世界最強ハンターは日本の女子高生!?

アリス

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雅也の言葉に奏雨と晴人は桃莉の方を見る。

雅也たちは2人の視線で、さっきのは彼女の指示だと知る。

本当にこの子が?という目で桃莉見るが、彼らの目を見る限り嘘ではないとわかる。

自分たちではゲームにクリアする作戦を思いつくことができないため、桃莉の言葉を待つ。

「指示って、先輩たちは私の言葉を疑わず素直に従うってことですか?」

桃莉は指示は出さずに質問する。

「ああ。そうだ」

雅也はきっぱりと答える。

他の者たちを同じ気持ちなのか、真っ直ぐ目を見てくる。

「そうですか。なら、一ついい作戦があります。私たちだけでは無理なので諦めていましたが……」

「それはどんな作戦だ!?」

やはりあるのか、と雅也は期待した顔して尋ねる。

「その前に、先輩たちに聞きたいことがあります。先輩たちはどこまで覚悟ができていますか?」

「……それはどういう意味だ?」

桃莉の質問の意図がわからず全員が首を傾げる。

「そのままの意味ですよ。覚悟ができているのかの確認です。今から戦うのはさっきのモンスターだけでなく、このふざけたゲームが始まる前まで話していた学友たちです。殺す覚悟はできていますか?」

「……ああ。できている」

柚月は桃莉の目から光がなくなり、その目を見た瞬間逸らしそうになるが、なんとか耐えしっかりと目を見つめ返す。

「なら、いいです。その言葉を信じます。絶対に迷わないでくださいね。迷えば死ぬのは自分かそれとも今隣にいる誰かになるかもしれないので」

「ああ。わかっている」

雅也が皆を代表して返事をする。

「なら、作戦を説明しましょうと言いたいところですがその前に時間がないので、まずは武器集めをしてもらっていいですか?」

「君は?」

「私は彼らを兵士にする役目があるので」

体育倉庫で先輩たちと話している時から、体育館から聞こえる声がうるさかったが、今は乱闘でもするのではと思うほど空気がピリついている。

このまま放っておけばセカンドクエストが始まる前に何人か死ぬかもしれない。

そんな危険な状態だ。

「兵士にするってどうやって?」

野球部の栗田俊太(くりたしゅんた)が何いってんだ、みたいな顔する。

「説明する時間はありません。もう、残り時間が25分しかありません。急いで集めてください。あ、そうだ。野球部のバットとボールは全部持ってきてください。必要なので」

「わかった」

バットはわかるがボールは何に使うんだ、と聞きたかったがそんな時間はないため急いで武器集めに取り掛かる。

「それで桃莉。これからどうするつもりだ?本当に兵士にできるのか?」

奏雨は先輩たちが武器集めでいなくなると本当に大丈夫なのかと聞いてくる。

「もちろん。兵士にするわ。今からやろうとする作戦は1人でも多くの力が必要なんだから。意地でも兵士にしてやる」

桃莉はそう言うと体育倉庫から出ていき壇上へと向かっていく。

今現在、桃莉たちと運動部の3年生以外の生徒は恐怖に支配され戦うことなどできない状態だ。

泣くもの、物や人に怒りをぶつけるもの、お互いに慰め合いなんとか生きようとするもの、誰かに助けてもらおうとするもの。

反応はさまざまだが、全員が自分の力でモンスターを倒そうと考えているものはいなかった。

時間がどんどん0に近づいていくと皆の精神が少しずつ壊れていく。

桃莉が壇上に登るため階段に足をかけたその時、誰かが「もういや!なんでこんなことになったのよ!」と叫んだ。

それを皮切りに皆が今思っていることをぶちまけていく。

そんなことをしても意味はない、このままじゃ死ぬとわかっていても誰もやめようとはしなかった。

諦めというより、誰かがなんとかしてくれると思っているからだ。

ファーストクエストがそうだったから、次のクエストもさっき動いたものがなんとかしてくれるはずだと少なからず期待していた。

さっきも何もせず助かったんだから、今回もきっと大丈夫だろうと、なんの確証もないのにそう思っていた。

それでも中にはやっぱり戦った方がいいのではと言う者もいたが、それは本心ではなくそうするしか助からないから言っただけ。

1人だと確実に死ぬからみんなで戦えば生き残る確率が上がると思って。

だが、誰もその声に賛同するものはいない。

死ぬたくないから。

でもそれ以上についさっきまで、話していた友達を殺すことに抵抗があった。

だから、やりたくなかった。

例えモンスターになったとしてもほんの少し前まで人間だったのだ。

人殺しになどなりたくはない。

自分の手を汚したくなかったから誰一人動こうとしなかった。


「ああ。聞こえてますか?」

桃莉はマイクを使って体育館にいる全員に聞こえるよう話しかける。

一斉に視線が集まり、桃莉はうんざりしながら作戦のために話しを続ける。

「聞こえてそうなのでこのまま話します。皆さん。さっきの音楽を流したのは私たちです。今からセカンドクエストで全員が助かることができる作戦を話します」

桃莉がそう言うと全員の目の色が一瞬で変わった。

当然だ。

全員が助かる方法があるなら、それに賭けたいと思い、皆が彼女の言葉に耳を傾ける。

誰も野次をとばさず、次の言葉を待つのはさっきの音楽をやったのが自分たちだと言ったからだ。

それを言わなかったら一部の人間は腹を立て、作戦を伝えるどころか言い合いになっていただろう。

そのせいで時間が過ぎ最悪な結果になっていた可能性もある。

それをわかった上で桃莉は自分たちがやったと言ったのだ。

「その前に、一つだけ先に言っておきます。今から話す作戦は皆さんの協力が必要不可欠です。全員で力を合わせなければ最悪全滅もあり得るでしょう。だから、そのつもりで私の話を聞いてください」

桃莉のあまりにも真剣な顔つきに全員黙って作戦を聞く。

全て聞き終わると、大半がざわつき始める。

一部のものは「確かにこの作戦なら全員が助かる可能性がある」と納得する。

だが、どうしても納得できない者たちもいるわけでその者の1人が桃莉に向かってこう叫んだ。

「あなたは私に桜(さくら)を!友達を殺せっていってるの!」

「はい。そうです」

桃莉は淡々と答える。

あまりにも淡々と答えるので、あまりにも冷たすぎないかと憤る。

「あなたそれでも人なの!」

女子生徒は涙を流しながら桃莉をキッと睨む。

「では、あなたは友達を人殺しにしたいのですか?」

「……!」

桃莉の問いかけに叫んだ女子生徒を含む全員が視線を下にさげ何も言えず黙り込む。

友達を人殺しにしたくはない。

でも、自分の手も汚したくない。

そう心の底で思っていたのを見透かされた気がした。

「怖いのはわかります」

桃莉はそっとマイクを下にさげ話しを続ける。

「でも、誰かがやらないといけません。誰かがやるなら自分じゃなくてもいいと思っている人もいるでしょう。でも、本当にそれでいいんですか?」

少しずつ顔を上げる生徒や先生たちを見て、あと少しだなと思う。

「考えてください。もし、自分が死んだ者たちと逆の立場だったらと。モンスターがいきなり現れ、訳のわからないうちに殺されたのに、その後も勝手に体を使われ、人殺しの化け物にされるなんて耐えられますか?私は無理です。きっと、耐えられず泣き叫ぶでしょう。『殺してくれ!誰でもいいから殺してくれ!』と」

桃莉の言葉を聞いて自分がもし逆だったらと想像し、ほとんどのものが顔を歪め現実逃避しようと顔を背ける。

一部のものは覚悟を決めたのか、さっきまでの顔つきとは変わっていた。

'よし。彼らは大丈夫だな。あとは、残りをどうやって兵士にするかだな'

桃莉はセカンドクエストまで残り時間があと17分なのを確認する。

焦っては駄目だ。

こういう時こそ慎重に進めなければ、と自分を落ち着かせてから続きを話す。
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