101 / 315
不思議な三角関係
縁は異なもの1
しおりを挟む
出張に出かけた美香の日程表には水~金愛知県直帰、出社報告月曜と書かれていた。
出張を終えた美香は土日の休日を利用してすぐさま名古屋に移動していた。コンビニでおにぎりを買って予約していたホテルに入った。コンビニ袋を華奢な楕円形のテーブルに置き美香はベッドに倒れこんでいた。
体がおかしい 自分の体じゃないみたい ここ数日食欲も湧かない 妊娠のせいじゃない何かが起きているのかも・・
何度も眠りから覚めた美香はベッドを離れ窓べに佇んだ。
佐知さんにまた会えるといいな
夜明け前の暗闇に浮かび上がる民家の明かりを見つめていた。
美香は昨夜から体調に一抹の不安はあったが佐知が勤務する病院に向かっていた。診察時間にはまだ20分もあるというのにすでに賑わう待合室。美香は隅のイスに隠れるように座り受付を見続けた。食い入るように見つめる先にお目当ての佐知の姿はなかった。診察が始まると人は益々溢れんばかりに膨れ上がっていた。立ったまま診察を待つ人の多さに美香は席を立たざる得なかった。そのとき男の子の大きな声が聞こえた。
「さっちゃ~ん、はい僕の診察券」
「喉はもう大丈夫みたいね」
「うんもう痛くないよ」
受付で男の子と会話しているのは間違いなく佐知だった。
入院先のエレベーターでぶつかったあの人 間違いない 私やっぱりあの人のこと嫌いじゃないかも
佐知を見つめる美香の顔に笑顔がこぼれた。頃合を見計らってまた出直そうと美香は病院を出た。
時間を持て余す美香は見知らぬ町並みを彷徨っていた。どれくらい歩いたのだろう。遠方に神殿のような建造物が見えた。寺院は地元では三大観音の一つと言われていた。信仰深いわけではないが美香は何故か手を合わせたい気持ちになった。不調の体と気弱になった心が救いを求めていた。お参りを済ませた美香は参道に通じる商店街に迷い込んでいた。そこは一度だけ行ったことがある東京の浅草の雰囲気と似ていた。ふと見上げたアートのようなアーケードの屋根に足を止め見入っていた。一画ごとにその絵柄も様式もがらりと変わり訪れる人を楽しくさせた。
美香は前方から歩いてくる女性に釘付けになった。大きな袋を抱え颯爽と闊歩するその女性は雅和が話してくれたある人にそっくりだった、足を止めた雑貨店で買い物客を装いながらその人が過ぎるのを待った。美香は自分の直感を信じ探偵のように後をつけた。十字路を二つ越してすぐのところで姿が忽然と消えた。付近を見渡したが見失った姿を探す術もなく途方にくれていた。カラカラと音のするほうに目をやると看板が風に揺れていた。
あの人はやっぱり雅和が話していた「SIGNPOST」のママ、
雅和が佐知さんと愛を育んだお店がここなのね 恋人だった二人が時間を共有したお店、そして再び二人が再会し語り合ったお店 ここがSIGNPOST
美香は意を決してドアを開けた。
出張を終えた美香は土日の休日を利用してすぐさま名古屋に移動していた。コンビニでおにぎりを買って予約していたホテルに入った。コンビニ袋を華奢な楕円形のテーブルに置き美香はベッドに倒れこんでいた。
体がおかしい 自分の体じゃないみたい ここ数日食欲も湧かない 妊娠のせいじゃない何かが起きているのかも・・
何度も眠りから覚めた美香はベッドを離れ窓べに佇んだ。
佐知さんにまた会えるといいな
夜明け前の暗闇に浮かび上がる民家の明かりを見つめていた。
美香は昨夜から体調に一抹の不安はあったが佐知が勤務する病院に向かっていた。診察時間にはまだ20分もあるというのにすでに賑わう待合室。美香は隅のイスに隠れるように座り受付を見続けた。食い入るように見つめる先にお目当ての佐知の姿はなかった。診察が始まると人は益々溢れんばかりに膨れ上がっていた。立ったまま診察を待つ人の多さに美香は席を立たざる得なかった。そのとき男の子の大きな声が聞こえた。
「さっちゃ~ん、はい僕の診察券」
「喉はもう大丈夫みたいね」
「うんもう痛くないよ」
受付で男の子と会話しているのは間違いなく佐知だった。
入院先のエレベーターでぶつかったあの人 間違いない 私やっぱりあの人のこと嫌いじゃないかも
佐知を見つめる美香の顔に笑顔がこぼれた。頃合を見計らってまた出直そうと美香は病院を出た。
時間を持て余す美香は見知らぬ町並みを彷徨っていた。どれくらい歩いたのだろう。遠方に神殿のような建造物が見えた。寺院は地元では三大観音の一つと言われていた。信仰深いわけではないが美香は何故か手を合わせたい気持ちになった。不調の体と気弱になった心が救いを求めていた。お参りを済ませた美香は参道に通じる商店街に迷い込んでいた。そこは一度だけ行ったことがある東京の浅草の雰囲気と似ていた。ふと見上げたアートのようなアーケードの屋根に足を止め見入っていた。一画ごとにその絵柄も様式もがらりと変わり訪れる人を楽しくさせた。
美香は前方から歩いてくる女性に釘付けになった。大きな袋を抱え颯爽と闊歩するその女性は雅和が話してくれたある人にそっくりだった、足を止めた雑貨店で買い物客を装いながらその人が過ぎるのを待った。美香は自分の直感を信じ探偵のように後をつけた。十字路を二つ越してすぐのところで姿が忽然と消えた。付近を見渡したが見失った姿を探す術もなく途方にくれていた。カラカラと音のするほうに目をやると看板が風に揺れていた。
あの人はやっぱり雅和が話していた「SIGNPOST」のママ、
雅和が佐知さんと愛を育んだお店がここなのね 恋人だった二人が時間を共有したお店、そして再び二人が再会し語り合ったお店 ここがSIGNPOST
美香は意を決してドアを開けた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

🍶 夢を織る旅 🍶 ~三代続く小さな酒屋の主人と妻の愛と絆の物語~
光り輝く未来
現代文学
家業を息子に引き継いだ華村醸(はなむら・じょう)の頭の中には、小さい頃からの日々が浮かんでいた。
祖父の膝にちょこんと座っている幼い頃のこと、
東京オリンピックで活躍する日本人選手に刺激されて、「世界と戦って勝つ!」と叫んだこと、
醸造学の大学院を卒業後、パリで仕事をしていた時、訪問先のバルセロナで愛媛県出身の女性と出会って恋に落ちたこと、
彼女と二人でカリフォルニアに渡って、著名なワイナリーで働いたこと、
結婚して子供ができ、翔(しょう)という名前を付けたこと、
父の死後、過剰な在庫や厳しい資金繰りに苦しみながらも、妻や親戚や多くの知人に支えられて建て直したこと、
それらすべてが蘇ってくると、胸にグッとくるものが込み上げてきた。
すると、どこからか声が聞こえてきたような気がした。
それは、とても懐かしい声だった。
祖父と父の声に違いなかった。
✧ ✧
美味しいお酒と料理と共に愛情あふれる物語をお楽しみください。

おれ、ユーキ
あつあげ
現代文学
『さよならマユミちゃん』のその後を描くスピンオフ作品。叔母のマユミちゃんが残してくれた家でシェアハウスを始めた佑樹、だがやってきたのは未知の感染症だった。先の見えない世界で彼が見つけたものとは――?80年代生まれのひりひり現在進行形物語!
風が告げる未来
北川 聖
現代文学
風子は、父の日記を手にしたまま、長い時間それを眺めていた。彼女の心の中には、かつてないほどの混乱と問いが渦巻いていた。「全てが過ぎ去る」という父の言葉は、まるで風が自分自身の運命を予見していたかのように響いていた。
翌日、風子は学校を休み、父の足跡を辿る決意をした。日記の最後のページには、父が最後に訪れたとされる場所の名前が書かれていた。それは、彼女の住む街から遠く離れた、山奥の小さな村だった。風子は、その村へ行けば何か答えが見つかるかもしれないと信じていた。
六華 snow crystal 8
なごみ
現代文学
雪の街札幌で繰り広げられる、それぞれのラブストーリー。
小児性愛の婚約者、ゲオルクとの再会に絶望する茉理。トラブルに巻き込まれ、莫大な賠償金を請求される潤一。大学生、聡太との結婚を夢見ていた美穂だったが、、
その男、人の人生を狂わせるので注意が必要
いちごみるく
現代文学
「あいつに関わると、人生が狂わされる」
「密室で二人きりになるのが禁止になった」
「関わった人みんな好きになる…」
こんな伝説を残した男が、ある中学にいた。
見知らぬ小グレ集団、警察官、幼馴染の年上、担任教師、部活の後輩に顧問まで……
関わる人すべてを夢中にさせ、頭の中を自分のことで支配させてしまう。
無意識に人を惹き込むその少年を、人は魔性の男と呼ぶ。
そんな彼に関わった人たちがどのように人生を壊していくのか……
地位や年齢、性別は関係ない。
抱える悩みや劣等感を少し刺激されるだけで、人の人生は呆気なく崩れていく。
色んな人物が、ある一人の男によって人生をジワジワと壊していく様子をリアルに描いた物語。
嫉妬、自己顕示欲、愛情不足、孤立、虚言……
現代に溢れる人間の醜い部分を自覚する者と自覚せずに目を背ける者…。
彼らの運命は、主人公・醍醐隼に翻弄される中で確実に分かれていく。
※なお、筆者の拙作『あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が』に出てくる人物たちがこの作品でもメインになります。ご興味があれば、そちらも是非!
※長い作品ですが、1話が300〜1500字程度です。少しずつ読んで頂くことも可能です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大人への門
相良武有
現代文学
思春期から大人へと向かう青春の一時期、それは驟雨の如くに激しく、強く、そして、短い。
が、男であれ女であれ、人はその時期に大人への確たる何かを、成熟した人生を送るのに無くてはならないものを掴む為に、喪失をも含めて、獲ち得るのである。人は人生の新しい局面を切り拓いて行くチャレンジャブルな大人への階段を、時には激しく、時には沈静して、昇降する。それは、驟雨の如く、強烈で、然も短く、将に人生の時の瞬なのである。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる