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騎士団長 2

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「ユエル団長」

団員達の顔が一斉に青ざめる。

もし、ユエルに先程までの出来事を見られていたら自分達の将来が終わってしまうと。


十二騎士団最強の団長ユエル・ルドベキア。


その腕前から王族か王宮を守る団の団長に任命されるはずだったが本人が嫌がり、他国と戦争になったとき真っ先に対応する六、七騎士団の第七の団長に就任した。

本来なら任命を拒否するなど有り得ない。

そんなことをしたら死刑は免れない。

だが、王はそれを許した。

何故許したのかは誰も知らないが、そのことでユエルの言葉はある意味この国の王よりも強いのではと噂されてた。

「おい、お前。さっき何故ジャン団長に殴られそうになっていた」

誰も質問に答えなかったので痺れを切らしたのかジャンに殴られそうになった団員に詰め寄る。

「その、よくわかりません」 

ユエルの登場に団員達は見られていたのかと一瞬焦ったが、話していた内容までは聞かれていなかったと安堵する。

「わからないのに殴られそうになっと」

「はい」

理由など分かっているだろうにわからない振りをする団員。

「いきなりジャン団長が」「我々は何も」といかにも自分達は被害者でジャンが加害者になるようにユエルに言う。

これには流石のレオンも我慢の限界で文句を言おうとしたがユエルがそれを阻むようにして前に立つ。

「そうか、それは怖かったろう」

ユエルが自分達の味方になったと思った団員達は「騎士なのでこれくらい大丈夫です」と本当は怖かったけど何ともないですと装う。

あまりの図太さに言葉を失うレオンとジャン。

これが貴族。

これが騎士。

こんな奴等と同じだとは虫唾が走る騎士など辞めてやろうかと。

そう思うが団員や町の人達のことを考えるとそんなことは出来るわけもなく、ただ耐えるしかできない二人。

二人はユエルは何も知らないから仕方ないと頭ではそう思うも、憧れの人に勘違いされるのは悔しかった。

「ほぉ、それは素晴らしいな」

ユエルの言葉に「ありがとうございます」と嬉しそうにいう団員。

二人が何も言わないのをいいことに、「団長失格、騎士になる資格もない」と言われる。

もういい、殴り殺すと決意したとき「ジャン」とユエルに呼ばれた。

「ジャン団長、何故貴方はこの者を殴ろうとしたのだ」

その言葉は咎めているのでなくお前の言葉から本当のことを聞きたいと言っているように聞こえた。

レオンをそう感じたのか困惑した顔を浮かべる。

「確かに私は彼に殴りかかろうとしました。それは許されないことだとわかっています。でも、どうしても許さなかったのです。騎士を友を侮辱されて。罰は甘んじて受け入れるつもりです」

せっかく訪れた弁明の機会。

ユエルならきっとわかってくれる。

正しい判断をしてくれると信じそう言った。

「そうか」

ユエルはジャンの言葉に嘘偽りはない確信し笑顔になる。

その言葉を聞けてよかったと。

「こうジャン団長は言っているが、今ならまだ間に合うぞ」

意味深なことを言うユエル。

「嘘です。そんなこと言ってません。騎士の名に誓って本当です」

私も、と次々に誓いを宣言する団員達。そんな彼らを見て「(終わったなこいつら)」と思うレオンとジャン。

こんな奴等が騎士団員なんてこの国は腐っていると怒りを露わにする二人。
 
今ここで本当のことを言っておけば良かったと後悔することになるとは誰も思ってもいなかった。
 
団員達が何故こんな馬鹿げたことをしたかというと、貴族だったからだ。

この国を守っているから騎士の誓いをすれば毎回王は騎士を守った。

そのせいで例え平民が無実でも有罪となり牢へと入れられた。

それを知っていたからこんなことをしたのだろう。

「そうか、騎士の誓いか。なるほど。それなら俺もその覚悟に応えないとな」

ユエルの言葉に勝ち誇った顔をする団員達。

「ありがとうございます。ユエル団長に信じていただけて本当に助かります」

一人の団員がユエルに感謝を述べるが言われた本人は「何か勘違いしてないか」と。

「勘違いですか」

「あぁ、いつ俺がお前達を助けると言った」

「えっ」

その言葉に団員達が困惑する。

「どういうことですか。我々より彼等を信じると」

レオンとジャンを睨みつける。

「信じるってのは少し違うな。君達は少し勘違いをしている」

この場にいる全員がユエルの言葉に困惑した。

「何で俺が何も見てないと思ったんだ。ここまで馬鹿にされたのは初めてだ」

ユエルが殺気を放ち団員達の顔が一気に青ざめる。

謝罪をしようとするが言葉を発することができない。

団員達は頭が真っ白になりユエルが話しだすまで何もできなかった。

「俺がいつから話を聞いていたか気になるよな。最初からだと言ったらどうする」

これにはレオンとジャンも驚く。

「なら、どうして最初から止めに入らなかったと今思ったろ。最初は俺が止めに入る必要はないと思ったんだだが、あまりにも酷いから止めに入ることにしたんだ」

面倒をかけやがって、と団員達を睨みつけるユエル。

さっきまでは貴族だから大丈夫だと高を括っていた団員達もユエルの態度をみて無理だと悟る。

「お前達は謝罪もできないのか」

呆れたように言い放つユエル。

「申し訳ありません、ユエル団長」

団員達が一斉に跪く。はぁーと深いため息をつくユエル。

「謝罪をする相手を間違っていないか」

その相手が誰を指すのかわかり苦虫を噛み潰したような顔をする。

誰も二人に謝罪をしようとしない。

「もういい、この件は王とお前達の団長に報告する」

「お待ち下さい。ユエル団長」

この場を去るユエルを追いかける団員達。

「なんだったんだ今の」

「さぁ」

ユエルが来てから当事者なのに蚊帳の外に置かれ勝手に解決。

あっという間に事が解決したので一瞬何があったのかわからなくなり二人はその場に立ち尽くす。

「……とりあえず、ユエル団長にお礼を言いに行くか」

「だな」

二人でユエル団長の後を追う。
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