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ワーム 2

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「君がワームを見たって話をしている子であっているか」

アスターは男性と別れ少年に近づき声をかける。

「……そうだけど、おじさん達誰?」

アスター達を不審な目で見る。

警戒心丸出しの少年。

アスター達は「おじさん」という言葉が胸に刺さりなんともいえない気持ちになる。

「俺達は第十二騎士団の騎士だ。俺はアスターと言う。君がワームを見たと聞いて話を聞きにきた。詳しく話をしてくれないか」

アスターは少年を怖がらせないよう目線を合わせて話しかける。

「第十二騎士団って、あのレオン団長がいる騎士団か!!嘘だろ。え、なにもしかしてレオン団長もここにきているのか!?」

アスター達がレオンと同じ騎士団だとわかると目を輝かせる。

少年はレオンはどこにいるのかと辺りを見渡す。

アスター達はレオンが好かれていることが嬉しくて自分のことのように喜ぶ。

「そうだ。俺達の団長はレオン団長だ」

騎士の一人が得意気な顔をしてそう言うと少年は更に喜びレオンに会いたいと言う。

アスターがここにレオンはいない、自分達だけだと伝えたらこれでもかというくらい落ち込み地面に座り込むアレンに申し訳なくなりごめんな、と謝罪する。

アスター達は顔を見合わせどうしたものかと困り果てた。

話を聞きたくてもこの様子では聞くことはできない、と。

なんとか少年から話を聞こうとしたが少年は魂が抜けたみたいに微動だにしなかった。

「仕方ないか」

アスターがまた明日話を聞くかと諦めかけたとき、一人の騎士が少年の耳元で「レオン団長に君のことを話すよ。だからワームのことを教えてくれ」と頼む。

アスター達は「あー、その手があったか」と。

すると少年の目が死んだ魚のような目から光を取り戻し輝きだす。

少年は咳払いをすると「しょうがないな~。そこまで言うなら話してやってもいいぞ」と嬉しそうにそう言う。

「俺の名前はアレンだ。ちゃんとレオン団長にちゃんと俺のこと話してくれよ」

とても勇敢で優秀な少年だったとも伝えてくれ、と。

アスター達はアレンが年相応の少年で可愛く見えつい笑ってしまう。

「わかった。団長に君のことを伝えると約束するよ」

アスターが約束するとアレンはその約束を信じワームのことを話し始める。

「俺がワームを見たのは今から三ヶ月前のことです……」


アレンは三ヶ月前、家族旅行で第五騎士団管轄の中で最も栄えているシュテルンの町に行った。

アレン達一家はシュテルンの観光名所をまわったり、美味しい物を食べたりと結構楽しんでいた。

シュテルンに来てから三日が過ぎここにいるのも最終日になったとき、アレンは父親に買ってもらった望遠鏡を片手に持ち山に登った。

家族とは別行動をし望遠鏡で遠くの景色を眺めその光景を忘れないよう目に焼き付けた。

太陽が真上を過ぎた頃、そろそろ降りて合流しようかと考えていたとき、ある山から大量の鳥達が飛んでいく姿が見え何があったのかと好奇心が抑えられず望遠鏡でその山を見る。

望遠鏡から見えたのは真っ暗な森の中だった。

今は昼を過ぎた頃。

空は雲一つない快晴なのに見える景色は不気味で、アレンは自分の心臓が物凄い速さで動いて危険信号を発信しているのに気づいた。

だが、アレンはその信号を無視し森の中を覗き続けた。

その森を覗き続けて一時間経過した頃、アレンは巨大な何かがそこにいることに気づいた。

正体を突き止めようと顔を動かさずその場でジーッと正体がわかるまで動かなかった。

「……あれは蛇なのか?」

蛇のような体に見えたが大きさが余りにも違いすぎる。

だが、大きさという一点だけを除けば体や移動の仕方が似ていた。

アレンはすぐにそれが魔物だとは気づかなかったが、理解した瞬間体中の震えが止まらなくなり急いでその場から逃げ出したくなった。

そんな時ふとレオンのことが頭に浮かんだ。

いつか自分もレオンみたいな人間になりたいと夢見ていた。

ここで逃げたら一生なれないと。

アレンは震える指先に何とか力を込め望遠鏡でその魔物の頭を探した。

魔物の正体を知って騎士団に教えれば手助けになると考え、紫の霧みたいなので森が覆われているが見失わないよう頭の方へと動かしていくと少しして大きな音が静寂な山の中で響く。

ゴトンッ。

アレンの手から望遠鏡が落ちる。

全身から力が抜け動けない。

今見た光景が信じられなかった。

アレンは震える口から何とか声を出し呟いた。

「……あれは…………ワームか?」

蛇のような体にドラゴンの頭をした魔物などワームしかあり得ない。

父親の魔物図鑑に描かれていたワームとそっくりだった。

早くこの場から逃げなければ。

そう思うのに足に根が生えたみたいに動けない。

アレンは気づいていた。

ワームが自分の存在に気づいていることを。

早く逃げなければ殺されると命の危険を感じていたが、あまりの恐怖に声を上げることもできずにいた。

周りには誰もいない。

このままでは死ぬ。

恐怖と焦りでパニックに陥り余計に体が動かなくなる。

もう駄目だと諦めかけたとき烏が鳴いた。

その泣き声で金縛りみたいになっていたアレンの体が動くようになり急いで山を降りていく。
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