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予期せぬ巡り合わせ

こんなことって6

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数日後、佐知がポストに投函した書留が会社に配達された。雅和はペンダントを取り出し封の中を隈無くみていた。ペンダント以外は何も入っていなかった。雅和は一抹の寂しさを感じていた。


俺は何を期待していたんだ 俺って奴はどうしようもない男だな


雅和は机に置いたペンダントを眺め高揚していた。

美香さんがこれを見たら飛び上がって喜ぶだろうな

浮ついた心を見透かされまいと雅和はてっちゃん(手塚)の姿を何度も目で追っていた。手塚には幼少から知る雅和の心内などすべて読めていた。しかし仕事に支障がない限り手塚は目をつぶっていた。


美香のマンションに入るなり雅和は大きな声で美香の名を呼んでいた。


「美香さん、美香さ~ん」


「そんな大きな声ださなくったって聞こえてるわよ」


雅和の額から流れる汗が光っていた。


「そんなに汗かいてどうしたの」


「エレベーター待ってられなくて階段を走ってきたんだ」


「待ってて今タオル持ってくるから」


「いいよ このくらいの汗、大丈夫」


「はいこれで汗を拭いて、そんなに慌てて来たって事はもしかしてお父さんの件で何かわかったの」


「今日はその事じゃなくて、それよりこれ見て」


手にしたのは昨日雅和が丹精こめ磨いた美香が失くしたペンダントだった。


「このペンダント探していたペンダントと同じね 買ってくれたの」


ロケットペンダントを開け写真を取り出した雅和は張り合わせられた雅和と美香の顔写真を見せた。


「これは私のペンダント、探していたペンダント どうしてまー君がこれを・・どこで」


「・・・」


「どうかしたの」


「あっごめん、このペンダントは俺の知り合いが拾って届けてくれたんだ 写真が入ってたから連絡くれて」


「そんな偶然があるのね 私どこで落としたのかしら」


「病院、美香さんが入院してたあの病院だよ」


「やっぱり病院だったのね エレベーターで女の人とぶつかって、そのときまでは首にしていたような気がしていたから」


「そうか エレベーターで彼女はこれを拾ったんだな」


「いま彼女って言った?これを拾った知り合いって女の人なの」


「うん・・・・拾ってくれたのは学生時代の友人なんだ 突然電話が来て拾ったペンダントを返したいって・・驚いたよ」


「拾った人が雅和の友人なんて奇妙なめぐり合わせよね」


「あぁ美香さんが彼女と出会うなんてほんと摩訶不思議としかいえないよ」


「あぁ思い出した 育ちのよさそうな控えめで愛らしい子だったわ そんな感じでしょ彼女」


「うぅーんそうかな、よくわからないよ」


「私とはタイプが違うから印象に残っていたんだわ わたし彼女のこと嫌いじゃないわよ」


何かを察したような美香に雅和は返す言葉を無くした。

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