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騎士団長

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「ゼリョルデ国十二騎士団第十一騎士団団長レオン・ハーデンベルギア様が到着された。門を開けろ」

王宮の門番が馬車をみて十一騎士団のものとわかり門を開けるよう指示する。

五メートル以上ある門がゆっくりと開いていく。

馬車が動き出し王宮の中へと進んでいく。

「お待ちしておりました。ハーデンベルギア様」

王宮専属執事筆頭のジンがレオンを出迎える。

「場所はいつもと同じ所でございます」

「ありがとう」

年に一度十二騎士団団長が集まって会議をする。

その部屋に向かうため長い道のりを歩くレオン。

会議を行う部屋は王宮の中でも結構いい部屋なため扉にも金の細工が施されている。

扉を開けて中に入ると既に九人の団長が椅子に座っていた。

「レオン」

第十二騎士団団長ジャンが手を挙げて名を呼ぶ。

「ジャン、久しぶりだな。元気にしてたか」

あぁ、と返事をするジャンと最後にあった日から半年ぶりに会う。
 
出会ってからまだ五年しか経っていないが二人は良く気があった。

年は四つ違い出身も好みも違ったが何故か馬が合い仲良くなるのに時間はかからなかった。

今では本当の兄弟みたいに仲が良い。
 
お互い平民出身で平民の騎士団を率いているという共通点もあったから団同士でも仲が良い。

平民騎士団だが貴族達よりも民に頼りにされ好かれている。

特に団長の二人は実力でその座を掴んだ。腕前は相当なもの。

平民達の希望として他国からも尊敬されている。
 
だけど、それをよく思わない他の十騎士団の内九騎士団からは好かれていなかった。

騎士団に入れるのは貴族だけのもの。

生まれも育ちも高貴な身分の者が務められるという誇り。

それを変えた二人は騎士団員達から王宮に来るたび嫌がらせを受けていた。
 
団員が他の騎士団団長に嫌がらせをしているのを団長達は知っているはずなのに知らない振りを決め込んだ。

団長達は表だって何かをする事はなかったが、レオンとジャン二人を嫌っているのは明らかだった。

それでも、二人が何も言わなかったのは大したことじゃないし自分達が我慢すればいいと考えたから。

それに、もしこのことが団員達に知られたら他の騎士団に殴り込んで相手を殺してしまうかもしれないと思ったからでもある。
 
会議が始まるまでジャンと話していると残りの二人が時間より少し遅れて部屋に入って来た。

会議はいつもと大して変わらず、一年間の報告と隣国同士の戦争について話し合いをした。

 

今回の会議は議題が多く一歩間違えれば戦争に発展するのもあり、いつもより長引いたため疲れ果てたレオンが机に倒れ込む。

レオンは頭を使うのはあまり得意ではなかった。

団長であるが故に使わないといけなかったが出来ればやりたくはなかった。

「大丈夫か、レオン」

「うーん、何とか」

「今回はいつもの三倍くらい濃い内容だったからな」

先程まで行われた会議を思い出す。
 
普段は頼れる団長のレオンもジャンの前では少し甘えてしまう。

心を許しているのもあるがジャンの性格がそうさせているのだろう。

「そろそろ行くか」

「あぁ、待たせてすまない。ありがとう」

レオンの頭を髪がボサボサになるくらい撫でまわす。

「(可愛い奴め)」

心の中で呟くジャン。

部屋から出て馬車の所まで向かう。

広間までくると前から王族に仕える第一、ニ騎士団員達が前から近づいてくる。

「おやおや、これはこれは平民団長のお二人ではありませんか。こんな所で何を」

一人の団員が二人に話しかけると周りの団員達は馬鹿にしたように笑う。

「今日は年に一度ある団長会議の日だ」

ジャンがそう答えると団員達は鼻で笑いクスクスと笑い始める。

「あぁ、お二人も呼ばれているんですね」

「それはどういう意味だ」

「いえ、特に意味はありませんよ」

別の団員がお前達を団長とは認めないと遠回しに言う。

これ以上団員達を相手にしてもいいことは何もないと呆れたようにこの場を離れようとする二人に苛立った一人の団員が「お前達ってやっぱりそういう関係なのか」と失礼なことを言う。

「おい、今何て言った」

殺気立ったジャンがその団員に詰め寄る。

 この時代ゼリョルデ国では同性同士の関係は忌み嫌われていたた。

神の子は清く美しい存在でなくてはならないと。

異性の関係こそ神が求めているもの。

それを破るものは悪魔の子と。

そのため、同性同士の関係は神への冒涜であると考えられていた。

もし、同性を好きになってしまった者は人としての扱いを二度と受けれなくなってしまう。

ところが、レオンとジャンはそれに意義を唱えた。

人が人を好きになるのは素晴らしいこと。

我らの神はきっと祝福してくれる。

だから、そういう考えは捨てましょうと。

希望の団長二人が声を上げて同性を好きになった人達を守る姿は最初こそ二人も「悪魔の子」「悪魔の使い」だと言われていたが、しだいに二人の姿に心を打たれ始める人達が少しずつ増えていった。

それでも、この国のほとんどの人達その中でも貴族達はまだ同性同士の関係を忌み嫌っている。

そんな人達から二人は度々そういう関係では無いかと疑われていた。

「やっているのかって言ったんだ」

一斉に笑いだす団員達。

その言葉を聞いた瞬間ジャンが一人の団員に殴りかかろうとする。

慌てて止めに入るレオン。

「ジャン、落ち着け」

「でも…」

レオンの顔を見て「すまない」と悔しそうな顔でそう呟き団員から手を離す。

結局何もできない二人に気分を良くした団員達がわざと肩を押したり足を軽く蹴ったりする。

(自分より上の騎士に肩を押したり殴ったり蹴ったりする行為は、お前は自分より下という騎士にとって不名誉なこと)

二人はただ黙ってその行為を受け入れた。

自分達だけが我慢すれば団の皆んなも町の人達も守ることができる、と。

暫くそうしていると足音が近づいてくるのが聞こえた。

「一体何事だこれは」

声のした方に顔を向けると第七騎士団団長ユエルがいた。
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