世界最強ハンターは日本の女子高生!?

アリス

文字の大きさ
上 下
5 / 7

ファーストクエストクリア

しおりを挟む

「残りあと10分か」

奏雨が時間を確認する。

「……10分」

桃莉は奏雨の言葉で目を開け立ち上がる。

急に目を開けたせいで眩しくて顔を歪めながら屋上を見る。

「まだ、結構残ってるわね」

「だな。それに、地面がモンスターの死体でクッションになったからか、何体か死んでないのもいる」

奏雨はゆっくりと起き上がり、また屋上に向かうモンスターを冷めた瞳で眺める。

「まぁ、それは仕方ないわね。さすがにアレだけで全て倒せるとは思ってないし。少し残るのは想定内だよ」

'この人たちはいったい何者なんだ……?'

晴人は2人の会話を聞いて本当に生徒なのかと疑いたくなる。

いきなりモンスターが現れ、目の前で人が死んでいくのに、なぜ落ち着いていられるのか信じられなかった。

「あと、5分か。これなら、もう誰も死ぬことはないだろうな。大人しくしてればいいだけなんだし」

「ええ。そうね」

奏雨の言葉にそう返事したそのとき、音楽よりも大きな声で誰かが悲鳴をあげた。

嘘でしょう?

桃莉がそう思ったのと同時に下にいたモンスターたちが一斉に向きを変え悲鳴の方へと向かう。

「おい、おい、おい。まじかよ。いったいどこの馬鹿が悲鳴なんて出しやがった!黙ってさえいれば助かるっつーのに!」

奏雨は髪をグシャと掴む。

「本当にその通りね。馬鹿な女ね」

桃莉は声から女だろうと予想する。

「それより、あんたたちバットを持ちなさい」

グラウンドの真ん中に来る前になぜか落ちていたバットを拝借しておいた。

「……?」

晴人は言っている意味が分からず首を傾げる。

「最悪だわ。よりにもよってこっちに近づいてきてるわ。あと少しで助かるっていうのに、どこの馬鹿よ」

桃莉が言った通り、声がだんだんと近づいてくる。

「牡丹先輩。どうするつもりですか?まさか、戦うつもりですか?逃げた方が……?」

「逃げたところで意味ないわ。さっきの悲鳴で状況が変わったわ。今、外にいるモンスターは悲鳴のするところに向かってる。つまり、私たちが作ったアレは意味が無くなったわ」

屋上から落ちてくるモンスターで助かった者たちは上に上がらず、悲鳴のする方へと向かっている。

悲鳴のせいで上に向かう理由がなくなったからだ。

「心配しなくていいよ。さっき言ったじゃん。ここが1番安全な場所だって。まぁ、万が一の場合は戦うしかないけどさ」

「戦うって……」

あの数のモンスターとなんて死ぬも同然だ、と最後まで言えず黙り込む。

「1年。腹を括りな。これは最初のゲーム。あと、3つもある。それも今より難易度が高いゲームが。あの程度にも勝てなきゃ、私たちは生き残れないよ」

とは言っても戦うのは最終手段。

できれば、早く終わって欲しいと時間を確認すると残り2分をきっていた。

これなら大丈夫かと安心したそのとき、女子生徒が叫びながらこっちに向かって走ってくるのが見えた。

'まじかよ。最悪すぎる'

桃莉は女子生徒の後ろを追ってくるモンスターの数と反対側から叫び声に反応して近づいてくるモンスターを見てげんなりする。

「2人とも移動するよ。さすがにあの数を3人で倒すのは無理」

「え、ちょ、せんぱ、いや、はや」

戦うんじゃないのかと聞こうと隣を見たが、もうそこに2人はいなくて慌てて後ろを追いかける。

「先輩。助けないんですか?」

晴人は近くまでくると尋ねる。

「無理。あの数相手にしたら私たちも死ぬわ」

「でも……」

晴人はチラッと後ろを見ると女子生徒は大声で助けを求めている。

「お願い助けて!死にたくないの!」

女子生徒の叫びに「それはこっちもだ」と  は心の中で言い返す。

桃莉からしたら他の人に頼めよと思う。

命懸けでモンスターを倒すために行動したのに、お礼を言われるどころか泣いてまだ助けろと要求されるのは、はっきり言っていい迷惑だ。

桃莉はそのまま無視して逃げようとしたそのとき、昔の記憶を思い出した。

彼女が7歳の頃、両親と遊園地に遊びに行ったときの母親に言われた言葉を。

「桃莉。私の愛しい子。愛してるわ」


桃莉は走りながら、嫌な記憶を思い出しチッと舌打ちする。

自分にとってはどうでもいい存在でも誰かにとっては大切な存在。

「おい。あんた。そいつらは音に反応するんだ。声出すな。ゆっくり動け」

見捨てるつもりだったが、母親の最後の言葉を思い出し助けることにした。

桃莉が大声で指示したせいで、何体かが方向転換して追ってくる。

「は?ちょ、何言って……」

「いいから黙って言う通りにしろ!」

まだ、大声を出そうとする女子生徒を一喝して黙らせる。

女子生徒は桃莉のあまりの怖さに言われた通りにする。

「おい、どうするつもりだ?今ので、モンスターが俺たちにターゲット変更したけど?」

奏雨はモンスターが近づいてくるのをみて顔を曇らせる。

「問題ない。手はあるから」

モンスターから逃げながらスマホを操作する。

「いつの間にスマホを?」

「さっき、CDプレイヤーを取りに行ったときについでにね」

「それでスマホで何するつもり?」

奏雨は桃莉が何を考えているのかわからず尋ねる。

制限時間は1分をきっているが、このままではモンスターに囲まれて死ぬのは間違いない。

ここからどうやってこの状況を打破するか奏雨には思いつかない。

「こうするのさ」

桃莉は思いっきりスマホを投げる。

スマホは今いる場所から10メートル斜め右後ろのところに落ちる。

2人は桃莉の行動が理解できず何がしたかったんだと思ったのと同時にスマホから大音量の音楽が流れ出した。

モンスターたちはその音を聞くなり、進行方向を変える。

一斉にスマホに向かって走り出す。

「……よかったのか?」

奏雨が尋ねる。

「よくはないけど、仕方ないじゃん。これしか助かる道はなかったんだから」

新しくスマホ買わないとな、と思うもこの状況で買えるかなと心配になる。

そもそも買ってもらえるかわからなくなり、暫くスマホがない生活しないといけないのか、と桃莉は非常事態の真っ最中に呑気に考えごとをする。

「……?」

晴人は2人の言っている意味が理解できずに首を傾げる。

だが、すぐに理解した。

制限時間残り13秒になったとき、音楽の音が消えた。

どうしてだ?とモンスターたちの方を見るとスマホにかぶりついていて「よかったか?」と聞いたのはこのことなのかとすぐにわかった。


10、9、8……3、2、1、0


制限時間が0になると学校全体に聞こえるくらい大きな音がした。

ゲーム終了の合図を知らせる音だ。

その音が鳴るとモンスターたちは動かなくなる。

全員が終わったことに安堵のため息を吐く。


ドーン!

[ファーストクエスト終了]

おめでとうございます。今生き残っている皆さまは最初のゲームにクリアしました。


ウィンドウが表示されると皆、嬉しいような、苛つくような、なんともいえない感情に覆われた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

元Sランクパーティーのサポーターは引退後に英雄学園の講師に就職した。〜教え子達は見た目は美少女だが、能力は残念な子達だった。〜

アノマロカリス
ファンタジー
主人公のテルパは、Sランク冒険者パーティーの有能なサポーターだった。 だが、そんな彼は…? Sランクパーティーから役立たずとして追い出された…訳ではなく、災害級の魔獣にパーティーが挑み… パーティーの半数に多大なる被害が出て、活動が出来なくなった。 その後パーティーリーダーが解散を言い渡し、メンバー達はそれぞれの道を進む事になった。 テルパは有能なサポーターで、中級までの攻撃魔法や回復魔法に補助魔法が使えていた。 いざという時の為に攻撃する手段も兼ね揃えていた。 そんな有能なテルパなら、他の冒険者から引っ張りだこになるかと思いきや? ギルドマスターからの依頼で、魔王を討伐する為の養成学園の新人講師に選ばれたのだった。 そんなテルパの受け持つ生徒達だが…? サポーターという仕事を馬鹿にして舐め切っていた。 態度やプライドばかり高くて、手に余る5人のアブノーマルな女の子達だった。 テルパは果たして、教え子達と打ち解けてから、立派に育つのだろうか? 【題名通りの女の子達は、第二章から登場します。】 今回もHOTランキングは、最高6位でした。 皆様、有り難う御座います。

天才魔法使いは戦士学科に入って人類最強を目指す!?

アリス
ファンタジー
天才魔法使いマリアは魔法学科に入りたかったが、祖父のフェンネルにうまいこと丸め込まれ、戦士学科に入ることになった。 人類最強になるため、戦士として毎日訓練に励むが何故か毎回事件に巻き込まれる。 最初は何で戦士学科に!と思っていたが、なんだかんだ楽しんでいる。 目標は魔王を目指し、この世界の全ての人間に自分を認めさせることだが、今だけは学校生活を少しだけ楽しもうかなと訳あり少女の物語です。 カクヨム・なろうにも掲載中です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

処理中です...