春夏秋冬〜神に愛された男〜

アリス

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ゼイン

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翌朝、ゼンが目を覚ますと知らない天井が目に入る。

パッと目を覚まし起き上がる。

ここは何処なのか、どうしてここにいるのか、こうなったら経緯を思い出そうとしたが頭が割れるくらい痛いたく思いだせそうにない。

頭が痛いとか病気になったことがないゼンは初めての体験に驚き上手く対処ができず頭を押さえ痛みに耐える。

「大丈夫か、水は飲めるか」

「あぁ、ありがとう」

差し出されたコップに入った水を受け取り全部飲み干すゼン。

「助かった。ありがとう」

「そうか、なら良かった。まだ寝てた方がいい。朝食ができたらまた呼びにくる。まだ、時間がかかるからゆっくりしてろ」

上体を起こしていたゼンを横にして部屋を出て行くレオン。
 
横になって目を閉じていたが急にパッと目を見開き「えっ、誰?」とレオンのことを完全に忘れていた。

流石にまずいと思い昨日自分に何があったのか神の力を使って思い出そうとする。




「ゼイン様、おはようございます。朝食の準備が整いました。用意しても宜しいでしょうか」

ベルが部屋に入ってきてくる。

「あぁ、頼む」

昨日の夜に地上へと降り立ち、まだ慣れてない身体を起こして身支度をするゼイン。

「かしこまりました」

ゼインの許可がおり、夏の妖精達が次々に部屋へと入ってきて朝食の準備をする。準備が終わると「何かございましたらお呼びください」そう言って皆と一緒に部屋から出て行く。
 
用意された朝食をいつものように一人で食べる。地上の食事は天界とは全く違う。

天界には無い食材もあり初めて食べた時は驚いたが何千年も繰り返していたら、いつの間にか慣れていた。

今では地上での食事を楽しみにしていた。

「ベル」

食事が終わりベルを呼ぶ。

「はい、ゼイン様」

ベルが入った後妖精達も部屋へと入り片付けをしていく。

「本日はどうされますか」

「町へ行く。服を用意してくれ」

「かしこまりました」

ベルはゼインの言葉に心底驚いたが顔にはださず、すぐに用意しますと言って部屋から出て行く。

「四百年ぶりだな」

嬉しさのあまり泣きそうになるベル。

ゼインが人間達に関わることをやめて約四百年。

城で過ごすようになった期間にようやく終わりがきたのだと心の底から嬉しく思うベル。 

何がゼインを突き動かしたのか気になったがが、それは自分が知る必要のないことだと判断し蓋をする。
 
感極まって少し目に溜まった涙を拭ってから、二回手を叩くベル。

「お呼びでしょうか、ベル様」

美しい三名の少女達がベルの前に音もなく現れる。

「ゼイン様が人間の町に行かれる。服を持ってきてくれ」

「かしこまりました、ベル様」

ゼインを人間らしくするための準備に取り掛かるため、返事をした後その場を去る少女達。



「ゼイン様、こちらの中からお選び下さい」

部屋の中に運ばれた衣類は全部百種類以上ある。

「多くないか」

若干引き気味に言うゼイン。

「これでもかなり絞ったのですが、申し訳ありません」

ベルもまさかここまで多くなるとは思っておらず少女達の張り切り具合に驚いていた。

「いや、こちらこそすまない。だが、こうも多いと悩むな」

自分のために用意してくれたので一つ一つ見てから選んでいこうと決める。
 
量が量なだけに結構時間がかかった。朝からはじめたのに、気づくと太陽が真上を通り過ぎていた。

「おかしくないか」

ようやく決まった服を皆に見せて感想を聞く。

「とてもよくお似合いです」

ベルの言葉に続いて一斉に褒めだす妖精達。

なら大丈夫か、と思い町へと行こうとするゼインに「お待ち下さい」と止めるベル。

「念のために髪と瞳の色を変えた方がよろしいかと」

夏の王ゼインの容姿は有名な為その姿でいくのは危険だと。

万が一の為にも変えていった方がいいと助言する。

「確かにそうだな」

金に近い茶髪を黒に近い茶髪に、白に近い緑の瞳を黒に近い緑に変える。

腰まであった長い髪は肩より少し下の長さへと変える。

背の高さも少しだけ低くする。
 
変えた容姿を鏡の前で確認する。

ベルに「この姿で夏の王ゼインに見えるか」と聞くと「いえ、見えません」と答えた。

今度こそ大丈夫ただ思い、フードのついたローブを羽織って人間の町へと飛び立つ。

「いってらっしゃいませ、ゼイン様」

飛び立ったゼインを見送るベルと妖精達。
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