学校を休み、父の足跡を辿る決意をした。日記の最後のページには、父が最後に訪れたとされる場所の名前が書かれていた。それは、彼女の住む街から遠く離れた、山奥の小さな村だった。風子は、その村へ行けば何か答えが見つかるかもしれないと信じていた。
六華 snow crystal 8
なごみ
現代文学
雪の街札幌で繰り広げられる、それぞれのラブストーリー。
小児性愛の婚約者、ゲオルクとの再会に絶望する茉理。トラブルに巻き込まれ、莫大な賠償金を請求される潤一。大学生、聡太との結婚を夢見ていた美穂だったが、、
その男、人の人生を狂わせるので注意が必要
いちごみるく
現代文学
「あいつに関わると、人生が狂わされる」
「密室で二人きりになるのが禁止になった」
「関わった人みんな好きになる…」
こんな伝説を残した男が、ある中学にいた。
見知らぬ小グレ集団、警察官、幼馴染の年上、担任教師、部活の後輩に顧問まで……
関わる人すべてを夢中にさせ、頭の中を自分のことで支配させてしまう。
無意識に人を惹き込むその少年を、人は魔性の男と呼ぶ。
そんな彼に関わった人たちがどのように人生を壊していくのか……
地位や年齢、性別は関係ない。
抱える悩みや劣等感を少し刺激されるだけで、人の人生は呆気なく崩れていく。
色んな人物が、ある一人の男によって人生をジワジワと壊していく様子をリアルに描いた物語。
嫉妬、自己顕示欲、愛情不足、孤立、虚言……
現代に溢れる人間の醜い部分を自覚する者と自覚せずに目を背ける者…。
彼らの運命は、主人公・醍醐隼に翻弄される中で確実に分かれていく。
※なお、筆者の拙作『あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が』に出てくる人物たちがこの作品でもメインになります。ご興味があれば、そちらも是非!
※長い作品ですが、1話が300〜1500字程度です。少しずつ読んで頂くことも可能です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大人への門
相良武有
現代文学
思春期から大人へと向かう青春の一時期、それは驟雨の如くに激しく、強く、そして、短い。
が、男であれ女であれ、人はその時期に大人への確たる何かを、成熟した人生を送るのに無くてはならないものを掴む為に、喪失をも含めて、獲ち得るのである。人は人生の新しい局面を切り拓いて行くチャレンジャブルな大人への階段を、時には激しく、時には沈静して、昇降する。それは、驟雨の如く、強烈で、然も短く、将に人生の時の瞬なのである。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる