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追憶
もう一度だけ2
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雅和が告げた待ち合わせ場所は柳木沢が最後の常宿にしたホテルの喫茶店だった。雅和と過ごした思い出の場所でもあるのに柳木沢の姿ばかり浮かんでいた。
「来てくれてありがとう」
「お父様ご愁傷様でした」
「親父に代わり礼を言うよ 最期まで君に感謝してた本当にありがとう」
「私の方こそ柳木沢さんから元気をもらっていたのよ 柳木沢さんとお会いするとあなたといるような気持ちになれて楽しかったわ いま思うとあなたと柳木沢さんはそっくりだった」
「俺と親父が 俺、親父ほどひどい男じゃないと思うけど」
「そうじゃなくて、歩き方や仕草がやっぱり親子だなって思ったの だから私はいつも柳木沢さんと会うのが嬉しかったんだわ」
「親父と俺は佐知という一人の女と出会い惹かれた それぞれ思いは違うけど」
「運命のいたずらだったのかな わたしが柳木沢さんと出会っていなければあなたと私は」
「ごめん、君と親父が出会ってくれたこと今は心から感謝しているよ」
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
「俺は君の事わかってやれなかった わかろうとしないで逃げた 嫌な事や辛い事から目を背けてしまう俺は自分勝手で卑怯な最低男だった」
「人は誰だって嫌なことから逃げたくなる でも逃げたら又同じ事から逃げ続けるを繰り返す 解決しない限り、その原因の根っこからは開放されないこれは祖父から言われた言葉なの」
「やっぱり解決しないとだめか」
「解決しなければならないことがあるの」
「いや別にないけどしいて言えば親父のことかな」
「柳木沢さんのこと」
「親父の限りある命を知って嫌い憎み続けた親父のすべてを受け入れようとした 今まで親父にした悪態を詫びたかった でも言葉に出来なくて心で詫び続けた 小さくなっていく親父をみるのがしんどくなると屋上で俺はいつも君の名を呼んでいた 会いたい気持ちがこだまになって俺の胸に飛び込んできた 俺そのとき知ったんだ君を思う時全身に力が漲るって そして親父が言っていた気持ちがわかった これなんだって」
「これって?」
「いやなんでもない 佐知これからも又会ってくれるかな」
「・・・・」
「ゴメン、今すぐ返事は無理だよね」
「あなたの父・柳木沢さんと出会い親睦を重ねた私と柳木沢さんの関係を邪推して責めた 信じてもくれず怒りだけをぶつけ私をひとり残して去った そしてあなたは昔の生活に戻り私の嫌いな許せない男になったのよね 私はそれがどうしてもひっかかってだから正直いって素直にあなたからの連絡を喜べなかった 今も気持ちの整理がつかないの ずっとずっと、この日を待っていたのに会いたいと願っていたのに 今は嘘みたいで、どうしていいのかわからない」
二人の前に高い壁が立ち塞がって見えた。雅和を残しひとり席を立った。見上げた夕刻の空は心のように灰色の濃淡に染まっていた。
今日わたしが会いたかったのは雅和じゃない・・柳木沢さんに会いたくて私は此処にきた あいたいもう一度、もう一度だけでもいい、柳木沢さんあなたに会って話がしたい」
心と同じ今にも降りそうな空を見上げる佐知の手に家から持ってきた天から見守っていると書かれた柳木沢の手紙がしっかり握りしめられていた。
「来てくれてありがとう」
「お父様ご愁傷様でした」
「親父に代わり礼を言うよ 最期まで君に感謝してた本当にありがとう」
「私の方こそ柳木沢さんから元気をもらっていたのよ 柳木沢さんとお会いするとあなたといるような気持ちになれて楽しかったわ いま思うとあなたと柳木沢さんはそっくりだった」
「俺と親父が 俺、親父ほどひどい男じゃないと思うけど」
「そうじゃなくて、歩き方や仕草がやっぱり親子だなって思ったの だから私はいつも柳木沢さんと会うのが嬉しかったんだわ」
「親父と俺は佐知という一人の女と出会い惹かれた それぞれ思いは違うけど」
「運命のいたずらだったのかな わたしが柳木沢さんと出会っていなければあなたと私は」
「ごめん、君と親父が出会ってくれたこと今は心から感謝しているよ」
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
「俺は君の事わかってやれなかった わかろうとしないで逃げた 嫌な事や辛い事から目を背けてしまう俺は自分勝手で卑怯な最低男だった」
「人は誰だって嫌なことから逃げたくなる でも逃げたら又同じ事から逃げ続けるを繰り返す 解決しない限り、その原因の根っこからは開放されないこれは祖父から言われた言葉なの」
「やっぱり解決しないとだめか」
「解決しなければならないことがあるの」
「いや別にないけどしいて言えば親父のことかな」
「柳木沢さんのこと」
「親父の限りある命を知って嫌い憎み続けた親父のすべてを受け入れようとした 今まで親父にした悪態を詫びたかった でも言葉に出来なくて心で詫び続けた 小さくなっていく親父をみるのがしんどくなると屋上で俺はいつも君の名を呼んでいた 会いたい気持ちがこだまになって俺の胸に飛び込んできた 俺そのとき知ったんだ君を思う時全身に力が漲るって そして親父が言っていた気持ちがわかった これなんだって」
「これって?」
「いやなんでもない 佐知これからも又会ってくれるかな」
「・・・・」
「ゴメン、今すぐ返事は無理だよね」
「あなたの父・柳木沢さんと出会い親睦を重ねた私と柳木沢さんの関係を邪推して責めた 信じてもくれず怒りだけをぶつけ私をひとり残して去った そしてあなたは昔の生活に戻り私の嫌いな許せない男になったのよね 私はそれがどうしてもひっかかってだから正直いって素直にあなたからの連絡を喜べなかった 今も気持ちの整理がつかないの ずっとずっと、この日を待っていたのに会いたいと願っていたのに 今は嘘みたいで、どうしていいのかわからない」
二人の前に高い壁が立ち塞がって見えた。雅和を残しひとり席を立った。見上げた夕刻の空は心のように灰色の濃淡に染まっていた。
今日わたしが会いたかったのは雅和じゃない・・柳木沢さんに会いたくて私は此処にきた あいたいもう一度、もう一度だけでもいい、柳木沢さんあなたに会って話がしたい」
心と同じ今にも降りそうな空を見上げる佐知の手に家から持ってきた天から見守っていると書かれた柳木沢の手紙がしっかり握りしめられていた。
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