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追憶

愛は砂の城3

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「私はあなたに愛されていた あなたは私を大切に愛してくれた ねえ間違ってないでしょ だったらなぜ信じてくれないの 私を信じられないの」


「君を信じろって 今の俺には無理、できない」


「どうして出来ないなんて言うの 私はあなたを信じることができたのよ あなたは昔の彼女とホテルで会っていたわよね そこであなたと彼女に何があったかは知らないわ でも私はあなたを愛しるいたから・・その愛をなくしたくないから私はあなたを信じた」


「そんな話を持ち出してきて、さぞ気持いいだろうな 信じてくれてありがとうとでも言わせたいのか 君を信じない俺のほうが悪い、そう言いたいのか もう俺たち」


「もうやめて、信じて貰おうなんてもう思わないからもういいからもう何も言わなくていい、私を許せないって事がよく分かったからこれ以上憎しみをぶつけないで、あなたのこと嫌いになりたくない、これからもずっと好きでいたいからお願い」


「いい加減にしてくれ さっきから自分勝手なことばかり、君には分からないだろうけど俺は、俺は堪えているんだ 泣きたいのはこっちの方なんだ」


肩掛けバッグを掴んだ雅和はドアを蹴り部屋を飛び出していった。ドアが閉まる音だけが無常に響きわたった。雅和の座っていた椅子に手を翳した。仄かに残った雅和の温もりにまた涙が溢れ落ちた。大好きな匂いが怒りの残り香となり部屋中を漂い佐知を責めたてた。愛しい香りは切ない香りに匂いを変えていた。いつまでも漂う残り香がたまらなく悲しかった。雅和の携帯は繋がらなくなっていた。


「お掛けになった携帯電話は現在つかわれて・・」


アナウンスだけが無常に流れ続けた。もう話もしたくないのね。佐知は震える指先で雅和の名前を削除した。就床した耳元でかすかな携帯の音がしていた。鳴ることを忘れていた携帯の音だった。掴んだ携帯に表示されたのは真砂子の名前だった。こんなときに間が悪すぎる・・ 


「ごめん、寝てた」


あいかわずテンションの高い声だった。


「うん、どうしたの」


「ごめんね、ちょっと気になることがあって」


「なあに」


「さち、雅和と喧嘩でもした」


「雅和が何か言ってたの」


「ううん別に何も、だから聞いているのよ あいつ最近おかしいんだよね 佐知の話題になると話を避けるし、言いにくいんけど隠さないで言うから怒らないでね

あいつはむかしの雅和に戻った 

最近は手が付けられないって感じ」


「そうなんだ 又遊び始めたのね」


「心配しないで、龍一に諭され少し落ち着いているから もし何かあったら相談に乗るから隠さないで言ってよね」


「隠さず話してくれてありがとう 真砂子おやすみ」


雅和は心のないまま女を抱く生活に戻っていた。佐知が嫌いな許せない男の一人になっていた。雅和の言葉を思い返していた。「頑張って変わってみせる。佐知のためにかわってみせる」男と女の関係に絶大なる保証など何一つないことを知り落胆していた。覚めやらぬ体の火照りだけを残し去った雅和を憎くさえ思い始めていた。すべては自分のせいと責める時もう一人の佐知がそれを制止した。


佐知は悪いことなどしていない 


雅和が許せないのはホテルの同じ部屋で父・柳木沢と会っていた事。それが雅和を傷つけた原因だったとすればその罪は受けよう。しかし柳木沢と出会ったことがそんなに責められる罪に値するのだろうか 神の悪戯としか思えない偶然の出来事に翻弄されていた。毎夜ベッドの上で堂々巡りを繰り返し眠れぬ夜をあかし続けていた。

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