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帰還
しおりを挟む「お前達大丈夫だったか?」
団員達の元に戻り見た限り大丈夫そうだったが、念のため確認する。
「はい。アスターさんの方こそ大丈夫でしたか?」
「ああ、こちらも問題はなかった」
魔法石が安く買えたこと以外は。
昔一度だけあの店に訪れたが青年とあった記憶はない。
それなのに何故あの青年が自分に対してあそこまで好意的だったのかはわからないが、今は考える時間もないので団に戻ってからゆっくり考えることにした。
「場所を移すぞ」
アスター達は建物の密集地帯の狭い隙間で身を隠していた。
こんなところで魔法石を発動し、もし近くに第五騎士団の団員がいたら戦闘になり被害が出る。
なるべく周りに何もないところで発動しなければならない。
発動し魔法石が作った空間を通りさえすれば一瞬で移動できるので見つかっても問題はない。
だが、通るまでの間に何かあっては困るので住民に被害が出ないようにしなければならない。
アスター達は人混みに紛れ距離を取りながら森に向かっていく。
何度か第五騎士団の団員とすれ違ったが誰もアスター達には気づかなかった。
隠していた馬をとりにいき森に入り魔法石を発動させようとしたその時、後ろから「いたぞ!殺せ!」という声が聞こえた。
アスター達が後ろを振り返るとレミリアが団員を引き連れ殺そうと向かってくる。
アスターは魔法石を発動させようと呪文を唱えるがこのままではレミリア達も通れてしまうので、全速力で逃げ距離をとらなければならない。
これ以上逃げ続ければ先に限界が来るのは自分達だと判断したアスターは「お前達、十秒後に魔法石を発動させる。空間が出てきたら飛び込め。いいな」と。
キース達は返事をし、心の中で十秒数える。
「(……八、九、十)」
今だ。
アスターが魔法石を発動させ前に投げると、空間が現れる。
アスター達は急いでその空間を通り第十二騎士団前の建物の裏側に出てきた。
アスターは全員が出てきたのを確認すると剣を抜き、空間が閉じるまで誰も出てこないことを祈り続けた。
アスター達の後ろから魔法石を投げたのを見ていたレミリアは直ぐに馬のスピードを上げ捕まえようとするが、後一歩のところで空間が閉じアスター達を逃してしまう。
「クソッ」
空間が完全に閉じ追跡が出来なくなる。
それに行き先は魔法石を発動したものが決められるのでどこに通じていたのかわからない。
「……レミリア様」
一人の騎士に声をかけられるとレミリアは黙れと圧をかける。
アスター達を逃したせいでワームのことを知られてしまう。
団長の耳に入れば自分のやっていたことがバレてしまい辞めさせられるかも知れない。
せっかく苦労して登り上がったのにワームのせいで全てを失うかもしれない。
こんなことになるならさっさとアスター達を殺せばよかったと後悔する。
「……もう大丈夫だな」
空間が閉じ漸くアスター達は安堵し体の力が抜け地面に座り込む。
ここ数日の疲れがドッと押し寄せてくる。
「あれ!?アスターさん達じゃないですか?いつ帰ってきたんですか」
団員の一人が裏口から出てくる。
「カーターか。悪いが人を呼んできてくれ」
「わかりました」
アスター達の顔がぐったりしていて今回の任務が大変だったのだと一目でわかった。
何人かは気を失っていた。
アスターの言ったように人を呼んで来た方がいいと思い、返信した後休憩中だった団員数人に声をかけ一緒にアスター達を部屋まで運ぶ。
「すまない。助かった。ありがとうな、お前達」
ベットの上に腰かけ、ぐっすり寝たいのを必死に我慢する。
「いえ、気にしないでください」
アスターにお礼を言われて嬉しい。
これ以上ここにいたらアスター達が休めないと思い「また何か用があれば呼んでください。俺達はこれで失礼します」と部屋から出て行こうとするがアスターに引き止められる。
「悪いが団長を呼んで来てくれないか」
今すぐワームのことを報告しないといけない。
今すぐレオンのところに行きたかったが流石に体力の限界で少し休まないといけず、呼んできてもらうことにした。
「わかりました」
そう返事すると今度こそカーター達は部屋から出ていきレオンを呼びにいく。
ただ、カーター達は知らなかった。
レオンは少し前に町に行ったことを。
「あれ?団長どこにいるんだ?」
いくら探してもレオンが見つからない。
建物の隅から隅まで探したというのにどこにもいない。
「まじでどこにいるんだ?」
カーターが本気で困り果てていると後ろから声をかけられる。
「カーター。さっきから誰を探しているんだ」
後ろを振り向くとそこにはユーリがいた。
「ユーリか。団長を探している。さっき、アスターさん達が帰ってきたから呼んでくるように頼まれたんだ」
「え、アスターさん達帰ってきたのか!?ああ~、報告があるから団長を探してるのか。でも、タイミングが悪かったな。団長達なら結構前に町に行ったぞ」
子供達の遊び場をどうするか町の人達に聞きに行った。
「そうだったのか。それで探しても見つからない訳か。すまん助かった。アスターさんに今出掛けていると報告してくるよ」
「ああ、そうした方がいい」
カーターはユーリと別れ直ぐにアスターにレオンは今町にいていつ帰ってくるかわからないと伝えにいく。
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