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予期せぬ巡り合わせ
出生3
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佐知はテーブル置かれたクッキーに手を伸ばした。母の手作り菓子の中でこのクッキーは3本の指に入る絶品だった。
「おいしい、やっぱりお母さんのクッキーは世界一だね」
紅茶を飲み干したそのとき箱を手にして園長先生が戻ってきた。千代紙細工が施されたその箱がテーブルに置かれた。
「これはさっちゃんを産んでくれたお母さんが大切に持っていた遺品なの 成長したあなたにいつか渡して欲しいと貞子さんから預かっていたのよ」
「お母さんの遺品?開けて見てもいいですか」
「勿論よ、ゆっくり御覧なさい 先生はホールで片付けをしていますからね」
箱を持ち上げてまじまじと見ていた。暖色系の色調と和紙特有の手触りは気持ちを和ませた。色褪せた群青色のリボンを外し箱を開けた。写真とメッセージカードが箱から溢れんばかりだった。
「赤ちゃんの写真がいっぱい これが私・・」
一枚、又一枚、佐知は無心に眺めていた。写真ひとつひとつの裏にコメントが書いてあった。
これがお母さんの文字・・
丸みを帯びた文字に温かみを感じた。顔の半分を占める大口を開けて笑う佐知であろう赤ちゃんの写真には[天使の笑み・愛しい我が子]という題名がつけられていた その下には、サッちゃん、あなたは幸せを運ぶ天使・大事な宝物です 私達のもとに生まれてきてくれてありがとう あなたはお父さんとお母さんの大切な宝・神がお与え下さった天使です 嘘のない誠実な人に育ってほしいと願っています あなたのお父さんのようにね 私たちの宝物はサッちゃんです お父さんとお母さんは毎日幸せです 幸せと喜びを教えてくれたサッちゃん一緒にいっぱい幸せになりましょうね
写真の裏は虫眼鏡を使わなければ読むないほどの字で埋っていた
「わたしは愛されていた 実母は私の誕生をこんなに喜んでくれていた」
手のひらサイズのアルバムには微笑む男女の写真が貼られていた。
これがわたしの両親なの・・
心に何かが確かに何か押し寄せているのに哀しいかな佐知は何ひとつの感情も覚えなかった。写真を戻そうと空箱を持ち上げた時だった。
スウッ・スゥー・・紙のすれる音が聞こえた。目を凝らし箱を覗くと端が不自然に膨らんでいた。ジャンプ台のように傾けてみるとその膨らみが動いて見えた。箱の底が二重になっていた。固い台紙を剥し捲ると一通の封筒がでてきた。しっかり糊付けされ厳重にテープまで貼られていた。
「この丸みのある文字はさっきと同じ間違いなく母が書いたものだわ」
柳木沢和人様と書かれた封筒に佐知の胸は訳もなく疼きだした。
柳木沢は何処にでもあるような苗字じゃないわ、お母さんもわたしと同じ柳木沢という人と出会っていたなんて
「おいしい、やっぱりお母さんのクッキーは世界一だね」
紅茶を飲み干したそのとき箱を手にして園長先生が戻ってきた。千代紙細工が施されたその箱がテーブルに置かれた。
「これはさっちゃんを産んでくれたお母さんが大切に持っていた遺品なの 成長したあなたにいつか渡して欲しいと貞子さんから預かっていたのよ」
「お母さんの遺品?開けて見てもいいですか」
「勿論よ、ゆっくり御覧なさい 先生はホールで片付けをしていますからね」
箱を持ち上げてまじまじと見ていた。暖色系の色調と和紙特有の手触りは気持ちを和ませた。色褪せた群青色のリボンを外し箱を開けた。写真とメッセージカードが箱から溢れんばかりだった。
「赤ちゃんの写真がいっぱい これが私・・」
一枚、又一枚、佐知は無心に眺めていた。写真ひとつひとつの裏にコメントが書いてあった。
これがお母さんの文字・・
丸みを帯びた文字に温かみを感じた。顔の半分を占める大口を開けて笑う佐知であろう赤ちゃんの写真には[天使の笑み・愛しい我が子]という題名がつけられていた その下には、サッちゃん、あなたは幸せを運ぶ天使・大事な宝物です 私達のもとに生まれてきてくれてありがとう あなたはお父さんとお母さんの大切な宝・神がお与え下さった天使です 嘘のない誠実な人に育ってほしいと願っています あなたのお父さんのようにね 私たちの宝物はサッちゃんです お父さんとお母さんは毎日幸せです 幸せと喜びを教えてくれたサッちゃん一緒にいっぱい幸せになりましょうね
写真の裏は虫眼鏡を使わなければ読むないほどの字で埋っていた
「わたしは愛されていた 実母は私の誕生をこんなに喜んでくれていた」
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これがわたしの両親なの・・
心に何かが確かに何か押し寄せているのに哀しいかな佐知は何ひとつの感情も覚えなかった。写真を戻そうと空箱を持ち上げた時だった。
スウッ・スゥー・・紙のすれる音が聞こえた。目を凝らし箱を覗くと端が不自然に膨らんでいた。ジャンプ台のように傾けてみるとその膨らみが動いて見えた。箱の底が二重になっていた。固い台紙を剥し捲ると一通の封筒がでてきた。しっかり糊付けされ厳重にテープまで貼られていた。
「この丸みのある文字はさっきと同じ間違いなく母が書いたものだわ」
柳木沢和人様と書かれた封筒に佐知の胸は訳もなく疼きだした。
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