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逸話 2
しおりを挟む二つ目は、18歳のときだ。
あと少しで学校を卒業できるというときに、たまたま都市部に遊びにきていたら、魔法の臣下の1人が部下を引き連れ襲撃に来た。
その日は皇太子殿下の誕生日を祝う日で各国のお偉い方が訪れていたときだった。
王宮では他国の王族や貴族が大勢いた。
街には皇太子殿下を祝うため多くのものが祭りを楽しんでいた。
皇太子は気高く慈愛に溢れ、民からとても愛されている人だった。
もし魔族たちが襲撃したのが皇太子の誕生日を祝う日でなければ、都市部に大勢の人が集まることはなかっただろう。
最悪なことに皇太子の人柄の良さが結果的に大勢の命を危険に晒してしまった。
魔族たちは容赦なく人々を襲いはじめる。
都市部はあっという間に楽しさと笑い声から血と断末魔に変わった。
もう駄目だ。
全員死ぬのだ。
そう思ったとき、突風が吹いた。
あまりにも強すぎて目を開けられなかった。
突風がやみ、ようやく目を開けれると、剣をもった青年が街の人たちを魔族から守るように立っていた。
魔族たちは英雄気取りのその青年が気に食わず襲いかかるが逆に返り討ちにあった。
魔王の臣下の一人は青年の強さに高揚し、自ら戦うことにした。
生き残っている部下に手出しするなと命令してから、青年に三つの問いを投げかけた。
「貴様にとって戦いとは?」
「何故弱者を守る?」
「こちら側にこないか?」
いつもなら人間に問いかけるなどしないが、初めて自分とまともに戦える人間に出会い嬉しさのあまり気づけばそう言っていた。
恐ろしい外見とは異なり無邪気に青年に問いかける姿は奇妙だった。
青年は魔王の臣下の問いに素直に答えた。
だが、どの答えも臣下の望んだものとは違った。
最初の問いに青年は「美人と結婚するため」と真剣な顔つきで答えた。
次の問いには「モテるから」と、最後の問いは「不細工になるのは嫌だから遠慮します」と遠回しに魔族は不細工だと言った。
辺りは物音一つ聞こえないほど静まり返っていたが、青年の答えを聞いた瞬間、風の音すら聞こえないほど静まり返った。
街の人たちは救世主がアホな回答をするわけないと、今のはきっと聞き間違えだと無理矢理記憶を改ざんし、後世に嘘の答えを教えてしまう。
臣下は自身が認めた人間がこんなアホな人間だと認めたくなく、怒りのまま青年に攻撃をしかける。
戦いは凄まじいものだった。
魔族は人間より魔法が得意で一対一の戦いなら余程の想定外がない限り勝つ。
魔王の臣下なら勝つのは当たり前だ。
だが青年の剣捌きは臣下の攻撃を全て防ぎ、街の人たちも守り、更に攻撃し傷をつけた。
あり得ないことが起きていた。
二人の戦いは空がオレンジ色に変わり、太陽が落ちきる前に終わりを迎えた。
青年が魔族の心臓を剣で貫き、少しずつ魔族の体が消えていく。
魔族が完全に消えるとドッと周囲が湧き上がった。
青年は喜ぶ人々の呼びかけを無視して逃げ出そうとする魔族を全て倒した。
ようやく終わったと一息つこうとしたそのとき、少し離れたところの建物が崩壊した。
近くには人がたくさんいた。
慌てて逃げるも一人の男の子は逃げる人々にぶつかり転んでしまい逃げ遅れてしまう。
男の子も周囲の人々も全員死んだと思った。
ドォーーンッ!
建物が壊れ地面に落ちた大きな音が響く。
砂埃が舞い男の子がどうなったのか誰もわからない。
少しして砂埃が消え近くにいた人たちが恐る恐る近づくと少し離れたところに男の子がポツンと立っていた。
一体どうやって助かったんだ?
一人の男性が尋ねると男の子は青年が助けてくれたと笑顔で答えた。
全員男の子の答えを聞いて信じられなかった。
青年がいた場所は男の子がいた場所から500メートル離れていた。
あの距離を一瞬で移動するなど人間にできるのか?と思うもすぐに彼ならできるだろうと全員が思った。
魔王の臣下を倒したのだから。
青年は二つの偉業を成し遂げ、学校を卒業し仲間を引き連れ旅立ったとき誰もが彼らに期待した。
魔王を倒せるのは彼らしかいないと。
7年後、魔王討伐した勇者の名前を聞くまでは!
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