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ベネディクト 3
しおりを挟むレオンは少女に教えてもらった道を思い出し、建物の上を走りながら急いで森へと向かう。
ここがレオンの管轄のだったらどこに向かうのか予想はつくが、ここは第七騎士団の管轄。
どこに向かうのか検討もつかない。
急いでベネディクトを拐った男達を見つけないと助けられなくなる。
レオンは全力疾走で走る。
あと少しで森に着くというとき、地面にポツンと落ちている片方の靴を見つけた。
建物から飛び降りその靴を取る。
ここで拐われたのだ。
急いで森に入りベネディクトのところまで一直線で向かう。
運が良かったのは夜中雨が降っていたおかげで地面がぬかるんでいて男達の足跡が残っていたこと。
足跡からして五人は確実にいる。
森の中を十分近く走っていると少し先に男達が見え、少年がいるのも見えた。
その少年の片足が裸足で彼がベネディクトだとわかると走るスピードを更に速め男達に追いつく。
最初五人だと思っていたが途中から足跡が増えたのに気づき十人くらいかと思っていたが、実際は二十人近くいた。
「おい、誰かくるぞ」
一人の男がレオンに気づき叫ぶとベネディクトもレオンに気づき「助けて!」と叫ぶ。
格好からして騎士の人だとわかったから。
ベネディクトを担いでいた男は「黙れ!」と殴り「これ以上近づけばこいつを殺す!動くな!」とベネディクトの首に剣を突きつける。
レオンは男の一連の行動に殺意を抱き腰の剣を抜き電光石火のように一瞬で男に近づき片腕を切り落としベネディクトを奪った。
一瞬の出来事でレオン以外何が起きたのか理解できなかった。
斬られた男は自分の腕が斬られたことに気づくと「うわああらあああ、俺の腕があああ」と汚い声で叫び出す。
「もう大丈夫だ。心配ない。必ず君を家に連れて帰るから」
剣を地面に刺してからベネディクトの頭を撫でる。
ベネディクトはレオンの腕の中がとても温かく感じ安心して泣いてしまう。
レオンは大丈夫だと繰り返し呟きベネディクトの頭を撫で続ける。
「少し我慢してくれ。直ぐ終わるから」
男達が襲いかかろうとしているのに気づきベネディクトを抱え直し剣を取る。
「殺せ!」
腕を斬られた男が叫ぶと残りの男達は一斉にレオンに襲いかかる。
レオンは男達の攻撃を全て避け近くにいた数人を吹き飛ばし気絶させる。
次の攻撃は剣で受けた後、蹴り飛ばし気絶させる。
全員捕まえるため殺さず気絶させていく。
腕を切り落とされた男以外気絶させ終わると剣を鞘に戻し近づく。
男はレオンに暴言を吐いていたが気にせず近寄る。
男はレオンを殺そうと剣を振り下ろすが、それを素手で掴み叩き折る。
男は目を見開き折られた剣とレオンを交互に見る。
何か言おうと口を魚のように開いたり閉じたりしているが気にせず、男の顔面を殴り気絶させる。
「終わったな」
男達を縛りつけ逃げられないようにしてからベネディクトを家に連れて帰る。
途中で第七騎士団の団員にあったので事情を説明し、男達を捕まえてもらった。
レオンは助けた経緯を話し終えるとレイリンがいたからだと言いお礼なら彼女にと。
勿論レイリンにもお礼をするつもりだが、男達を倒したのも、ベネディクトを連れ戻してくれたのも紛れもなくレオンで一番恩返しをしないといけない相手だった。
話を聞いてその思いが強くなる。
「やはり、何かお礼をさせてください」
祖父が頭を下げると祖母も父親も母親も頭を下げお礼をさせて欲しいと頼みだす。
ここまでされると断りにくい。
彼らの気持ちもわかるからこれ以上無碍にするわけにもいかず「わかりました」と言う。
「本当ですか!?ありがとうございます。ありがとうございます」
祖父はレオンに何度もお礼を言う。
「何か欲しいのはありませんか。ここにあるもので気に入ったものが有ればおっしゃってください。どれでも差し上げますので」
ここにあるのは大陸でも上位に入るほどの品質を誇る魔法石しかない。
これだけ有ればレオンもどれか気にいるだろう、と祖父は思いレオンの隣に立ち一つ一つ魔法石の説明をしていく。
レオンは嫌な顔一つせず祖父の話を聞いていた。
「……それで、次はピアス型の魔法石になります。こちらは……」
レオンは祖父が必死にピアス型の魔法石のことを説明していたが、一切頭にに入ってこず美しい紅いピアス型魔法石を眺めていた。
「こちら気に入りましたか」
話している途中でレオンの反応がなくなりチラッと見ると、今までの魔法石を見る目と違い輝いていた。
レオンが気に入った魔法石は大した力はなく魔物を倒すことなどできない。
それにこの魔法石はこの国では初めて発見されたのでその特性をよく知らない。
ただ、隣国では色が美しいだけで何の能力が込められているのか未だに解明されていないらしい。
そのため、大したものではないと言われていた。
レオンにはよくわからない不良品ではなく、誰もが欲しがる最高の物をあげたかったがレオンはこれを気に入っていると表情を見てわかり気づいたら「よかったら付けてみてください」と言っていた。
「いえ、そんなことできません。これは立派な商品ですし、もし傷などがついたら大変ですから」
「これは商品ですが絶対買い手は出ないので大丈夫です」
「絶対?」
「はい。絶対です。これは魔法石だと言われていますが何の魔法もなく作動しないのでただのピアスなのです」
「(それは買い手がつかないな)」
祖父の言葉に納得する。
こんなに美しいのに誰にも身につけてもらえない何て可哀想過ぎる。
買うか。
そう思った瞬間勝手に口が動き「買います」と。
「そんなただで差し上げます。これはお礼なのですから」
「それは駄目です。これは商品なのできちんとお支払いさせてください」
どちらも一歩も引かず話が前に進まなかった。
「確かに商品ならお代は貰わないといけないですが、魔法石を扱う店で魔法が発動しないのを売るわけにはいかないので差し上げます。これは商品ではないのでお代はいただけません。私達は使わないので貰っていただけると有り難いのですが、どうでしょうか」
二人のやり取りが一向に終わりそうにないので祖母がそう言うと祖父はその手があったという顔をしてすぐ「誰も付けないので貰っていただけたら嬉しいです」と。
「わかりました。そういうことなら有り難く使わせてもらいます」
レオンがそう言うと祖父達はお礼ができたと喜んだ。
レオンは早速ピアスをつける。
「とてもよくお似合いです」
「ありがとうございます。これすごくいいです。しっくりくるというか、昔からずっと付けていたかのように馴染みます」
「それは良かったです。もし、この後まだお時間があるのなら……」
一緒食事でもしませんか、と尋ねようとしたが「団長~、どこにいますか、団長」と誰かを捜す声が聞こえてきて何事かと途中で話すのをやめた。
レオンは扉を開けて「皆ここだ」と大声で叫ぶ。
「すみません。仲間が捜しているみたいのでもう戻ります。ピアスありがとうございます。大事にします」
「あの、待ってください。せめてお名前をお伺いしても」
騎士なら名前さえ知っていれば会いにいけると思い名前を教えてほしいと頼む。
「これは失礼しました。俺はレオン・ハーデンベルギアと申します。それではこれで失礼します」
レオンは名を名乗ると仲間の元へと走っていく。
ベネディクト達はレオンの名を知り、彼があの伝説の平民でありながら団長になったという第十二騎士団団長レオン・ハーデンベルギアなのか、と。
「俺達はとんでもない人と知り合いになったのだな」
レオンは噂以上に格好いい人だとベネディクト達は思った。
そして、もしレオンやレオンの仲間達が困っていることがあったら何があっても力になろうと誓った。
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