涙が幸せの泉にかわるまで

美香のルーツ

私は父なし子8

母早苗から聞かされた勝随和尚の話しを美香は今も覚えていた。


「大切な物を奪われ悲しみに暮れようと起きた事のすべてを受け入れなさい　大切なものを人から奪うことなど誰にも出来ないんだよ　過去は死と同じと思えばいい　人は現在をいまを生きているのだからね　どんなことがあろうとも人は命ある限り生き続けなければならない　君の行動は父親の目からすれば愚かに見えたかもしれない　しかし君は自分の意思で正しいとその道を選んだ　そうだろう　その結果がどうだったかは言わずしてわかるね　私が言いたいのは一つだけだ　自分のマインドを常にきれいにしてこれからを生き続けなさい　それが御両親にとって一番の供養になるのだから」


母早苗は自分の愚かさに気づき懺悔の涙にくれた時の心情を口にした。


「美香、お母さんはあの時やっとわかったの　真実の目が涙で洗われ曇って見えなかったものがはっきり見えた　不倫の関係をきっぱり精算するそれが両親には一番の供養になるそう思ったお母さんはお父さんと別れる決心をしたの　でもあなたを父親の知らない子にしてしまったわ　報われない愛に溺れた身勝手なお母さんを許してね」


一生を日陰の身で父悟朗と添い遂げようとしていた母が別れを決断した瞬間だった。