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契約内容
しおりを挟む「……動く。ようやく解放された。俺様は自由になった!」
ルネは体が思うように動かせるようになり喜ぶ。
私はルネの姿を見て「よくこの顔と体を見てルネなんて可愛い名前をつけたわね」と名づけ親の目を心配する。
いや、そうじゃない、と首を横に振り、軽く咳払いしてからルネに話しかける。
「ねぇ、喜んでるところ悪いけど先にお話ししましょう」
これ以上ここにいるわけにはいかない。
早く家に帰って害虫駆除(貴族)の対策をしなければいけない。
そう思いルネに声をかけたのだが……
「はっ!小娘。俺様を誰だと思ってる。自由になった以上、貴様に付き従うつもりは……ギャアッ!」
最後まで言い終わる前に急に心臓を直に鷲掴みされたような感覚に襲われ悲鳴を上げる。
「あんた馬鹿なの?私と契約したのもう忘れた?ああ、そういえばあんた契約内容確認せずに同意したんだったわね。馬鹿ね。ちゃんと確認しないから、こうなんことになったのよ」
私は悪魔の王も恐怖する笑顔を浮かべながらそう言った。
「なっ!貴様!騙したのか!」
ルネは目を吊り上げ叫ぶ。
「騙した?人聞きの悪いこと言わないでくれる。私はちゃんと言ったわよね。本当に確認しないくていいのかって。そしてらあんたがいいって言ったんでしょう。契約書をちゃーんと確認しなかったそっちのミスでしょう。私のせいにしないでくれる?」
私は勝ち誇った笑みを浮かべルネを馬鹿にする。
「くっ……!」
その通り過ぎて何も言えない。
どうせ大したことは書いてない。
時間がもったいない、そう思い見なかったことを後悔する。
「その契約書には何がが書かれてるんだ……いや、書かれているのか教えてください」
また心臓が痛くなり慌てて訂正する。
「大したことは書かれてないわ。ただあなたは守ればいいだけよ。私が提示した999の条件をね」
「きゅうっ!はぁ!?なんだそのふざけた数は!?」
「ふさげてないわ。当然の権利だと思うけど。よーく考えて。あんたは今までどのくらい長い年月をここで過ごしてきたか?その間私以外に助け出せた人はいる?閻魔大王の封印を解けたのは誰?呪詛からも解放したのは誰?それを踏まえてもう一度言ってみな。それに、あんたを助けたことで閻魔大王にもその人間達からも目をつけられることになったかもしれないのよ。どう考えても私の方が損してると思うけど」
「……」
その通り過ぎてルネは何も言い返せない。
「それにどれだけあんたが文句言おうとも契約はもうしたの。それも血判でね。これがどういうことか悪魔ならわかるはずよ。この条件に従うしかないって」
ルネは私の言葉を聞いて心の中で悪態を吐く。
'クソッタレが!どうしてこうなった!契約したのが間違いだった!いや、そもそもこいつと会ったのが間違いだった'
ルネは逃げられないとわかっているのに、最後の悪あがきと言わんばかりに睨みつけてからこう尋ねた。
「……契約書の確認をさせてください」
「もちろん。いいわよ。はい」
私は契約書を渡す。
ルネは契約書を受け取ると物凄い勢いで内容を確認していく。
「お嬢様」
「ん?どうかした?」
アスターが何を聞きたいのかわかっていてあえて知らないふりをする。
「一体どんな条件にしたんですか?」
「さっきも言ったけど大したことはないわ。994の条件はね」
「では残りの5つは違うと?」
アスターは返事を聞かなくても私の表情を見てどんな条件にしたのか大体わかった。
きっと残りの5つは悪魔のような契約内容になっていると。
「ええ、そうよ。残りはどうでもいいやつばっかよ」
「どんな契約をしたか聞いてもいいですか?」
「構わないわよ。そうね……」
私は994の中からどれを教えるか考える。
というか適当に書いたのでどんな内容にしたか忘れていたので思い出していた。
「決まったところでトイレをしろ、お腹空いているからといって草を食べるな、椅子にはちゃんと座る、とかそんな感じのことを書いたわね」
'え?それ完全に動物以下の扱いしてません?'
アスターは声にこそしなかったが、心の中では ルネに同情していた。
でもすぐに悪魔だから問題ないか、と思い直し弱いのが悪いと考えを改めた。
「そうですか。ですが、私が聞きたいのはそちらではなく残りの5つの方です」
「ああ、そっちが聞きたかったのね。ごめん、ごめん。勘違いしたわ」
笑って誤魔化す。
てっきり994の方が知りたいと思っていた。
私は軽く咳払いをしてから話し始める。
「一つ目は、人間を殺すことを禁じる。悪魔は基本契約者は殺せないけど、他の人間は殺せるから。ちょっとしたこで、人間を次から次に殺されると困るでしょう」
「確かにそうですね……」
アスターは私が悪魔の事に詳しいのに驚いたが、顔には一切出さずに平静を保った。
一体いつこれほどまでに悪魔のことに詳しくなったのか問いただしたかったが、聞いても本当のことを話してくれないわかっていたので開きかけた口を閉じる。
「二つ目は、私と領地民を敵から守ること。彼は私と契約し、一つ目の契約で人間を殺せない。ただ、彼の手下達は違う。もし、彼が本当に悪魔の王なら手下達に私達を殺させるのは簡単よ。だから、そうならないように守らせないとね」
アスターは私の言葉を聞きながら顔が強張っていった。
'まじで、悪魔そのものだな'
アスターは私が悪魔の王をこき使う姿が簡単に想像できてしまい頭が痛くなる。
これ以上は絶対に驚かないと決め、話しの続きに集中する。
「三つ目は、衣食住を与える代わりにそれ相応の働きをすること。これは言わなくてもわかるでしょう。例え契約関係でも、タダで与えることはできないわ。きっちり働いてもらわなければね。四つ目は、悪魔の王だとバレないよう姿を変えること。アイリーンと同じ理由よ。バレたら面倒だから」
妖精王と悪魔の王と契約したなどバレればいいように死ぬまで使われる。
王族や貴族の幸せのために死ぬまで働くなどごめんだ。
絶対に隠し通し私の幸せのためだけに使う。
誰にも私の幸せを邪魔させはしない。
「アスター。わかってると思うけど、私が妖精王と自称悪魔の王と契約したことを知ってるのはあなただけよ。内緒にしてくれるわよね」
「もちろんです。バレれば旦那様や奥様まで面倒ごとに巻き込まれる可能性がありますので」
私のためではなく、あくまでも二人のために黙っていることを決める。
理由はどうであれ黙っていてくれるならそれでいい。
「なら、いいわ」
私はニッコリと笑いかける。
「それで最後の条件はなんなんですか」
「それはね、私に絶対服従することよ」
「……!」
その言葉を聞いた瞬間、アスターは目を見開き口を開けて固まった。
暫くして我に返ったアスターは自身を落ち着かせてからこう言った。
「絶対服従を誓わせるなら、他の条件はいらないのでは?」
「そんなことないわ。私の口から命令するのと契約書に書かれてるのでは効力が全然違うわ。もちろん、大したことじゃない994の方はいらないけどね」
「なら、なぜ書いたのですか?」
いらないなら最初から書かなければいいのに。
そしたらあんなに時間を無駄にすることはなかった。
私の行動が理解できず、アスターはそう尋ねた。
「馬鹿ね。そんなの決まってるでじゃない。契約内容を確認させないためよ」
「……」
アスターとうとう凶悪犯みたいな顔になった私を死んだ魚のような目で見つめながらこう思っていた。
'私の任務はお嬢様の監視兼護衛のはずでは?なぜ凶悪犯が悪魔を騙していたぶるところを見ているんだ?'
私はアスターの顔が死んでいる事には気づいていたが、無視して話を続けた。
「あの悪魔は早く自由になることを望んでいたの。それなのに、契約書を作成するだけであれだけの時間がかかった。棺に入って契約内容を確認できない悪魔は私に読んでもらう必要があった。だけどあのとき、あの悪魔はすでに私のことをこう思っていたはず。『悪魔を痛ぶるイカれた人間だ』ってね。そんな人間が契約内容をすぐに教えるはずはない。時間をかけて自分を痛ぶるつもりだと思った。もちろん。私達も閉じ込められたから脱出しないといけない状況だった。悪魔もそのことはわかっていた。でも、ぶっちゃけ私達にはアイリーンがいるからどうにかなっと思うから、そこまでピンチではなかったから少しだけ余裕があった。でも向こうは違う。一分一秒が惜しい。早く自由になりたい」
私が推測でルネの考えを話すとアスターはそこまで聞いて、聞かなくても続きがわかった。
「そんな状況で冷静な判断はできない。私はそれを利用したのよ。こっちに有利な条件で契約するために、わざとどうでもいい条件まで書いてね」
そう。これは全て計算したこと。
上手くいく自信はあったが、まさかここまで上手くいくとは思わなかった。
これも主人公と妖精王が味方であるという事実が心に余裕をもたせ、こちらに有利な結果で契約を結べたのかもしれない。
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