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不思議な三角関係

揺らぐ心6

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雅和からのメールに気づいたのは漆黒の闇に覆われた夜半だった。

美香さんの意識が戻ったよ

佐知はすぐさま返信メールを送った。

井川君の祈りが届いたのね 本当によかったね

雅和からの電話が入ったのはそれからすぐだった。

「夜遅くごめん、俺うれしくて誰かと話したくて真っ先に思い出したのが佐知、君だった」

「わかるわ井川君の気持ち 私が飛び上がるほどうれしいんだもの、その何十倍も嬉しい井川君の気持ちすごくわかる」

「一緒に喜んでもらえてうれしいよ ありがとう」

「井川君わたし嬉しい 美香さんの回復を私に一番に伝えて一緒に喜びを分かち合おうと電話をくれたんだよね これからも協力するから遠慮しないでなんでも言ってね」

「慣れない病院で俺は佐知に助けてもらった 美香さんも俺と同じように必ず君の助けが必要になると思うんだ 男の俺に言えないことも君になら言えるかもしれない だから佐知頼む、美香さんの力になってくれないか」

「美香さんが入院してから何故だかわからないけどわたし美香さんを支えてあげたいと思ったの だから私からもお願いするわ 井川君と一緒に美香さんを見守らせて、お役に立てるかわからないけど話し相手くらいなら出来ると思うから」

「佐知がいてくれたら美香さんきっと心強いよ 勿論俺もだけど」

翌日、病院で雅和は担当看護士の姿を探していた。

「おはようございます 木内さんの意識が戻ったと連絡もらいましたがいま彼女と会えますか」

「えぇ会えますよ」

「話しは出来ますか」

「相手の話すことは分るようだけど木内さんは頷くだけで言葉はまだ でも大丈夫です 必ず話せるようになりますから ご心配でしょうけど焦らず待ちましょう」

「はい、ありがとうございます」


雅和は開け放たれた窓からの雲ひとつない空を見つめる美香に声をかけた。 

「美香さん、おはよう」

「・・・・」

「驚いただろう どうして俺がいるんだって」

美香は静かに頷いて見せた。

「美香さんが倒れてからずっと付き添ってたんだ 心配しないでいいよ仕事は大丈夫だから」

美香の手が口に物を運ぶ仕草を見せた

「食べる?心配ないよ ちゃんと食べているから こっちに来てから龍一夫婦のお世話になってるんだ、だから大丈夫」

美香の顔が綻んだ。

「美香さんには俺がついてるから安心して」

美香は不自由そうな手で感謝の合掌を作ろうとしていた。

「まだ思うように動かないんだね でも必ずよくなる、会話もいま出ない声も必ず戻る、これ看護士さんの言葉だから間違いないよ」

美香は大きく頷いて微笑みを見せた 背後に人の気配がした雅和は立ち上がって振り返った。



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