天才詐欺師は異世界で無双する!

アリス

文字の大きさ
上 下
71 / 110

昼食

しおりを挟む

「わかりました。そういうことでしたら、喜んで引き受けます」

ルュールュエは話を聞き終わると自分の意思でノエルと契約したいと思った。

理由は色々あるが、一番の理由は自分が契約すればアイラのような犠牲者や悲しむ女性たちをこれ以上出さなくて済むと思ったからだ。

自分が徹底的にノエルを監視し、次期侯爵として教育し、真面目で誠実な男にしようと決める。

「ありがとう。頼むわ。フリージア侯爵家とはできれば長く付き合いたいからね」

'私の夢の生活のためにもね'

私はルュールュエに笑いかける。

「お任せください。必ず、完璧に躾けてみせます」

「お願いね」

「はい」

話がまとまりシオンにノエルを起こすよう頼むんだそのとき、アスターとルネが帰ってきた。

ちゃんと行きと同様、少し離れた場所に戻ってきたが、今現在ノエルは眠っているので正体がバレることはなかった。

「お疲れ様。2人共。それで、お父様はなんて?」

私は帰ってきたアスターにすぐ結果を尋ねる。

「わかった、と。全てお嬢様の要望通りにするそうです」

「さすが、お父様」

聞かなくても答えはわかっていたが、アスターの口から男爵の言葉を聞きホッとする。

「それじゃあ、二人も帰ってきたし食事にしよう。ルュールュエ、契約は食事の後でしましょう。あ、そうだ。アスター。頼んでた服は持ってきた?」

フリージアの領地に行くのにノエルを全裸で行かせるわけにも行かないので、男爵に報告しに戻るアスターに持ってくるよう頼んでいた。

「はい。こちらです」

アスターはルネから服を受け取り渡す。

「公子様。服です。着てください……シオン。本当に魔法解いたのか?」

砂に顔を埋めたまま起き上がらないノエルを見て、まだ魔法が解けてないのではと思う。

「ちゃんと解いたぞ」

シオンは言われた通り睡眠魔法を解いたのに、疑われ心外だという顔をしながら近づく。

「……本当に起きないな」

微動だにしないノエルを見て、シオンは本当に魔法を解いたかわからなくなり困惑する。

「だから言ったじゃん」

「……」

「……」

暫く二人の間に長い沈黙があったが、耐えきれなくなったシオンが先に口を開きこう言った。

「起きる気配全然ないな」

「本当ね……仕方ない。足持って」

起きないのが悪い、と心の中で言い訳をしながら、私は服を砂の上に置いてからノエルの脇の下に手を入れ持ち上げる。

シオンは私の行動を見て何をするのかすぐにわかり言われた通り足を持つ。

「私の'せーの'の合図で放るんだぞ」

「わかった」

「行くぞ。せーの」

私は最後まで言うとノエルを海の方へとぶん投げる。

シオンも同じように「せーの」がいい終わった瞬間、投げる。

ノエルの体はかなり遠く海の方へと飛んでいき、緩やかに落下しながら、大きな音を立て海の中へと入った。

ドボーンッ!

ノエルが海の中に入った瞬間、大きな水しぶきが飛んだ。

「え!?なに!?なに!?何が起きたんだ!?」

体に衝撃がきたと思った次の瞬間、いきなり息ができなくなり慌てて立ち上がる。

顔についた髪や水をはらいながら一体何があったんだと確認する。

すると、すぐにこっちを見ている女性と子供が目に入り、自分に何が起きたのか瞬時に理解した。

一言文句を言ってやろうと海から出ようと陸に向かうが、二人は何か話しながら離れていく。



「あ、起きた」

海から出てきたノエルを見て私は呟く。

「死んでなかったみたいだな」

魔法を解いたのに目を覚まさないノエルに、もしかしてら死んでいるのではと思っていた。

「よし。問題なし、と。昼ご飯にしよう」

大きな声で自分に起きたことを把握しようとしているノエルを見て、大丈夫だと思い、背を向け、料理が置いてあるテーブルへと向かう。

「よっしゃ。ようやく食べれる」

シオンはようやく食べられることに喜び、子供のようにはしゃぐ。

花が飛んでいるのかと思うくらい、嬉しそうにスキップしながら、料理の元へと向かうシオンは本当に子供のようだった。

「おい!こら!ちょい待て!」

ノエルは海の中を走りながら叫ぶ。

「……」

私はノエルの怒りの叫び声が聞こえ、後ろを振り返ると、全裸で海の中を走る姿になんとも言えない気持ちになり、無視しすることにした。

「おい!聞こえてるだろ!無視するな!」

ようやく海から出られたノエルは砂の上を軽やかに走り、二人の前に回って通れないよう手を広げる。

「あそこ丸見えよ。隠さなくていいの?」

私は親切心から教える。

それを聞いたノエルはカッと顔を赤く染め、慌てて大事な場所を隠す。

「あそこに服があるわ」

私は服がある場所を指差す。

「アイリーン。悪いんだけど、公子様を乾かしてあげてくれる?」

タオルを使うよりアイリーンに頼んだ方が早く済むのでお願いする。

「はい。お任せください」

そう言ってアイリーンは魔法を使うが、私が乾かしてもらった魔法とは違い、少し雑だったが完璧に水は飛んでいたので問題はない。

「ありがとう。アイリーン」

私はアイリーンの頭を優しく撫でる。

アイリーンは嬉しそうな顔で喜び、もっと撫でてくれと言わんばかりに私の手に頭を擦り付ける。

「服着たら昼食にしましょう」

「……はい」

ノエルは呆気にとられすぎて、怒りも魔法で飛ばされた水のように吹っ飛んだ。

言われた通り服を着て椅子に座る。

一人、知らない男が増えているが、そのことを聞く気力もなく黙って料理を見つめた。

どれも初めて見るものばかりで美味しいのかと不安になるが、とてもいい匂いがするので食欲がそそられお腹が鳴ってしまう。

お腹が鳴り恥ずかしくなり俯き、チラッとみんなの反応を確認するが、小さい鳥と子供、水の塊がうるさいので誰も反応せず聞こえてなかったのだとわかりホッとする。

「さてと、全員揃ったし食べようか」

私がそう言うとルネとシオンは待ってましたと言わんばかりに料理を食べ始める。

それを合図に他の者たちも料理に手を伸ばし始める。

私の料理を初めて食べるノエルとルュールュエは恐る恐ると言ったふうに口に運んだが、食べた瞬間、あまりの美味しさに感激してしまう。

食事をするのは生きるため、腹を満たすだけの行為だと思っていたルュールュエにとって、目の前の料理はその考えを変えるくらい美味しかった。

ノエルは最近、家で出るパンや食事が前より美味しくなったが、今食べている料理の方が何百倍も美味しく、ずっと食べていたくなる。

二人も負けず劣らず物凄いスピードで料理を食べていく。

結構な量を作ったが、料理はあっという間に平らげられてしまい、食事はすぐ終わった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...