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別れた二人の関係
昔の恋人は9
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二人はひたすら走り続けていた。消え行くバスに雅和の心は萎えたがあきらめたくなかった。暗やみの先に追いかけたバスが突然に視界に入った。
走り追いかける俺の姿を見つけたら、佐知はかならずバスを降りる
雅和は最後の力をふり絞り走り続けた。
雅和はもうひき返したかも知れない ならどんなに頑張って走っても雅和には会えないわ
暗がりを走る佐知の心は揺れていた。それでも会いたい一心で痛む足を堪えて走り続けた。黒い人影が目に入るとどちらからともなく名前を叫んでいた
佐知は駆けてきた雅和におもわず抱きついていた。ハァ・ハァ・・雅和の荒い息遣いと鼓動が佐知の体に伝わってきた。体を離し二人は無言のまま見つめあった。
「俺このままじゃ帰れなくて、佐知に言い忘れた言葉を伝えたくて追いかけてきたんだ」
「・・・・・」
「俺は佐知とこうして会えた縁を大切にしたいんだ だから又会おう佐知」
封印したはずの雅和への思いが溢れ出していた。
「うん、ありがとう また会いましょうね 約束よ」
「ああ、また会おう佐知」
どちらからともなく手を絡め歩き出していた。言葉はいらなかった。あの頃と同じだった。二人の背後に危ない匂いが立ち込めていた。
歩き続けた二人がたどり着いた先はホテルだった。家路に帰る最終の電車もバスもすでに発車し二人は近くにあったホテルで始発を待つことにした。
「駅に向う道すがら君のことばかり考えていた 君と話していたら昔のあの頃に戻ったような気がして嬉しかったよ」
「私ももっといっぱい話しをしたかったなって・・・あなたのことばかり考えていたの」
二人は疲れた体をベッドに預け天井を仰ぎ見ていた。微かに触れ合う懐かしい体の温もりに互いの愛の記憶が蘇っていた。佐知は自分を見失うほど雅和を愛した日々が懐かしかった。雅和が乗る電車を待つ駅で腕と腕が触れるたび泣き出しそうになった最後の別れ、雅和が去ったプラットホームで人目もはばからずしゃくりあげて泣いた記憶さえ懐かしかった。泣いて縋ってでも愛を取り戻したかったあの日、雅和はもう私との愛を葬り去っていた 優しさの一欠けらもなく去って行ったその背中はとても小さく見えた。
切ない別れの記憶を辿る佐知は今こうして雅和といる事が夢のようだった。しかし何故か狂おしく求めた以前のような激情はわかなかった。
こうしていられるのなら何もいらない これ以上欲張って望んだりしたら何もかも消えてしまいそうで怖い 私は何も望まない、別れた雅和に私はなにも望んじゃいけないの 雅和には美香さんという大切な人がいるのだから・・
燃え盛る体はまっすぐな心に鎮められ鎮火していた。自然に握り合った手は次第に汗ばんで解けそうになった。その手を雅和はギュッと掴みなおした。
この手はもう離さない あのとき俺がこの手を離さなければ俺と佐知は・・いま手を伸ばさなくても触れ合える距離に・・此処に昔の恋人佐知がいる
雅和は今すぐ昔のように佐知を抱きしめたかった。この腕の中で溶けてゆく姿をもう一度見たいと思った 愛おしさは昔と同じだったが雅和も佐知同様何かが違うと感じていた。がむしゃらにむさぼるような愛は姿を消していた。しかし伝わってくる互いの温もりは二人に安らぎを運んでくれた。体を重ね合うこともなく時だけが刻々と流れていた。ただ静かに二人はベッドに並んで寄り添っていた。
「雅和、変なこと聞いてもいい」
「変なこと?」
「軽蔑しないで聞いてね 私この部屋で雅和と二人になって昔と同じ気持ちになった 雅和に抱きしめて欲しい雅和がほしいって昔のように抱いてって叫びたくなったわ でもそんな衝動がもう一つの気持ちに宥められていたの ずっと願っていた夢のような再会だけど・・ただこうして近くにいられるそれだけで私はもう十分幸せ、こうしてあなたの隣にいるだけなのに昔雅和に抱かれた時のように体は充たされていたの 火照った体は昔のとは違うって分かったわ 雅和はわたしが欲しい・抱きたいと思った」
「・・・・・」
「美香さんのこと考えているのね」
走り追いかける俺の姿を見つけたら、佐知はかならずバスを降りる
雅和は最後の力をふり絞り走り続けた。
雅和はもうひき返したかも知れない ならどんなに頑張って走っても雅和には会えないわ
暗がりを走る佐知の心は揺れていた。それでも会いたい一心で痛む足を堪えて走り続けた。黒い人影が目に入るとどちらからともなく名前を叫んでいた
佐知は駆けてきた雅和におもわず抱きついていた。ハァ・ハァ・・雅和の荒い息遣いと鼓動が佐知の体に伝わってきた。体を離し二人は無言のまま見つめあった。
「俺このままじゃ帰れなくて、佐知に言い忘れた言葉を伝えたくて追いかけてきたんだ」
「・・・・・」
「俺は佐知とこうして会えた縁を大切にしたいんだ だから又会おう佐知」
封印したはずの雅和への思いが溢れ出していた。
「うん、ありがとう また会いましょうね 約束よ」
「ああ、また会おう佐知」
どちらからともなく手を絡め歩き出していた。言葉はいらなかった。あの頃と同じだった。二人の背後に危ない匂いが立ち込めていた。
歩き続けた二人がたどり着いた先はホテルだった。家路に帰る最終の電車もバスもすでに発車し二人は近くにあったホテルで始発を待つことにした。
「駅に向う道すがら君のことばかり考えていた 君と話していたら昔のあの頃に戻ったような気がして嬉しかったよ」
「私ももっといっぱい話しをしたかったなって・・・あなたのことばかり考えていたの」
二人は疲れた体をベッドに預け天井を仰ぎ見ていた。微かに触れ合う懐かしい体の温もりに互いの愛の記憶が蘇っていた。佐知は自分を見失うほど雅和を愛した日々が懐かしかった。雅和が乗る電車を待つ駅で腕と腕が触れるたび泣き出しそうになった最後の別れ、雅和が去ったプラットホームで人目もはばからずしゃくりあげて泣いた記憶さえ懐かしかった。泣いて縋ってでも愛を取り戻したかったあの日、雅和はもう私との愛を葬り去っていた 優しさの一欠けらもなく去って行ったその背中はとても小さく見えた。
切ない別れの記憶を辿る佐知は今こうして雅和といる事が夢のようだった。しかし何故か狂おしく求めた以前のような激情はわかなかった。
こうしていられるのなら何もいらない これ以上欲張って望んだりしたら何もかも消えてしまいそうで怖い 私は何も望まない、別れた雅和に私はなにも望んじゃいけないの 雅和には美香さんという大切な人がいるのだから・・
燃え盛る体はまっすぐな心に鎮められ鎮火していた。自然に握り合った手は次第に汗ばんで解けそうになった。その手を雅和はギュッと掴みなおした。
この手はもう離さない あのとき俺がこの手を離さなければ俺と佐知は・・いま手を伸ばさなくても触れ合える距離に・・此処に昔の恋人佐知がいる
雅和は今すぐ昔のように佐知を抱きしめたかった。この腕の中で溶けてゆく姿をもう一度見たいと思った 愛おしさは昔と同じだったが雅和も佐知同様何かが違うと感じていた。がむしゃらにむさぼるような愛は姿を消していた。しかし伝わってくる互いの温もりは二人に安らぎを運んでくれた。体を重ね合うこともなく時だけが刻々と流れていた。ただ静かに二人はベッドに並んで寄り添っていた。
「雅和、変なこと聞いてもいい」
「変なこと?」
「軽蔑しないで聞いてね 私この部屋で雅和と二人になって昔と同じ気持ちになった 雅和に抱きしめて欲しい雅和がほしいって昔のように抱いてって叫びたくなったわ でもそんな衝動がもう一つの気持ちに宥められていたの ずっと願っていた夢のような再会だけど・・ただこうして近くにいられるそれだけで私はもう十分幸せ、こうしてあなたの隣にいるだけなのに昔雅和に抱かれた時のように体は充たされていたの 火照った体は昔のとは違うって分かったわ 雅和はわたしが欲しい・抱きたいと思った」
「・・・・・」
「美香さんのこと考えているのね」
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